★ 機構から


POS情報からみた牛乳乳製の消費実態について

酪農乳業部


 当機構では、牛乳乳製品の消費実態を把握するために、スーパーなどのPOS情報を活用し、販売動向、小売価格について分析を行っている。平成16年度の分析結果のうち、バターと牛乳類(牛乳、低脂肪加工乳、白もの乳飲料、低脂肪牛乳)についてその概要を紹介する。なお、牛乳乳製品のPOS情報の詳細については、巻末の統計を参照願いたい。


バター

商品の概要

 16年度のバター(バターハーフを含む)のアイテム数は91である。バターの荷姿は、200グラムを中心としたカートン入りが最も多い。簡便性を追求した10グラム程度に切れているものや小容量・個別包装(8グラム×8、6グラム×4)のものも見られる。

 容量クラス別に販売金額構成比を見ると、200グラム前後タイプが76.9%と最も多い。ただし12年度の82.7%と比較すると減少しており、100グラム前後タイプがやや増加している。

 売れ筋商品について見ると、第一位(大手乳業メーカーA、200グラム)が29.9%である。第二位(切れてるタイプ)と第三位(無塩タイプ)も大手乳業メーカーAの製品である。第一位の商品は14年度までは減少傾向であったが、14年度27.0%、15年度28.3%、16年度29.9%と増加している。切れてるタイプである第二位の商品は12年度の9.7%から16年度は12.7%と構成比が年々増加している。


販売数量は低迷

 千人当たり販売数量(POSレジ通過客数千人当たり、以下同じ。)について見ると、13年度の1,288グラムから、14年度は1,235グラム、15年度は1,165グラム、16年度には1,089グラムと減少傾向が続いている(図1)。

図 1  バターの販売数量と価格の推移


 

 バターの販売数量は、おおむね冬期に多く夏期に少ないという明瞭な季節性が見られる。季節指数は8月が最も低く62.8となっており、秋口から上昇し、12月にピークとなり、1月は79.8と大幅に落ち込んでいるものの、2月は117.2と最大になっている。


小売価格は上昇

 100グラム当たりの小売価格について見ると、12年度までは下落傾向が続いたが、13年度は135円とやや上向き、14年度137円、15年度139円、16年度140円となった。
バターの小売価格について、12月を100とした季節指数で見ると、12月が最も低く、8月が106.4と最も高い。


牛乳類

 牛乳類のうち、牛乳、低脂肪加工乳、白もの乳飲料、低脂肪牛乳(旧名:部分脂肪乳)の販売動向について見ることにする。なお、対象は紙容器1リットル入りである。


牛乳類の種類別消費量の変化

 牛乳類全体の販売数量について、POSレジ通過客数千人当たりの販売数量で見ると、12年度は127.1本、13年度は115.8本と減少したものが14年度は122.6本と回復したが、15年度は117.2本、さらに16年度は109.7本と減少している。
種類別の内訳を見ると、牛乳が71.7%、次いで、白もの乳飲料(低脂肪でカルシウムやビタミンなどを添加したもので「機能性牛乳」と呼ばれている。)が14.3%、低脂肪加工乳が6.1%、低脂肪牛乳が5.1%、濃厚加工乳が2.6%、LL牛乳が0.1%の順となっている。過去の推移をみると、平成12年以降年々、牛乳のシェアが拡大していたが、本年は前年と比べてほぼ横ばいとなっている。この結果、白もの乳飲料に低脂肪加工乳、低脂肪牛乳を加えた低脂肪タイプは25.5%(前年度25.1%)となった。健康志向などにより拡大していた低脂肪タイプだが、12年以降は大幅に低下し、牛乳への回帰が著しくなっている。

 種類別の千人当たり販売数量について見ると、16年度は牛乳が78.6本で最も多く、次いで白もの乳飲料が15.6本、低脂肪加工乳が6.7本、低脂肪牛乳が5.6本、濃厚加工乳が2.9本、LL牛乳が0.2本であった(図2)。過去4年間の推移をみると、低脂肪加工乳および白もの乳飲料が一貫して減少している。


図 2 牛乳類の売上の変化(1リットル紙容器、客数千人当たり)

 


牛乳の種類別の小売価格は、格差が大きい

 次に種類別に1本当たり小売価格の推移を示したのが図3である。16年度について見ると、牛乳が177円、白もの乳飲料が161円、低脂肪牛乳が155円、低脂肪加工乳が128円、濃厚加工乳が199円、LL牛乳が218円であった。種類による価格差は大きい。過去の動きを見ると、おおむね価格が低下傾向にある。

図3 牛乳類の小売価格の変化(1リットル紙容器)




 以下、種類別に見ることにする。


1 牛乳は、販売数量が減少し、小売価格は二極化が鮮明

 千人当たり販売数量について見ると、12年度81本、13年度は75本と減少していたが、14年度は85本と増加し、15年度は85本、16年度は79本(前年度比92.8%)と減少に転じている(図4)。12年度以降、低脂肪加工乳や白もの乳飲料が大幅に減少する中で牛乳は15年度以後減少に転じている。16年度は猛暑であったものの、販売数量は増加せず、減少した。12年度対比でみると、16年度の販売数量の減少率は2.6%となっている。

