◎調査・報告 


消費動向

平成16年度酪農全国基礎調査結果の概要
〜指定生乳生産者団体機能強化事業より〜

社団法人 中央酪農会議


はじめに

 「酪農全国基礎調査」は、生乳生産基盤の実態を定量的に把握しその強化に資することを主目的として全酪農家を対象に平成3年度から始まった。その後、同調査は3年度に1回の基本調査(酪農家が記入)と続く2年間のデータ更新調査(農協などが記入)という順番で毎年度実施したが、13年度で当初の目的は達せられたとの判断の下に終了することとなった。

 しかし、現在、酪農を取り巻く情勢が厳しいことに加え、高齢化と後継者不足による酪農家の離農、あるいは「家畜排泄物の管理の適正化および利用の促進に関する法律」の本格施行の影響など、わが国の生乳生産の動向は従来以上に不透明なものとなってきている。

 そこで、管内生産者の生産状況や経営動向を正確に把握することにより、全国的な生乳需給調整体制を確立し、安定的かつ的確な生乳供給と円滑な生乳取引の推進に資するべく、本年度に「酪農全国基礎調査」を実施することとなった。

 従って、本調査は、かつての酪農全国基礎調査と比べると、“生乳生産基盤の強化”から“円滑な生乳需給調整・生乳流通”へと主たる目的が変わっているので、「生乳需要期増産への取組状況と取組条件」「生乳の安全性確報のための記録状況」といったこれまで取り上げたことのない調査項目は加わったが、基本的な調査事項については過去の調査結果との接続により時間的推移の検証も可能となっている。



調査結果・酪農経営の動向に関する分析


酪農経営の様態変化

(1)経営主年齢

 平成13・16両年度に調査票が回収された酪農継続経営について全国的な動向をみると、平成13年度から16年度にかけて、経営主の平均年齢は1.92歳上昇した(51.99歳→53.91歳)。推移分布をみると、13年度の経営主年齢が50代以下の層では大部分の経営で経営主年齢の高まりが見られる一方で、13年度の経営主年齢が「60代」の層では「30代」および「40代」への、「70代以上」の層では「40代」および「50代」への若返りがある程度みられる。

 なお、北海道・都府県間で比較すると、この3年間で北海道平均と都府県平均の差が拡大し(北海道1.79歳上昇、都府県1.95歳上昇)、北海道の49.75歳に対して都府県は54.92歳となった。

図1-(1)経営主年齢(13年度)×経営主年齢(16年度)

(2)搾乳方式

 搾乳方式に関しては、特に「バケット」から「パイプライン」、「簡易パーラー」から「ミルキングパーラー」への移行が着実に進んでいる。

 全国的にみると、平成13年度には「バケット」方式を採用していた経営の7.1%が「パイプライン」方式に、また「簡易パーラー」方式を採用していた経営の20.1%が「ミルキングパーラー」方式にそれぞれ搾乳方式を変更した。

 これは北海道・都府県を問わず認められる傾向であるが、北海道における「バケット」方式から「パイプライン」方式への移行と、都府県における「簡易パーラー」方式から「ミルキングパーラー」方式への移行が特に目を引く。

図1-(2)搾 乳方式(13年度)×搾乳方式(16年度)

(3)飼料生産

A 飼料作付面積の推移

 酪農経営1戸当たりの平均飼料作付実面積は、平成13年度から16年度にかけて、全国的に減少したが、特に都府県における減少が顕著である。

 北海道の場合、13年度の飼料作付面積が50ヘクタール未満の層では面積拡大経営が面積縮小経営を上回っており、50ヘクタール以上の層のみで面積縮小経営が面積拡大経営を上回っている。

 一方、都府県の場合には、面積拡大経営が面積縮小経営を上回っているのは平成13年度の飼料作付面積が1ヘクタール未満の層のみであり、1ヘクタール以上の層では面積縮小経営が面積拡大経営を上回っている。

 この結果、平均飼料作付実面積(飼料作物作付無しの経営含む)は、北海道では0.20ヘクタール(46.74ヘクタール→46.54ヘクタール)の減少にとどまっているのに対して、都府県の減少は1.58ヘクタール(5.96ヘクタール→4.38ヘクタール)に及んでいる。

図1-(3)A 飼料作物作付実面積(13年度)×飼料作物作付実面積(16年度)

