大臣官房統計部 消費統計室
消費動向第1係 柏田 豊
調査の背景わが国においては、高い所得水準を背景に、飽食ともいうべき量・質ともに豊かな食生活を享受している一方、行き過ぎた鮮度志向などから、食品の廃棄や食べ残しなどの、いわゆる食品ロスの増加が問題となっており、1人1日当たりの供給熱量と摂取熱量の差は、ほぼ1回の食事分に相当する700キロカロリー以上となっている。このような状況について、食料資源の有効利用、環境への負荷の低減、ひいては社会経済全体のコストの低減といった観点から、国民の意識改革を促し、国を挙げて早急に改善していく必要がある。 また、最近のわが国の食生活をみると、欠食などの食習慣の乱れや中食などの新たな食の外部化の進行などがみられ、これを背景に栄養バランスの偏り、生活習慣病の増加などの問題が生じている。 このような状況に対応するため、平成12年3月、当時の文部省、厚生省、農林水産省により『食生活指針』が策定され、心身ともに健康で豊かな食生活の実現に向けて普及・啓発が進められるとともに、本年6月には、この『食生活指針』をより具体的な行動に結びつけるものとして、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安を分かりやすいイラストで示した「食事バランスガイド」が厚生労働省と農林水産省の共同により策定された。さらに、国民が健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむため、食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進することなどを目的とした「食育基本法」が17年7月15日に施行されたところである。
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図1 世帯員構成別にみた食品使用量(世帯食1人1日当たり) |
食事管理者(食材の購入、調理など家庭での食事の主体となる者をいう。)の年齢別に、世帯食における1人1日当たりの食品使用量をみると、食事管理者の年齢が高まるにつれて、自宅で食事を摂ることが多くなることなどから食品使用量は多く、特に野菜類、果実類、魚介類の使用量の増加が顕著である。
また、調理加工食品については、どの年齢層でも全食品使用量の2割程度の使用となっている。
また、食品ロス量を主な食品類別にみると、野菜類が20.5グラムと最も多く、次いで調理加工食品(8.0グラム)、果実類(6.8グラム)、魚介類(3.8グラム)となっており、これらで食品ロス量全体の約8割を占めている。
図2 食事管理者の年齢階層別にみた食品使用量(世帯食1人1日当たり) |
世帯食における1人1日当たりの食品ロス量は48.0グラムで、食品ロス率は4.2%であった。これを世帯員構成別にみると、食品ロス量、食品ロス率ともに2人世帯が最も多くなっている。
図3 世帯員構成別の食品ロス量(世帯食1人1日当たり)と食品ロス率 |
食事管理者の年齢別に食品ロス量をみると、食事管理者の年齢が高まるにつれて、食品使用量の増加することに伴い多くなっている。
また、食品ロス率は、食べ残しや直接廃棄の多い29歳以下の層と一般的にロス率の高い野菜類や果実類、魚介類の使用が多い50歳以上の層で高くなっている。
図4 食事管理者の年齢別の食品ロス量(世帯食1人1日当たり)と食品ロス率 |
食品ロス率を、調査時期別にみると、16年6月が3.9%、9月が4.6%、12月が4.4%、17年3月が4.0%となっている。なお、16年9月と前年(15年9月1日から10月10日のうちの1週間)の食品ロス率を比べると0.2ポイント低下している。
図5 調査時期別の食品使用量、ロス量および食品ロス率(世帯食1人1日当たり) |
ア 調査期間1週間における世帯員の食事状況についてみると、朝食、夕食ともに家庭食(家庭で摂る食事)の割合は9割前後であった。
また、昼食では、家庭食は男性が42.1%、女性が56.3%であり、外食や給食などによるその他の食事が朝食、夕食に比べ多くなっている。
図6 世帯員の食事状況 |
イ 調査期間1週間の世帯員の朝食の欠食割合をみると、男性が6.5%、女性が4.2%、全体で5.3%であった。これを年齢別にみると、男女ともに20〜29歳で最も高くなっている。
ア 調査期間1週間の食事状況を3人以上世帯についてみると、自宅での食事を世帯員全員が一緒に摂る世帯割合は、朝食では、週5回以上の世帯が52.9%で、一緒に食事を摂ることが全くない世帯は22.6%であった。
また、夕食では、週5回以上の世帯は47.3%で、一緒に食事を摂ることが全くない世帯は10.4%であった。
図7 世帯員年齢別の朝食の欠食割合 |
図8 世帯員全員が一緒に食事をした割合(3人以上世帯) |
イ これを食事管理者の年齢別にみると、29歳以下の層で朝食を一緒に摂ることが全くない世帯が42.1%と特に高く、60歳以上の層では朝食、夕食ともに週5回以上一緒を摂る世帯が6割前後と高い割合を占めている。
図9 世帯員全員が一緒に食事した割合(3人以上世帯) |
調査期間1週間の朝食時にごはん(白飯)が出された回数は、1世帯当たり平均4.38回であった。これを食事管理者の年齢別にみると、29歳以下の層が最も少なく2.78回、40〜49歳の層が4.63回で最も多くなっている。
また、パン類については、1世帯当たり平均3.32回で、これを食事管理者の年齢別にみると30〜39歳の層が最も多く3.75回となっている。
調査期間1週間の朝食時に果実類が出された回数は、1世帯当たり平均1.70回であった。
これを食事管理者の年齢別にみると、29歳以下の層が最も少なく0.73回で、50〜59歳の層が最も多く2.21回となっている。
調査期間1週間の朝食時に牛乳が出された回数は、1世帯当たり平均2.06回で、これを食事管理者の年齢別にみると、40〜49歳の層で最も多く2.53回となっている。
調査期間1週間の朝食時に野菜類を主体とした料理、加工品が出された回数は、1世帯当たり5.14回で、これを食事管理者の年齢別にみると、60歳以上の層で最も多く6.61回となっている。また、野菜類を主体とした料理、加工品のうち、漬け物は1.61回、野菜サラダ0.75回、野菜ゆで・あえものが0.62回となっている。
図10 1週間の朝食時に出された回数
(メニュー別) |
図11 1週間の朝食時に野菜料理が出された回数 |
今回公表した結果が、家庭における食に対する関心を高め、食生活の見直しや食品廃棄物の削減、食品廃棄物の再利用の促進につながれば幸いである。なお、今回公表した「平成16年度食品ロス統計調査(世帯調査)結果の概要」の詳細なデータなどについては、農林水産省ホームページ中の農林水産統計データ
【http://www.maff.go.jp/www/info/index.html】、
また、累年データは、農林水産統計総合データベース
【http://www.tdb.maff.go.jp/toukei/toukei】に掲載している。
(注) 食品ロスの範囲等
(1)本調査の食品ロスの範囲は、食品の食べ残し及び廃棄であり、食品の廃棄とは、賞味期限切れ、作りすぎ・調理を失敗した等で食卓に出さずにそのまま捨てたもの(直接廃棄)と、だいこんの厚むきなど不可食部分を除去する際に過剰に除去した可食部分(過剰除去)である。
調査で把握した食品ロスの範囲(概念図) |
(2)食品ロス率の算出方法は、下記のとおりである。
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