◎地域便り


秋田県 ●元気の源、比内地鶏

調査情報部


 2005年放映のNHK大河ドラマは「義経」です。源義経といえば奥州藤原一族とのかかわりも深く、番組でもクローズアップされそうだが、この奥州に比内地方はある。比内地方といえば、「比内鶏」。縄文時代から秋田県北部(旧比内地方)で生きてきた日本古来の地鶏である。藩政時代から知られ、年貢として納められていた赤褐色の在来種で、肉の脂肪率など山鳥に似ていて、味わいの深い野趣はさぞかし重宝されたと思われる。

 今般この「比内鶏」の雄と、アメリカ産の「ロードアイランド・レッド」の雌を掛け合わせた一代交配種の「比内地鶏」を秋田県大館市にて知る機会を得た。

 ところで、比内の語源はアイヌ語の「ピナイ」から来ている。ピナイとは「水清らかで、土が肥えた」という意味であり奥羽山脈の広大な自然環境は、太古から変わらない湧き水と養分をたっぷり含んだ土とのハーモニーと言っても過言ではない。

 まず、「比内地鶏」の生産者である秋田比内や(株)が放し飼いでヒナから育てている放牧場内を見学した。自然環境に近いため、広い放牧場内で遊ぶ鶏たちは野生のハコベや草の種、虫、そして消化に必要な砂粒なども自由についばみ、スピーカーからはモーツァルトの音楽が流れていた。真っ黒な土はミネラル分が多く、与える水は井戸水か沢水でEM農法により安全な水を供給し、飼料は脂抜きした独自の穀物を中心にキャベツや大根の葉など野菜も食べていた。

 「比内地鶏」は美味しくなるまで160日から180日の日数を必要とし、これはブロイラーの約3倍、銘柄鶏の約2倍である。そして、「比内地鶏」と呼べるのは交配一代目の雌のみ。

 放牧場内を見学した後は市内にある山田記念館で天然記念物の「比内鶏」(昭和17年に指定)を見に行った。肥えた「比内地鶏」に比べると、小振りで、立ち木の枝から枝へ飛びまわったり、立ち木の高い枝にとまったり、また外敵には猛然と立ち向かうらしい。こういうのをかつての武士たちがきりたんぽ鍋などにして食べていたのかと思うと、さぞや元気が出たのではないかと思われた。(年貢となるのは雄が体重2.7kg、雌は1.9kgで共に2歳と決まっていた)

 さて、取材を終え、親子丼をいただく。鶏肉は赤身の多い、しっかりした肉質で、しなやかな弾力があった。とろけたたまごのなかで我こそは鶏肉であるぞよ、堂々と自己主張しており、柔らかく噛みごたえがあって、ダシ汁の含んだとろけたまごと炊きたての新米ごはんのほんのりの甘さが口のなかで広がり、素材がいいと丼モノもご馳走なのだと、比内地鶏は教えてくれた。

 
広い放牧場で遊ぶ鶏たち
比内鶏の親子丼

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