◎地域便り


北海道 ●十勝ブランドチーズが「山のチーズオリンピック」で金賞

北海道/宮嶋 望


 10月29日、30日とスイス・アッペンツェルで「第3回山のチーズのオリンピック」がCaseus Montanus(山のチーズ委員会)の主催で行われた。昨年はフランス・ラ・ルースで行われたが、共働学舎新得農場は、白カビソフト部門で「さくら」に銀賞をいただいていた。今年は一年間、改良した「さくら」を「アロマをつけたソフトタイプ」部門に出品した。

 山のチーズの定義は、生産地の標高が700m(もしくは600mボージュ山脈)、傾斜が20度以上で放牧を余儀なくされる、海岸線から離れていて海の影響を受けていない植生があるなど、経済的に不利な地理的な条件の下で作られるチーズを挙げている。新得牧場の場合は標高240mで600mを充たしてはいないが、傾斜が急なこと、放牧をしていること、緯度が高く、府県の標高600mと同じような植生が生えていること、新得町内には北海道の中心で、日本で最も海から遠い地点があることから、フランス農務省のリポー氏は現地を確認し、Caseus Montanusに推薦してくれた。

 この山のチーズのオリンピックは経済的に不利な地域の産業を守り、地域の食文化、生活文化を守ために始められた。地域的な認証制度のくくりとは違い、生産された地理的条件を規定し、チーズのカテゴリー別に評価されるというコンクールでヨーロッパ以外からのエントリーも可能になっている。カナダ、メキシコ、米国、ブラジルなどの国々からも参加があった。米国のチーズチャンピオンシップとは異なり、工業製品よりも牧場産もしくは小規模工房製品のような個性のあるものの方が有利なようだ。

 共働学舎のチーズ工房ではカマンベールタイプ、ラクレット、モッツァレラなどを販売してきたが、「ヨーロッパチーズのコピーをいつまで作っているのか、北海道のチーズを作れ!」とのフランス乳製品原産地呼称協会名誉会長の言葉に北海道の笹を使った笹雪という白カビチーズを作り、昨年の春から小ぶりのチーズ「さくら」に取り組んでいた。山桜の香りを付け、さくらの花をのせた「さくら」は昨年の銀賞で手ごたえを感じ、官能評価法で学んだことから欠点を改良した。その結果、今年はとてもうれしい金賞受賞となった。日本でも放牧の草、牛種、乳を扱う環境、製造技術などを研究、工夫すれば世界の品質に手が届くし、チーズ先進国の人々は歓迎してくれた。付加価値の高い製品の開発は日本の畜産の可能性を広げていくと思える。
 
金賞を受賞した「さくら」
宮嶋氏(右)念願の金賞受賞

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