★ 農林水産省から


家畜排せつ物法の施行状況調査結果などについて

 


 家畜排せつ物の野積みや素掘りの解消など管理の適正化を図るとともに、たい肥化などにより資源としての有効利用を一層促進することを目的として、平成11年に「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」(以下「家畜排せつ物法」という。)が施行され、一定規模以上の畜産業を営む者は、最長5年間の猶予期間の後に、管理方法や施設構造を定めた管理基準に従い、家畜排せつ物を管理しなければならないこととされた。

 このため、管理基準の遵守に必要な施設の整備を猶予期間内に促進するため、個々の農家による取り組みだけでなく、農林水産省や関係機関等による各種の施策が実施されてきたところである。

 農林水産省では、上記の猶予期間を経て平成16年11月1日に、管理基準を含めた家畜排せつ物法に関する規定が本格施行となったことを受け、平成16年12月1日時点における家畜排せつ物の規定に関する施行状況について、様式を各都道府県に送付し、結果を回収する形で調査を実施した。また、平成16年11月上旬から中旬にかけて、農林水産情報交流ネットワーク事業において家畜排せつ物たい肥の利用に関する意識・意向調査を行ったので、併せてその概要を報告する。



I.家畜排せつ物法施行状況調査結果の概要について

生産局畜産部 畜産企画課 

1 管理基準(法第3条)への対応状況

(1)管理基準の適用対象農家戸数

  管理基準の適用対象農家戸数は、全国で62,889戸と推計され、全畜産農家の約45%に管理基準が適用されている(全畜産農家戸数は今回の都道府県調べによれば約13万9千4百戸。)。


(2)管理基準への対応状況

  管理基準に対応済み(施設設備に着工済みの場合を含む)の状況にある畜産農家戸数は、62,485戸と推計され、管理基準適用対象農家戸数の99.4%が管理基準に対応している状況にある。



2 管理基準未対応農家への対応と今後の見通し

 平成16年12月1日時点で管理基準に未対応の状態にあった畜産農家(全国で404戸)については、その後、各都道府県により、技術的な情報提供を含めきめ細かな指導が為された又は為されているところであり、多くの農家において平成16年度内に未対応状況が改善される見通しとなっている。

3 法に基づく行政指導・処分等の実施状況

(1)指導及び助言(法第4条、勧告又は命令(法第5条)の実施状況)

  法第4条に基づく指導及び助言は、全国で5件実施されているが、法第5条に基づく勧告又は命令に至った事例はない(下表)。


 なお、法第4条に基づく指導及び助言が実施された個々のケースについてみると、家畜排せつ物を管理施設外に放置していたケースや管理施設の構造基準に不適合なケースなどがみられた。

(2)報告の徴収及び立入検査(法第6条)の実施状況

  法第6条に基づく報告の徴収は、全国で47件実施されており、法第6条に基づく立入検査は、全国で135件実施されている。


II.家畜排せつ物たい肥の利用に関する意識・意向調査

大臣官房情報課 

1 家畜排せつ物たい肥の今後の利用に関する意向
−家畜排せつ物たい肥を「利用したい」が 9 割−

(1)家畜排せつ物たい肥を今後どの程度利 用したいと考えるかは、「積極的に利用したい」が51.1%、「ある程度利用したい」が37.3%となっており、家畜排せつ物たい肥を利用したいが9割を占めている。

  一方、「まったく利用したくない」は1.0%、「あまり利用したくない」は6.2 %となっている。

図1−1家畜排せつ物たい肥の今後の利用に関する意向

(2)これを経営部門別にみると、「積極的に利用したい」は、耕種農家では4〜5割となっているのに対し、畜産農家の「酪農」及び「肉用牛」では8割となっている。

図1−2経営部門別の家畜排せつ物たい肥の今後の利用に関する意向

(3)家畜排せつ物たい肥を利用したいと回答した者が、利用したいと考える理由は、「たい肥の利用によって循環型の農業(資源を有効に利用できる農業)が可能になる」が51.6%と最も高く、次いで「作物の品質向上が期待できる」が49.5%、「化学肥料の使用量の節減が期待できる」が46.2%、「作物生産の安定性の向上が期待できる」が41.1%となっており、環境保全効果及び作物生産への効果を重視した回答が高い割合を占めている。

図1−3家畜排せつ物たい肥を利用したい理由(複数回答)

(4)これを経営部門別にみると、耕種農家は「作物の品質向上が期待できる」及び「作物生産の安定性の向上が期待できる」といった作物生産への効果を重視したものが高い割合となっている。

  一方、畜産農家は「たい肥の利用によって循環型の農業(資源を有効に利用できる農業)が可能になる」及び「化学肥料の使用量の節減が期待できる」といった環境保全効果を重視したものが高い割合となっている。

図1−4家畜排せつ物たい肥を利用したくない理由(複数回答)

(5)家畜排せつ物たい肥を利用したくないと回答した者が、利用したくないと考える理由は、「散布に労力がかかる」が47.0%と最も高く、次いで「含有する成分量が明確でない」が38.3%、「雑草の種子の混入がある」が36.1%、「含有する成分量が安定しない」が29.5%となっている。

2 今後利用が進むと思う家畜排せつ物たい肥に関する意識
−「顆粒やペレットなど散布しやすいたい肥」及び「価格が安いたい肥」が 5 割−

(1)今後、どのような家畜排せつ物たい肥の利用が進むと考えるかは、「顆粒やペレットなど散布しやすいたい肥」が52.7%と最も高く、次いで「価格が安いたい肥」が48.8%、「成分量が安定したたい肥」が43.0%、「成分量が明確なたい肥」が38.3%となっている。

図2 今後利用が進む家畜排せつ物たい肥に関する意識(複数回答)

(2) このうち、耕種農家では「顆粒やペレットなど散布しやすいたい肥」の割合が高くなっている。

3 家畜排せつ物たい肥を有効利用するため地域の取組に関する意識
−「たい肥の需要と供給に関する情報提供や販売・購入先の仲介など、作物生産農家と畜産農家の連携を図る取組」が6割−

(1) 今後、地域の有用資源として家畜排せつ物たい肥を有効に利用していくため、地域としてどのような取組を進めていくべきと考えるかは、「たい肥の需要と供給に関する情報提供や販売・購入先の仲介など、作物生産農家と畜産農家の連携を図る取組」が57.7%と最も高く、次いで「たい肥の利用による化学肥料の使用量を減らす取組」が52.4% 「たい肥の散布を省力化する取組」が43.5%となっている。

図3 家畜排せつ物たい肥を有効利用するための地域の取組に関する意識(複数回答)

(2) このうち、畜産農家では「たい肥の需要と供給に関する情報提供や販売・購入先の仲介など、作物生産農家と畜産農家の連携を図る取組」が6〜7割と高い割合となっている。


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