B 飼料作付実面積目標(見通し)の推移

 5年後に酪農を継続する意向のある経営における、飼料作付実面積の将来目標は、実際の作付実面積の推移と同様に、平成13年度から16年度にかけて全国的に減少している。

 地域別にみると、まず、北海道では、13年度に50ヘクタール以上を目標としていた層での目標低下が著しく、平均目標面積(目標0ヘクタールの経営含む)はこの3年間で1.26ヘクタール減少した(54.85ヘクタール→53.59ヘクタール)。

 一方、都府県では、13年度に作付意向をもたなかった層を除く全ての層で、目標縮小経営が目標拡大経営を大きく上回っている。その結果、都府県における平均飼料作付目標(目標0ヘクタールの経営含む)は、この3年間で3.33ヘクタール減少した(9.22ヘクタール→5.89ヘクタール)。

図1-(3)B 5年後飼料作物作付実面積目標(13年度)×5年後飼料作物作付実面積目標(16年度)

(4)後継牛確保と搾乳牛更新

A F1・ET産子率の推移

 全国的には、12年度から15年度にかけて、平均F1・ET産子率は3.75ポイント低下した(47.75%→44.00%)。これは12年度のF1・ET産子率が40%未満の層では、15年度に産子率の上昇した経営が低下した経営を上回ったが、12年度の同産子率が40%以上の層では15年度に産子率の上昇した経営が低下した経営を大きく下回ったためである。

 ただし、北海道と都府県では様相が大きく異なっている。北海道では、戸数ウェイトの高いF1・ET産子率低位層(20%未満の層)で同産子率の上位移動があったために、平均F1・ET産子率は2.66ポイント上昇した(17.36%→20.02%)。

 しかし、都府県では、戸数ウェイトの高いF1・ET産子率高位層(40%以上の層)で同産子率の下位移動があったために、平均F1・ET産子率は5.25ポイント低下した(54.67%→49.42%)。

図1-(4)A F1・ET産子率(13年度)×F1・ET産子率(16年度)

B 廃用牛平均産次数の推移

 廃用牛の平均産次数は、平成12年度から15年度にかけて、全国的にはごくわずかだが上昇した(4.08 産→4.11 産)。

 北海道では、平均廃用産次4産未満層における廃用産次上昇の影響で、平均廃用産次数は0.16産上昇している(4.21産→4.37産)。

 一方、都府県における平均産次数は変化しなかった(4.04産→4.04産)。

図1-(4)B 廃用牛平均産次数(13年度)×廃用牛平均産次数(16年度)


生乳生産の基本動向

(1)経産牛飼養頭数

A 経産牛飼養頭数の推移

 全国的にみると、平成13年度から16年度にかけて、1戸当たり平均経産牛飼養頭数は1.73頭増加した(36.78頭→38.51頭)。ただし、この3年間の推移分布をみると、13年度の経産牛頭数が9頭以下の層を除けば、全ての層で16年度に減頭した経営が増頭した経営を上回っている。

 地域的には、1戸当たり平均経産牛飼養頭数の増加は特に北海道において顕著である。北海道ではこの3年間に7.21頭増加しており(57.72頭→64.93頭)、13年度経産牛飼養頭数が100頭以上の層を除けば、全ての層で16年度に増頭した経営が減頭した経営を上回っている。

 一方、都府県では13年度経産牛飼養頭数が9頭以下の層を除く全層で減頭経営が増頭経営を上回っており、平均経産牛飼養頭数の増加幅も0.36頭に止まっている(31.70頭→32.06頭)。

図2-(1)A 経産牛飼養頭数(13年度)×経産牛飼養頭数(16年度)

B 経産牛飼養頭数目標(見通し)の推移

 5年後に酪農を継続する意向のある経営における、平成13年度から16年度の3年間における経産牛飼養頭数の将来目標は、全国では0.87頭増加した(51.48頭→52.35頭)が、北海道と都府県では推移の様相が大きく異なっている。

 北海道では13年度目標頭数が9頭以下の層と100頭以上の層を除けば、16年度に目標を拡大した経営が目標を縮小した経営を上回っている。しかし、平均目標頭数は、13年度以降の3年間で0.25頭減少した(78.84頭→78.59頭)。

 一方、都府県では、平成13年度の目標頭数が9頭以下の層を除くと、全ての層で目標縮小経営が目標拡大経営を上回っているが、平均目標頭数はこの3年間で0.76頭増加した(44.17頭→44.93頭)。

図2-(1)B 5年後経産牛飼養頭数目標(13年度)×5年後経産牛飼養頭数目標(16年度)

