今野バークシャー牧場は、宮城県北部の大崎市にある黒豚専門養豚場である。
当牧場で生産された豚肉を材料にして作った「無添加ソーセージ」は、グルメ漫画の「美味しんぼ」で「究極のソーセージ」として掲載されるなど、黒豚肉の人気商品を作り出している。
昭和30年代、牧場は、祖父と父が稲作と酪農を営んでいたが、経営拡大をきっかけに、牛舎を改造し、種豚を導入し、繁殖雌20頭規模の養豚一貫経営を開始した。
そのころ、出荷先の市場関係者から、「これからは、牛は黒(黒毛和牛)、豚も黒豚の時代が来る」と聞いた父が、黒豚生産を決意し、昭和47年に飼っていた豚をすべて処分して、当時の養豚仲間と1.5トンのトラックに乗って、鹿児島まで黒豚のオス1頭とメス10頭を直接買付けに行ったという経緯がある。
稲作の蓄えがすべて黒豚に食われる日々が数年続き、昭和52年にやっと肉豚として家畜市場などに出荷出来るようになり、「黒豚」としてスーパーでの販売を開始した。
牧場の黒豚生産での最大のこだわりはエサ、特に仕上げ期間に与えるエサにある。黒豚は三元豚などの一般豚に比べ、体が小さく成長も遅い、また、普通のエサを与えると厚脂になる傾向がある。試行錯誤を繰り返し、たどり着いたエサは、大麦圧ペンやトウモロコシ圧ペンなどを入れた高コストのエサであった。
現在は、生後3、4カ月の子豚を鹿児島から導入し、8〜9カ月齢で出荷している。年間の出荷頭数は委託農場を含め4,000頭、一昨年からは、母豚を100頭程度導入し一貫経営に移管を始めているところである。
規模拡大に伴う環境問題については、EM菌を利用したオガコ豚舎の成績がよく、無駄水の出ないエサ箱を使用していることから臭いも病虫害もほとんどない清潔な豚舎で、豚は健康に育っている。
このように、コストと手間のかかった黒豚生産ではあるが、肉質は理想に近づいた。この豚肉を食べた消費者から高い評価が得られるようになると、仙台市内の結婚式場や大手スーパーとの取引が広がっていった。黒豚を食べていただいたお客様に美味しいと言っていただける、それが黒豚造りの喜びである。今後も、お世話になった皆様に感謝の気持ちを持って、より元気で健康な黒豚を育てていけるよう努力していきたいと思っている。
今野バークシャー牧場の豚舎 |
牧場ではゆったりとした環境の中で伸び伸びと健康的に育てている |
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