◎地域便り


沖縄県 ●人の環・物の環で作る養豚ビジネス「くいまーるプロジェクト」
−沖縄における食品残渣(生ゴミ)を生かした資源循環型畜産システムの構築−

沖縄県/上原 辰夫


「くいまーるプロジェクト」(資源循環型畜産システムの構築)とは

 「くいまーるプロジェクト」(資源循環型畜産システムの構築)とは 「くいまーるプロジェクト」は、従来から活動してきた、ごみ減量、リサイクル運動を発展的に展開した事業である。これは、スーパー、飲食店、ホテルなどから排出された事業系生ゴミを回収し、飼料化・たい肥化して、豚を肥育し、安全でおいしい肉を消費者に還元する、いわゆる「人・物(農畜産物)が輪になる食ってまわす(くいまーる)循環システム」である。沖縄には「ゆいまーる」という「相互扶助の心」がある。このプロジェクトは、多くの人と協力しあい、問題の解決を図ろうとの思いも込めて「くいまーる」と名づけた取り組みである。

くいまーるプロジェクトの仕組み図

 くいまーるプロジェクトは図で示したようにスーパー・商店街から排出される生ごみ(食品循環資源)を回収し飼料化し豚を肥育、スーパー・商店に豚肉を販売する循環型システムである。生ごみの回収は現在 1日2トン程度であり、飼料化に際し病原菌は加熱工程を取り入れ殺菌され、豚の嗜好性、保存性から乳酸発酵の過程を取り入れた。飼料化装置は小型化、低コスト、省エネ、メンテナンスの簡易化をコンセプトに製造実験を通して、実証、改良を繰り返しながら開発を行い 1号機、2 号機の試作機を開発し運用しているところである。将来は生ゴミ、豚ふんを利用した「メタン発酵燃料」の利用も視野に入れながらプロジェクトを進めている。

 再生飼料での肥育試験の結果、「くいまーる豚肉」の特徴は肉質分析結果から不飽和脂肪酸、特にリノレン酸、ドコサヘキサ塩酸が配合飼料豚に比べ多く含まれ、今後ブランド化する際のセールスポイントになるものと期待している。試食による肉質の特徴は「やや柔らかい」「非常に柔らかい」を併せると75%の数値になった。県内の食肉流通業者からも「臭みのない柔らかい肉なので是非使いたい」との高い評価が得られ、今後のブランド化の戦略になるものと考えている。肉質、価格だけでなく、「くいまーるプロジェクト」は「循環型社会の構築」「市民・事業者・行政の新しいタイプのネットワーク」「安全・安心」を基本理念としているので我々はその点もブランド化の柱になり得るものと考えている。

「くいまーるプロジェクト」の今後の展開

 沖縄県は豚肉の消費も多く、養豚業の盛んな地域でもある。これまでの実証実験を通して得た経験、知見を踏まえ事業組合を設立(平成17年6月)し、事業性の見えてきた食品循環資源回収、飼料化、養豚、豚肉共同販売、飼料化装置製作・販売、コンサルティング、環境教育を核にした事業をスタートする。地域の特性を生かした「21世紀型循環型産業」モデルの実現を図り、将来は「全国、アジア諸国もにらんだ循環型ビジネス」の展開を目指そうと夢は膨らんでいる。


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