外食は、家計の食料消費支出の3割を占め、子供から高齢者まで幅広い年齢層の人々に利用されるなど、国民の食生活において重要な地位を占めています。近年、BSEの発生、輸入農産物からの基準を超える残留農薬の検出など、食の安全を脅かす出来事が続き、消費者の食に対する関心が高まっています。
このような中で、消費者は、購入しようとする食品が安全で安心できるものかどうかを判断する基準として、食品の表示を従来にも増して重視するようになってきており、外食においても原材料の原産地表示を求める声が強くなっています。
また、本年3月25日に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」においても、「平成17年度に外食における原産地等の表示のガイドラインを整備し、これに基づき、外食産業による自主的な原産地等の表示の取組を促進する」こととされています。
このような状況を受け、外食における原産地表示のガイドラインの策定を目的に、外食における原産地等の表示に関する検討会を開催することとなりました。本年3月以降検討を行う過程で、原産地表示を求める消費者の声やガイドラインに基づく原産地表示の普及に有効と考えられる提案など、大変重要な意見等が多く出されました。ガイドライン骨子(案)のパブリックコメントを経た後、7月28日の第5回検討会において「外食における原産地表示に関するガイドライン」の取りまとめが行われました。
農林水産省はこれを直ちに公表するとともに、同日付けで地方農政局等、都道府県及び関係団体に通知したところであります。
外食事業者においては、原材料の原産地表示を煩わしいもの、新たな負担と受け止めることなく、創意工夫を活かすことのできる新たなサービスと考え、外食の信頼性を高めるために積極的に取り組むことが期待されます。
以下、「外食における原産地表示に関するガイドライン」の全文を紹介します。
I 趣旨
BSE、食品の偽装表示事件の発生などにより、消費者の食品に対する信頼が揺らいでいる。食品の流通経路の複雑化、加工食品等の品質の多様化等により、食品の産地や素材等について、消費者が購入時に実物を見ただけで理解することは困難であり、表示が食品についての情報を知る重要な手段になっている。このような中で、外食においても原材料の原産地表示を求める声が強くなっている。今後、外食が身近な食の場として一層安心して利用されるためにも、消費者に対して原材料の原産地の情報を提供し、外食の信頼性を高めることが重要である。本年3月25日に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」においても、「平成17年度に外食における原産地等の表示のガイドラインを整備し、これに基づき、外食産業による自主的な原産地等の表示の取組を促進する。」こととされている。
このため、外食に対する消費者の信頼性の確保に向けて、外食事業者の自主的な原材料の原産地表示の取り組みが推進されるよう、「外食における原産地表示に関するガイドライン」を策定する。
II ガイドラインの位置付け
本ガイドラインは、消費者のメニュー選択に資する情報提供を行うとの観点から、外食事業者が自主的にメニューの原材料の原産地を表示する上での指針であり、各外食事業者の業種・業態等の実情に応じた原材料の原産地等の表示の自主的な取り組みを促すためのものである。
III 対象事業者について
本ガイドラインは、消費者のメニューを選択するためにどのような原材料について原産地表示が必要か、また、信頼性のある表示が可能かという観点から取りまとめを行っている。このため、本ガイドラインは、業種・業態や事業規模の大小にかかわりなく、すべての外食事業者を対象としている。
IV 原産地表示の方法について
1 原産地表示に関する基本的考え方
外食事業者は、使用する原材料の中には原産地情報のないものもあるが、原産地を把握している原材料については積極的に原産地を表示するとの考えに立って取り組むことが望まれる。
2 原産地を表示する原材料
(1) 次の原材料について原産地を表示する。
(1)メニューの主たる原材料
例:ステーキの牛肉
(2) メニュー名に用いられている原材料
例:チキンソテーの鶏肉
(3) こだわりの原材料
例:旬のさんま