2)年間出荷乳量

A 年間出荷乳量の推移

 平成12年度から15年度にかけての全国動向をみると、1戸当たり年間出荷乳量平均は19.62トン増加した(284.63トン→304.25トン)。また、推移分布をみると、12年度出荷乳量“400〜500トン未満”の層でのみ15年度において出荷乳量が増加した経営が減少した経営を上回っている。

 このような傾向の背景には、北海道と都府県の相反した出荷動向がある。北海道では、12年度出荷乳量が“500トン以上”の最上層以外は、15年度において全ての層で増加経営が減少経営を上回っており、この結果、平均出荷乳量も45.72トンと大きく増加した(448.33トン→494.05トン)。
一方、都府県では平均出荷乳量は12.50・増加したものの(244.46トン→256.96トン)、“50トン未満”の最下層以外は15年度において増加経営が減少経営を下回っている。

図2-(2)A 年間出荷乳量(13年度)×年間出荷乳量(16年度)

B 年間出荷乳量目標(見通し)の推移

 5年後に酪農を継続する意向のある経営における、年間出荷乳量に関する将来目標は、全国平均でみると136.99トン減少した(573.50トン→436.51トン)。推移分布をみると、出荷目標“50トン未満”の最小層を除けば、15年度において、全ての層で目標を縮小した経営が目標を拡大した経営を大きく上回っている。また、最小層と最大層を除くと、「現状維持」にとどまった経営がほとんど無いことが特徴的である。

 このような傾向は特に都府県で顕著であり、北海道の出荷目標平均は11.05トンの減少に止まった(649.14トン→638.09トン)のに対し、都府県の出荷目標平均は174.46トンと大幅に減少した(552.72トン→378.26トン)。

図2-(2)B 5年後年間出荷乳量目標(13年度)×5年後年間出荷乳量目標(16年度)

(3)乳成分と乳品質

A 乳脂肪率の推移

 平成12年度から15年度にかけて、平均乳脂肪率は、全国的には0.02ポイントの微増を示した(3.91%→3.93%)。推移分布をみると、12年度乳脂肪率が3.9%以下の層では、15年度に乳脂肪率が上昇した経営が低下した経営よりも多く、4.0%以上の層では逆に低下した経営が上昇した経営よりも多いという傾向が読み取れる。

 北海道・都府県別にみると、都府県平均(3.91%→3.92%)よりも北海道平均(3.94%→3.99%)の方が大きく上昇しているが、それは主として、北海道の方が都府県よりも、15年度に乳脂肪率が上昇した経営が低下した経営を上回っている層が高いからである(15年度に上昇経営が低下経営を上回っている層:北海道4.1%層以下、都府県3.9%層以下)。

図2-(3)A 平均乳脂肪率(13年度)×平均乳脂肪率(16年度)

B 無脂乳固形分率の推移

 平均無脂乳固形分率は、平成12年度から15年度にかけて全国平均で0.05ポイント上昇した(8.53%→8.58%)。なお、推移分布からみると、12年度無脂乳固形分率が8.7%以下の層では、15年度において無脂乳固形分率が上昇した経営が低下した経営を上回り、8.8%以上の層では逆に低下した経営が上昇した経営を上回っている。

 ただし、北海道・都府県別にみると、都府県平均は0.07ポイント上昇したのに対し(8.51%→8.58%)、北海道では0.06ポイント低下している(8.64%→8.58%)

図2-(3)B 平均無脂乳固形分率(13年度)×平均無脂乳固形分率(16年度)

C 体細胞数の推移

 平成12年度から15年度にかけて、平均体細胞数は、全国的には25.68万個/mlから28.10万個/mlへと2.42万個/ml増加した。推移分布をみると、35万個/ml未満層で、15年度において体細胞数が増加した経営が減少した経営を上回っている。

 ただし、北海道・都府県別にみると、北海道の平均体細胞数は0.12万個/mlの増加に止まり(22.79万個/ml→22.91万個/ml)、推移分布をみても増加経営が減少経営を上回るのは25万個/ml未満(13年度)の層である。一方、都府県の平均体細胞数は、35万個/ml未満(13年度)の層で増加経営が減少経営を上回っており、平均体細胞数は26.38万個/mlから29.37万個/mlへと、2.99万個/ml増加している。

図2-(3)C 平均体細胞数(13年度)×平均体細胞数(16年度)

 


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