★ 機構から


多様化、高品質化が進むハンバーガー
  〜需要動向調査から〜

食肉生産流通部


はじめに

 当機構では、加工用食肉の需要動向を的確に把握するため、社団法人日本ハンバーグ・ハンバーガー協会(以下「協会」という。)に委託して、毎年、ハンバーガー販売企業需要動向調査を実施している。このたび、平成16年度の調査結果を取りまとめたので紹介する。

 本調査は、協会加盟会員の実績を基に、会員シェア係数(日経流通新聞15年外食売上高ランキングなどを参照し算出)を用いて、日本全体の動向を推計したものである。

わずかながら拡大した外食市場

 16年の外食業界は、総務省の全国全世帯家計調査報告によると、前年がマイナスだった外食支出が0.8%の増加に転じている。その要因として勤労者世帯の 1カ月当たりの実収入が7年ぶりに増加となったこと(対前年比1.0%以下同じ。)、外食消費者物価指数(12年=100)が上昇していること(0.9%)が挙げられ、外食支出金額11項目の中でもハンバーガーは5.2%増と特に高い伸び率を示した。
 
 社団法人日本フードサービス協会の16年外食市場調査では、前年に初めてマイナスとなった全店ベースの売り上げがプラスに回復し(1.5%)、すべての業種が前年比プラスとなった。客数は業種別ではファストフード(以下「FF」という。)のみ減少(▲1.7%)したが、全体では前年並みにとどまった。客単価は、調査開始以来最高の伸び率(1.5%)となった。

 ハンバーガーを含む洋風FFは、店舗数が前年よりさらに減少(▲1.7%)する中で、全店ベース、既存店ベースともに、客数、客単価が増加し、売り上げは1.7%増加した。

 原材料をめぐっては、豚肉の4年連続でのセーフガード発動、15年12月の米国でのBSE発生による米国産牛肉の輸入停止、鳥インフルエンザの発生と、食品業界は、原料食肉の調達難が続いた。また、台風や大雨被害で特に野菜類の不足、高騰によって、一部提供メニューの中止、代替商品の導入やレシピ変更などの対応が取られた。

 なお16年のハンバーガーの1日当たりの販売量は319万食で、3年ぶりに増加に転じた。

ハンバーガー業界復調へ

 16年度のハンバーガー業界は、前年に続き既存店の強化、原点に戻った魅力ある商品追求がより強力に進められ、やや低調だったここ数年の傾向から回復し、来店客数が伸び、売り上げは2.9%増となった。特に定番メニューの充実強化が目立ち、また、上期のビーフ類、夏以降のチキン類、下期のフィッシュ類の伸びが顕著であった。

 中でも品質素材に凝った高価格なハンバーガーへの挑戦が活発で、最高価格1,000円の商品も誕生するなど、客単価の上昇に寄与した。また、高級業態店舗の展開(モスバーガーの「緑モス」、ロッテリアの「プラス」など)、提供メニューの多様化(ハンバーガー・ホットドッグ・パスタ・ピザの 4カテゴリーで対応し「バラエティカジュアル」をコンセプトとするファーストキッチン、ドリンク類の充実を図ってカフェ化志向を強めるフレッシュネスバーガー)をはじめとして、各チェーン独自の路線の開拓が進み、他チェーンとの差別化を目指す動きが活発であった。

 通常店、高級業態店に加え、ショッピングセンター内などのフードコートが低コストで一定の客数を見込めるとして見直され、ロッテリア、ファーストキッチンなどで独自のメニューをそろえて積極的に取り入れられている。

新メニューで増減するパティ需要量

 ハンバーガー企業はパティ類を外部から購入し、ハンバーガーなどに商品化して販売している。16年度はキャンペーンの実施品目による増減に加えて、新メニューの開発導入が目立ったため、導入月によってそのパティ類の需要量が大きく変化した。

 パティ全体としては、天候不順だった10月と手当の抑えられた3月を除き9カ月で二けた増を示し、年間で15.7%と大きな増加となった。以下、品目別に見ていく。

 ビーフ類は、マクドナルドが6月にグレードアップしたハンバーガーの全国展開を開始したため、その後も11月、2 月、3 月を除き高い実績を残し、年間で1.4%の増加に転じた。

 チキン類は、8 月にマクドナルドで定番メニューとして復活、モスバーガーも9月には期間限定販売の人気メニューを定番化したこともあり下半期の伸びが大きく、その後特段のキャンペーンなしでも高い数量を継続し、年間では10.7%の増加であった。

 ポーク類は、前年度にチキンなどの代替として大きな手当がなされた反動もあり、16年度はキャンペーン実施月を除いては低調に推移し、唯一の減少品目となった。特に12、1 月は、前年の大量手当ての反動で大幅減となり、年間では7.9%の減少となった。

 フィッシュ類は冬季限定のメニューに新たなアイテムが加わったほか、新たに開発された新商品の導入があり、下期の伸びが大きく、年間では19.0%増加した。

 また、ナゲット類は、従来のチキン原料に加えて、前年度末に新規導入されたフィッシュフライメニューの定番化で82.4%と大きな増加となった。ナゲット中チキン類は約80%、フィッシュ類は約20%を占めている。

 パティに使用された食肉別の数量は、牛肉が上半期の好調から下半期は若干マイナスになったが年間では2.0%増、豚肉が下半期の落ち込みで9%減、鶏肉、魚肉は新商品向け、ナゲットの増加により大きく伸び年間で約50%の大幅な増加となった。
 
パティ類購入販売量
(注)企業が、パティ類を外部から購入して、ハンバーガーなどとして販売した重量(バンズなどを含まないパティ重量)
 
パティ類購入販売量(前年比)
(%)
 
食肉使用量月別推移
(注)パティに使用された食肉の重量
 
食肉使用量月別推移(前年比)
(%)

売り上げの季節性が薄らぐ

 月別の売上高の変化を見ると、ここ数年の動きとして、夏休み、年末年始、ゴールデンウイークといった外出機会の多い季節に突出して売り上げを伸ばすという傾向が薄らいできている。16年度も売り上げの特定の時期に絶対量を伸ばすという特徴は残っているが、特に上半期は月々の売り上げが平準化しつつある。

売上高季節変動(4月=100)

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