注:「主たる原材料」とは、メニュー構成を決定する原材料であり、「こだわりの原材料」とは、品種、栽培方法や産地等にこだわって調達している原材料をいう。
(2) いわゆる売れ筋メニューや定番メニューなどの「主要なメニュー」については、(1)の原材料以外の原材料についても、積極的に原産地を表示する。
例:トンカツ(豚肉はデンマーク産、キャベツは国産)
注:「主要なメニュー」とは、消費者から注文の多いもの又は外食事業者が積極的に売り出しているものをいう。
(3) 地産地消の取り組みや農業との連携等により安定した調達に取り組んでいる外食事業者、原材料の生産流通情報の分かるトレーサビリティ・システム等に取り組んでいる外食事業者にあっては、原材料の種類ごとに原産地を表示するなど、表示方法を工夫することにより、原産地に関するより多くの情報の提供に努める。
例:「野菜は地元○○県産のものを使用しています。」
3 表示する原産地の名称
外食の場合、原材料の安定的な調達・確保の観点から、複数の産地の原材料を使用する場合が多く、また、気象等の影響から産地が変わることも多い。このため、原産地の名称の表示に当たっては、国産の原材料については「国産」である旨、外国産の原材料の場合は「原産国名」を表示する。ただし、以下により表示することもできる。
(1) 農産物の場合
(1) 国産品にあっては国産である旨に代えて都道府県名、市町村名、地域名その他一般に知られている地名
(2) 輸入品にあっては原産国名に代えて州名、省名その他一般に知られている地名
(2) 畜産物の場合
(1) 国産品にあっては国産である旨に代えて主たる飼養地が属する都道府県名、市町村名その他一般に知られている地名
(2) 輸入品にあっては原産国名に代えて一般に知られている地名
(3) 水産物の場合
(1) 国産品にあっては国産である旨に代えて生産した水域名、水揚げした漁港名、水揚げした漁港の属する都道府県名、主たる養殖地の属する都道府県名その他一般に知られている地域名
(2) 輸入品にあっては原産国名に併記して生産した水域名
なお、「一般に知られている地域名」を表示する場合にあっても必要に応じて地名と原産国名を併記するなど、消費者に分かりやすい表示とするように努める。
例:「ポートリンカーン(オーストラリア)から輸入しています。」
4 複数の原産国の原材料を使用する場合の表示
(1) 2により表示する原材料の原産地が2ヵ国以上ある場合にあっては、原材料に占める重量の割合の多いものから順に表示する。
(2) 2により表示する原材料の原産地が3ヵ国以上ある場合にあっては、原材料に占める重量の割合の多いものから2ヵ国を表示し、3ヵ国目以降の原産国を「その他」として一括して表示できる。ただし、より多くの原産国について情報提供が可能な場合は、積極的に表示する。
例:豚肉(アメリカ、国産、その他)
(3) 2により表示する原材料の原産地が季節移動したり、一時的に変動したりする場合、原産国の次にその旨を表示する。
例:「レタスは原則国産ですが、天候の影響により外国産のものを使用することがあります。」
(4) 2により表示する原材料について、使用量の大部分を特定の国から調達し、残りの調達先が変動しやすい場合、当該1ヵ国の名称と使用割合を表示し、その他の原産国を「その他」として表示できる。
例:「豚肉は9割以上がアメリカ産ですが、調達の都合によりその他の国からも仕入れています。」
5 表示の方法
外食の場合、1つの原材料が複数のメニューに使用されるという特徴を有している。このため、各メニューに原材料の原産地を表示する方法のほか、
(1) メニューブックの巻末などに原材料ごとにまとめて原産地を表示する方法
例:「野菜は国内(長野、茨城、千葉、東北地方)の契約農家から、豚肉は米国、デンマークから仕入れています。」
(2) メニューのジャンルごとに原材料をまとめて原産地を表示する方法
例:「ハンバーグに使用している牛肉はオーストラリア産、豚肉はアメリカ産です。」
など、創意工夫を活かして消費者に分かりやすく原産地を表示する。
6 表示場所
外食では、ウィンドーサンプルやメニューブックのほかにも、ポスター、卓上メニュー等多くの情報提供の手段があり、その種類も業種・業態や店舗等により異なっている。このため、「顧客の見やすい場所に行うこと」及び「顧客の分かりやすい表現を使うこと」という考え方の下に、創意工夫を活かして適当な場所へ原産地を表示する。
