◎地域便り


奈良県 ●銘柄牛「大和牛やまとうし」の復活

奈良県/三好 新治


出荷ま近の「大和牛」


 鎌倉時代の末期、良牛が描かれた「国牛十図」には、大和は大和牛の名とともに良牛の産出地十国の一つに挙げられていた。平成15年4月、「大和牛」は「地元の人々に地元で育てられた歴史ある良質の牛肉を提供したい」という関係者の強い思いで復活した。

 従来、奈良県産の牛肉は少ないながらも県内で流通していたが、これといったブランドが存在しなかったため、あえて「奈良県産」という表示はされない場合が多かった。ブランド化については、県内産牛に特色を出して付加価値を高めようと、生産者と食肉関係者が平成12年から銘柄牛懇談会を立ち上げ検討を始めた。その結果、県内で14カ月以上育てられた黒毛和種で、おいしいとされる雌に限定し、日本食肉格付協会の肉質規格が5段階評価の3等級以上で、奈良県食肉流通センターへ出荷されたものであることが条件になった。

 その後、ブランドについて取り組むべきさまざまな事柄について協議が重ねられ、各方面での理解もあって平成15年3月に生産者と販売業者らで奈良県大和牛流通推進協議会を発足、同年4月に銘柄牛「大和牛」は復活した。推進協議会では生産者、買受人、販売店すべてを指定登録制度としている。発足当時生産者6人、販売店22件でスタートしたが、現在生産者16人、買受人5人、販売店27件に増加している。

 「大和牛」は血統から飼料や飼育環境などの生産情報が生産農家ごと、1頭ごとに集積、管理されている。まず、「大和牛証明書チケット」が牛に貼付され、店頭で消費者は生産者や流通経路情報の確認をすることができる。また、消費者からの問い合わせにも対応できる体制をとっている。

 現在、1カ月当たり35頭前後が出荷されているが、登録されていない販売店やレストランからの引き合いも多く、生産が追いつかないのが現状である。今後は生産量を増やすための方策が課題であるが、推進協議会では、1人でも多くの消費者に「大和牛」を食べていただけるような生産流通体制を目指している。


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