平成16年11月1日の「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が完全施行を目途に、畜産農家ではたい肥舎などの施設整備を完了したところである。一方、耕種農家においては、低化学肥料・低農薬などにより、農地の維持増進、良好な営農環境の確保を推進して、今まで以上に耕種と畜産の連携強が重要になっている。
しかし、法の施行により地域住民から畜産農家を見る目は、一層厳しくなることも考えられる。そこで、花づくりを通して、牛舎をきれいにすることで地域と調和を図っている事例を紹介する。
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審査風景
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たい肥舎を竹ポットで飾っている。
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東宇和酪農婦人部(会長:楠洋子 会員111名)は、愛媛県西予市(平成16年4月1日 東宇和郡宇和町、野村町、城川町、明浜町、西宇和郡三瓶町が合併して誕生)の酪農家のご婦人方で組織され、乳牛共進会でのバザーなど女性らしい取り組みをしている。その中でも、「花づくりコンクール」は15年以上の歴史がある婦人部活動の中でも中心的な取り組みである。今年度、8月下旬に各支部から推薦のあった農家を婦人部役員、農協、市など関係機関の審査員(審査長:八幡浜家畜保健衛生所所長)で巡回して実施した。どの農家も、ホームセンターで買ってきた花ポットを植え付けるのではなく、数年来育てた花から種を採ったり、農家同士で花苗を交換するなどして花壇を整備している。
また、花壇のデザインもさまざまである。ある農家では、お父ちゃんの焼酎の空ペットボトルや竹で花ポットをつくったり、牛舎の壁面をつる性の花で飾ったりして、中にはイングリッシュガーデンもビックリという感じの牛舎もある。こうした手入れされた畜産農家の庭には「じっくり鑑賞してみたい。」と思わせる魅力がある。英国では「open
garden」の仕組みがあり、町や村ぐるみで庭園を中心にした交流イベントが実施されるが、ここ西予市では「open cattle shed」で、牛舎の庭先で牛の自慢をしたり、おしゃべりを楽しんだり、それがいつしか盛り上がって酒盛りになることもしばしば・・・
「家畜排せつ物法」の完全施行に対応したたい肥舎などの整備以上にこのようなご婦人方の取り組みが、地域住民との潤滑油となっていることは言うまでもない。
畜産経営の中で、環境美化対策は新しい農業経営姿勢の一環であると考えられる。さらに、こうした地域に根ざした環境美化活動は、畜産経営を維持する上でも非常に重要な取り組みであり、花を育て、牛舎をきれいにすることで、農家は身の回りの生活や環境にも意識を向けるようになった。花壇への愛情が花のあるきれいな牛舎をつくり、それが地域住民をやさしい心に変えていくのだろう思う。
最後に、俳句王国愛媛らしく、ここで一句。
「秋の日に 花と牛とが にらめっこ」
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