なお、ホームページなどを利用して原材料の産地や生産方法等に関するより詳細な情報を提供することも、消費者の原材料に対する関心を高めるとともに、外食事業者に対する信頼感を得る上で有効である。
7 留意事項
(1) 消費者に分かりやすく表示する観点から、原材料の名称表示等についても、特別栽培農産物に係るガイドライン(平成4年10月1日付け4食流第3889号農蚕園芸局長、食品流通局長、食糧庁長官通知)、魚介類の名称のガイドライン(中間取りまとめ)(平成15年3月28日付け14水漁第2866号水産庁長官通知)、生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドライン(平成15年6月27日付け15水漁第803号水産庁長官通知)等、既に策定されているガイドラインに準拠して表示する。
(2) 原材料の原産地を表示するに当たっては、原材料の原産地情報の管理を徹底し、誤った表示を行わないようにしなければならない。また、常に消費者の視点に立ち、
(1) 産地が特定できないあいまいな表示
(2) 複数の原産地のものを使用するときの特定の産地のみを強調する表示
(3) 加工品において原料原産地が不詳であるにもかかわらず、同種の生鮮品の産地表示により誤認を招く表示
など、消費者を誤認させるような表示を行わないようにしなければならない。
(3) 原材料の原産地表示に当たっては、表示の根拠とした仕入伝票その他関係書類の整理に努めることを通じて、消費者の問い合せに迅速かつ適正に対応できるようにする必要がある。
(4) BSEの発生、輸入農産物からの基準を超える残留農薬の検出など、近年、国の内外において消費者の原材料に対する不安を抱かせる出来事が発生している。本ガイドラインに基づく原産地表示は、外食に対する消費者の信頼性を高めることを目的としているものであることを踏まえ、このような出来事が発生した場合には、使用している原材料を確認の上、「2 原産地を表示する原材料」に基づく表示対象となっていない原材料であっても、積極的に当該原材料名とその原産地を表示するように努める。
なお、この場合、原材料や原産地について誤ったイメージを消費者に与えることのないよう、特に注意して表示する必要がある。
○消費者のメニュー選択に資するため、事業者が自主的に表示を行うための指針。
○以下の原材料について原産地を表示。
(1)メニューの主たる原材料(例:ステーキの牛肉)
(2)メニュー名に用いられている原材料(例:チキンソテーの鶏肉)
(3)こだわりの原材料(例:旬のさんま)
注:「主たる原材料」は、メニュー構成を決定する原材料。「こだわりの原材料」は、品種、栽培方法や産地等にこだわって調達している原材料。
○このほか
(1)売れ筋メニューや定番メニュー等については、上記(1)〜(3)以外の原材料についても積極的に表示。
(2)地産地消の取り組みや農業との連携等により安定した調達に取り組んでいる事業者等は、表示方法を工夫し、より多くの原材料の原産地を表示。
○国産品は「国産」、輸入品は「原産国名」を表示。
○このほか、一般に知られている地名を用いての表示が可能。
例:国産品の場合、都道府県名、旧国名、地方名、地域名、水域名、島名、湖名輸入品の場合、州名・省名、地方名、地域名、海域名、島名、湖名
○重量割合の多い順に原産国を表示。
○このほか、3ヵ国以上の原材料を使用している場合、重量割合で3番目以下を「その他」として表示が可能、等。
○消費者の見えやすい場所に、「メニューごと」(例:鯖は銚子港で水揚げされたもの)、「原材料の種類ごと」(例:野菜は国産を使用)又は「メニューのジャンルごと」(例:ハンバーグの牛肉は豪州産、豚肉は米国産)に消費者に分かりやすい表現で表示。
○誤った表示を行わないように原産地情報の管理を徹底すること。また、消費者の誤認を招くような表示は行わないこと。
○消費者の問い合せに迅速かつ適正に対応できるように、仕入伝票その他関係書類の整理に努めること。
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