◎地域便り


埼玉県 ●川越家畜保健衛生所の防疫演習に参加して

関東農政局/夏川 文子


 高病原性鳥インフルエンザ(以下、「HPAI」という。)が発生した場合の対応を示す防疫演習が関東管内の各都県で続々と行われている中で、埼玉県内の3カ所(埼玉県中央、熊谷、川越)の家畜保健衛生所(以下「家保」という。)が中心となって各々の管轄内で防疫演習を行った。川越家保の会場には行政機関、消費者、養鶏業者、獣医師、警察関係者など、様々な立場の人達が集まり高い関心が寄せられているのを実感した。

 演習では埼玉県内の養鶏農場でのHPAIの発生を想定し、発生農場の具体的な防疫対策がスライドで説明された。スライドには患畜や疑似患畜の死体の数量、病原体により汚染された飼料などの数量から数値を割り出し、埋却量や作業期間、作業要員の具体的な必要数が取りまとめてあり、分かりやすかった。

 
 
着脱実演の様子
 

 次に壇上で防疫作業用の防護服を着脱実演があり、これはもっとも会場の人々の目を引いた。昨年の冬のHPAI発生で、テレビのニュースで目にしたあの真っ白な防護服の着脱手順にさえ、感染防御のために様々な工夫が施されている。壇上に上った少し緊張の面持ちの女性職員が手早く感染防御の服装に着替えてゆく。足下からの感染を防ぐため、ズボンの裾をソックスの中に入れ長靴を履き、その上にシューズカバーもする厳重さだ。顔はマスクとゴーグルで防御し、手袋は二重にし、袖口を包む。さらに袖口からウイルスが侵入しないようガムテープで留める。防護服の着装後、司会者から「今、どんな感じですか。」との質問に「少し息苦しいです。」と答えがあった。本番では作業を伴うため作業時間を考慮する必要がある。前日の熊谷家保で質問があったとおり、特に出席者の関心が高かったのは防護服を脱ぐ方法である。全身に消毒液をかけた後脱ぎ始め、手袋を外す際は死体などを触った表面を裏返しながら外し、使用済みの防護服や手袋は焼埋却する。百聞は一見にしかずで、実際に着脱演習を見ることにより感染防御への安心感を得られた。

 演習後の質疑応答では、多数の質問が飛び交った。参加者の警察関係者から「土日に野鳥の死体を見つけた一般の方から電話がかかってくるが、その死体はどう対処すべきか。」という質問に、主催者以外で当日の参加者である獣医師が答えたり、獣医師からの質問に県の出先機関が答えたりと非常に活発で充実したものになった。また「このように綿密な対策が事前に立てられていることを知り、非常に安心感が持てる。」と感想が述べられた。                  
 最後に各家保は定期的に養鶏農場を巡回していることを知り日頃からの行政と養鶏農家との連携の重要さを改めて認識した。このように地域に密接した防疫演習を行うことによって県民へも十分にアピールできたと思う。


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