◎地域便り


山梨県 ● 〜経済性より味を追求〜「甲州地どり」

山梨県/古屋 元宏


 甲府盆地を一望する曽根丘陵の一角に、甲州地どり生産組合(以下、組合)の拠点となる生産農場がある。広い鶏舎と運動場には、「甲州地どり」が元気に走り回り、土・草・虫を自由についばみ、鶏本来の生き生きとした姿を見ることができる。「甲州地どり」は経済性よりも鶏の健康や味を重視し、一般的なブロイラーの倍以上の肥育期間を掛けてじっくりと育てられている。

 組合では、現在年間約2万5千羽を出荷しているが、そのおいしさが雑誌で紹介され、口コミでの広がりにより、現在、生産が注文に追いつかない状況だと言う。肥育期間が長く、急な増産は難しいため、少しずつ生産羽数を増やしてきている。

 「甲州地どり」は、県の畜産試験場が昭和63年から改良を行い、鶏肉の主流であるブロイラー肉とは違った「味が濃く、歯応えがある」などの特長を持った鶏肉として誕生した。県独自のシャモの系統を引いているため、食味・外見はシャモに良く似ているが、シャモより大型であり、性質は温和で飼いやすい。広い飼育環境で十分な運動と緑飼を与えられて約4カ月間肥育するため、肉が締まって味に深みがあり脂肪が少ない「素材の持ち味を生かした調理向き」の鶏肉となる。

 「甲州地どり」生産は組合が一手に引き受けて行っているが、当初はどんなに「おいしい鶏肉」を作ってもブロイラー鶏肉の低価格には対抗できず、きれいにパッケージされた製品が冷蔵庫に積み重なるばかりの苦悩の時期が長かったと言う。しかしこの間、「食べ歩きマップ」の発行や各種イベントへの出店など、熱心なPR活動を展開した結果、今では県内の「甲州地どり」を扱う飲食店は40店舗を超えるまでになり、県外にも固定客ができた。また、マンガ「美味しんぼ(小学館)」でテーマとして取り上げられた反響は大きく、「納得して食べられる食品を自信を持って勧めていく」という組合の姿勢から、年々取扱店の輪が拡大している。

 組合は平成16年に新たな地に農場を増設したところであり、当面の目標として出荷羽数を1.5倍に増やすことにしている。また今後の事業計画として、食品副産物の飼料化や発酵鶏ふんの生産、さらには消費者との交流機能を持つ直売所設置など、夢は尽きない。「甲州地どり」が山梨県産の銘柄鶏として県内外に広く親しまれるよう、今後も関係者と連携を図りながら一所懸命に活動していきたいとのことである。


甲州地どり


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