平成17年7月21日(木)、岡山市において「第54回全国農業コンクール全国大会」(毎日新聞社・岡山県主催、農林水産省・岡山市ほか後援)が開催された。この大会は、農業経営や生活面で、高い収益と快適な生活を実現し、地域に大きな影響を与えている全国の都道府県から選ばれた代表20名が創意工夫に満ちた事例発表を行い、農業の発展や農村の活性化に資することを目的に、毎年各都道府県で開催されているものである。
冒頭、主催者である北村毎日新聞社社長と石井岡山県知事の挨拶のあと、島村農林水産大臣の代理として出席した大口農林水産大臣政務官が大臣の祝辞を代読し、「3月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画に基づき、食の安全と安心の確保に万全を期し、高付加価値型の農業生産や品質の高い農産物の輸出など各地で芽生えている創意工夫に満ちた「攻め」の農政の取組みを支援したい」と述べた。
大会での実績発表では、園芸部門10名、畜産部門5名、種芸部門2名、複合部門2名、生活部門1名の各部門代表農業者20名がスライドを使用して活動の概要・成果を発表した。続いて、各部門毎の学識経験者などで構成している中央審査委員会の審査により、グランプリ・毎日農業大賞をはじめ各賞が決まり、畜産部門の篠田修紀氏(農業生産法人有限会社ジェイイーティーファーム)がグランプリを受賞した。
篠田氏は栃木県で乳牛約2,500頭と肥育牛約4,000頭を飼養し、4億円以上の利益をあげている乳肉一貫複合経営者である。「安全・安心」な生産物の供給を最重要課題と考え、非遺伝子組み換え飼料の使用やトレーサビリティを実施し、ISOの認証などを取得している。
また、優秀賞は、鹿児島県種子島でフリージアの球根栽培に取り組み、球根生産量及び販売数量が全国一である清水園芸株式会社の清水克己氏他9名が受賞した。清水氏は、連作障害を回避するためフリージア・さとうきび・甘しょの輪作体系を推進して種子島地域全体の産地育成を先導していることなどが評価されての受賞となった。
中央審査委員長の頼京都大学名誉教授は大会の講評において、「収益追求だけでなく、農地や自然環境への配慮、高齢者の雇用、担い手や食の安心・安全の確保など、地元との共存共栄を図り多面的な共同利益をあげている」と述べた。
また、(1)企業者意識を磨き経営管理能力を高めるために産地を視察研究し、同業種異業種とも連携を図っている。(2)情報通信技術を利用した顧客管理などの情報収集が徹底している。(3)効率的な分業に基づく組織を作るため法人化が進んでいる。(4)コスト競争力を高めるため、経営規模の拡大及び作物・品種・栽培の多角化を図り、高性能機械を導入して労働費用などの省力化を行っている。(5)消費者に対し安全・安心並びに新鮮な食文化の提供を行い、トレーサビリティシステムの開発やISOの認証取得など衛生的な生活環境を保証している。(6)自家農場の美化にとどまらず、地域全体の美化に取り組み環境保全に配慮している。(7)国土や経済環境に適した栽培飼育や加工技術を発掘しながら、消費者の需要動向を把握し、提案型のマーケティングをしている。(8)農業生産を行うだけでなく、加工・直売などの多角化を進め地産地消システムを整備している。と8項目の優良経営のポイントを挙げた。
さらに、「今回の20名の代表のような経営戦略を模範とし、地域と共生しながら農産物の輸出までをも狙う農業事業者を多数育成できるかが今後の課題である。それには行政、農業団体などと協力連携も行うことが重要であり、都市部生活者にも農業を理解してもらうことが必要である」と最後に語った。
グランプリを授与される篠田氏 |
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