図4 牛乳の販売数量と価格の推移




 1本当たりの小売価格について見ると、12年度は180.2円、13年度は177.9円と年々低下していたが、14年度は179.2円とわずかに上昇したものの、15年度は178.5円、16年度は177.3円で低下している。平成12年度対比で見ると、16年度の小売価格の低下率は1.6%となっている。

 牛乳の小売価格や品質志向の変化をみるために、価格帯別の販売数量構成比を年度別に示したのが図5である。16年度の価格帯別の販売数量構成比について見ると、ウェイトが上昇しているのは140円台、150円台、200円台、210円台であり、反対にウェイトが低下しているのは160円台、170円台、180円台、190円台となっている。さらに、価格帯を170円以下、171〜200円、201円以上の3つに分類してみると、170円以下が12年度26.5%から16年度50.7%に、また、201円以上が12年度5.6%から16年度20.3%とそれぞれ一貫して上昇している。逆に中間の171〜200円は12年度は67.9%と主要な価格帯であったにもかかわらず、16年度は28.9%と大幅に低下している。このように、平均小売価格はほぼ横ばいであるにもかかわらず、低価格化と品質志向により二極分化が鮮明になっている。品質志向は、プレミアムタイプ牛乳の商品群の多様化であり、プライベートブランド(PB)に対してナショナルブランド(NB)の復権からもうかがえる。

図5 牛乳の価格帯別販売数量構成比の推移




 16年度におけるメーカー類型別販売数量は、大手乳業が増加し、中小乳業、農協系乳業、PBが減少となっている。販売数量構成比を見ると、大きい順に農協系乳業、大手乳業、中小乳業、PBとなっている。過去5年間の推移を見ると、総じてPBの大幅な減少、NBの大幅な増加という構図が鮮明になっている(図6)。

図6 牛乳のメーカー類型別販売数量構成比の推移


 


2 低脂肪加工乳は、販売数量が引き続き減少、価格は横ばい

 低脂肪乳は、「加工乳」のうち乳脂肪率が1.5%前後以下のものおよび無脂肪乳を含むものとした。

 千人当たり販売数量について見ると、12年度17.2本、13年度は13.0本、14年度は10.9本、15年度は7.7本、16年度は6.7本(前年度比87.3%)と一貫して減少を続けている(図7)。12年度との対比でみると、販売数量の減少率は61.0%と大きくなっている。

図7 低脂肪加工乳の販売数量と価格の推移




  1本当たりの小売価格について見ると、12年度は135円、13年度は132円と低下傾向に推移し、14年度は133円、15年度は130円、16年度は128円となっている。12年度対比で見ると、小売価格の低下率は5.1%となっている。


3 白もの乳飲料は、販売数量が引き続き減少、価格は横ばい

 白もの乳飲料は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に定める「乳飲料」のうち、生乳や乳成分にカルシウムやビタミン類などを添加したものである。乳脂肪率は1.5%程度の商品が多く、無脂肪タイプも見られる。

 千人当たりの販売数量について見ると、12年度は19.7本、13年度は19.2本、14年度は17.6本、15年度は16.0本、16年度は15.6本と減少傾向にある(図8)。

図8 白もの乳飲料の販売数量と価格の推移




 1本当たりの小売価格について見ると、12年度は169円、13年度は167円、14年度は164円、15年度は163円、16年度は161円と低下傾向にある。小売価格と販売数量との関係を見ると、小売価格は低下傾向にあるものの、販売数量は減少している。


4 低脂肪牛乳は、販売数量、価格ともにおおむね横ばい

 低脂肪牛乳は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に定める「低脂肪牛乳」で、乳脂肪率1.5%程度の商品が多い。「無脂肪牛乳」を含む。

 千人当たりの販売数量について見ると、12年度は5.9本、13年度は4.9本と減少したが、14年度は5.4本と増加し、15年度は5.6本、16年度も5.6本となっている(図9)。

図9 低脂肪牛乳の販売数量と価格の推移




 1本当たりの小売価格について見ると、12年度は151円、13年度は154円、14年度は156円と上昇していたが、15年度および16年度は155円で横ばいとなっている。

(参考)
1. POSデータは、日本経済新聞社のPOS情報サービス「NEEDS-SCAN」による。
2. POSレジ通過客数千人当たり販売金額
千人当たり販売金額(円)=販売金額(円)÷POSレジ通過客数(人)×1000(人)
3. 小売価格は、バターは100グラム当たり、牛乳類は1リットル当たりの加重平均値
バターの小売価格(円)=販売金額(円)÷販売重量(グラム)×100(グラム)
牛乳類の小売価格(円)=販売金額(円)÷販売容量(リットル)
4. 小売価格は、消費税を含まない。
5. 牛乳類は1リットル紙容器入りで、その他の容量のものは除く。
6. 平成15年度の収集店舗数は、711店であった。また、年間総来店客数は、6億3千万人、1カ月当たりでは5,216万人であった。
7. 季節使数は、11年1月から15年12月の各月ごとの平均販売数量を算出し、12月の平均販 売数量を100としたときの各月の使数。


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