★ 機構から


米国産牛肉が輸入再開された場合の外食産業の対応
〜平成17年度食肉消費構成実態調査事業報告書から
 (その1)〜

食肉生産流通部  


はじめに

 当機構は、外食産業での食肉の需要実態とその変化を把握するため、財団法人外食産業調査研究センターに委託して平成17年度食肉消費構成実態調査事業を実施した。

 今回は、調査結果から米国産牛肉再開後における外食産業の対応状況を紹介する。アンケートの発送と回収は平成17年5月〜8月に実施したものであり、時点での意向を示したものである。

 なお、次号では、調査結果全体の概要を紹介する。


 外食産業の平成16年1月〜12月期の食肉類の需要動向を把握するため、外食業者、集団給食、ホテル・旅館業、学校給食センター、病院給食施設、料理品小売業などを対象にアンケート調査を実施した。アンケートの総配布数は5,000(飲食店4,000、学校500、病院500)、有効回答数は720(有効回答率14.4%)、回答業者の業種内訳は図1の通りである。

図1 回答業者の業種内訳

 

「すぐに使用する」は1割

 平成15年12月の米国でのBSE確認に伴う牛肉輸入停止措置により、その後の牛肉需給がひっ迫した。平成16年当初はまだ一部で米国産牛の冷凍肉の在庫が出回っていたが、夏頃には国内での在庫はほぼ底をついていた。また、米国産牛肉の使用割合が25%と高い外食産業(平成15年度調査)では、牛肉の仕入対応に苦慮する業者が多かった。そこで、今後米国産牛肉の輸入が再開された場合の対応について外食業者に聞いたところ(図2)、全体では「輸入が再開されてもすぐには使用を開始しない」が39.6%と最も多く、次いで「(価格・肉質など)条件が合えば使用する」が35.4%、「すぐに使用を開始する」が11.4%であった。

 慎重論が多く全体的に模様眺めといった印象が強いが、条件つきも含めれば使用を再開する可能性がある業者は全体の46.8%にのぼり、外食産業における米国産牛肉へのニーズは一定程度あることが伺われる。

 これを牛肉の仕入量が多い特定肉料理提供店(すきやき店・しゃぶしゃぶ店、ステーキレストラン店、焼肉店)についてみると「(価格・肉質など)条件が合えば使用する」が50.0%と最も多く、「すぐに使用する」の11.4%と合わせれば、約6割が米国産牛肉の使用に前向きである。

図2 業種別にみた米国産牛肉の輸入再開後の対応

 さらに、業種別にみると、条件付きも含めて使用を再開する業者の比率が高いのは、社員食堂(83.3%)、料理品小売業(76.7%)、ホテル・旅館(71.0%)、弁当・給食(69.2%)などの業者で、一方、「すぐには使用を開始しない」業者の比率が高いのは学校給食(73.9%)、病院給食(60.7%)、そば・うどん店(55.6%)であった。

 輸入牛肉の仕入量が多い、または仕入割合が高いなど、輸入牛肉への依存が進んでいると思われる業種では輸入再開に前向きであり、依存が低いもしくは安全・安心ニーズに敏感であると思われる業種では仕入再開に慎重であることが伺われる。


「現在の牛肉で対応可」が半数

 また、「すぐには使用を開始しない」業者にその理由をたずねたところ(図3)、全体では「現在使用している牛肉で品質・価格条件ともに充分対応できる」が50.4%と最も多く、次いで「米国産牛肉における日本並みの検査体制の構築が条件」が33.3%、「現在利用している牛肉に合わせた対応を既に行っている」が5.6%であった。

 すぐに使用を再開しない業者の半数以上は、すでに米国産牛肉にこだわらなくとも仕入が対応できる状況であり、その以外の業者では米国産牛肉の検査体制を仕入の条件と考えており、安全性に注目する業者が多いことが伺える。

図3 業種別にみた米国産牛肉使用を再開しない理由

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