★ 農林水産省から


2006年日豪牛肉需給情報 交換会議について

生産局畜産部 食肉鶏卵課 食肉需給対策室 西端 暁久


1 日豪牛肉需給情報交換会議について

 本会議は、1977年1月、東京で開催された第4回日豪閣僚委員会において、当時の鈴木農林大臣がシンクレア第一次産業大臣に対し、牛肉をめぐる日豪双方の理解を深めるための定期的な情報交換のための会合を持つことを提案して設置されたものである。1977年に豪州の首都キャンベラで第1回会合が開催され、以後、概ね日豪間で1年毎に主催国を変えて実施されてきたところである。

 29年目を迎えた今年は、去る10月26日に東京での開催となり、最近の両国の牛肉需給動向をはじめ、FTAをめぐる情勢、和牛の表示に関する検討状況などの最新の動向について情報交換を行ったので、その概要を報告する。


2 会議の概要

 今回の会議における主なやりとりの概要は次のとおり。
(1)両国の牛肉需給動向について
【日本側からの説明】

・牛肉の需給については、2003年12月の米国産牛肉の輸入停止以降、米国産牛肉の代替として、豪州産などの牛肉の輸入量が増加しており、2005年は輸入停止前の2003年と比較して約90%の供給量を確保している(次頁左)。また、本年1月から8月までの供給量については、国内生産量は前年同期と同水準であったものの、現地価格の上昇により豪州産の輸入量が減少傾向にあったことから、前年同期を若干下回る水準で推移している(次頁右)。

・本年7月27日の米国産牛肉の輸入手続き再開後の輸入動向については、10月23日までに、動物検疫所における第1便以降約2,701トンの輸入検査が終了している。

・今後の米国産牛肉の輸入動向については、2003年12月の米国産牛肉の輸入停止以降、米国産牛肉の代替として、豪州産牛肉や国産牛肉、豚肉が定着していることなどもあり、現段階で正確には予測し難い。

 
【豪州側からの説明】
・かつてないほどの国際的な牛肉の需要増を背景に、牛肉価格が上昇傾向にあるが、最近は、生産地帯である東海岸を中心に干ばつが進行しているため、出荷頭数が増加し、生体価格は低下し始めている。長期的には干ばつや土地の制約などがあるため、キャパシティの拡大には限界があり、飼養頭数は頭打ち(現状から約200万頭増の約3,000万頭)となると見込まれる。

・国内飼養牛のうちグレインフェッド(穀物肥育)の割合が増加傾向にあり、日本向け牛肉輸出量に占める割合も約半分にまで増加していること、今後とも、韓国や中国の牛肉消費量の増加に伴い、これらの国に対する輸出量が、グラスフェッド(牧草肥育)を中心に増大するものと予想している。

○ 我が国における牛肉の供給量

(2)日豪経済関係強化のための共同研究について
・豪州側から、わが国農業のセンシティビティの高さやフレキシビリティの必要性について認識しつつ、日豪FTAの締結は、わが国の食料安保等にも貢献するとともに、日豪双方の牛肉関係業界にメリットをもたらすものであるとし、早期の交渉開始を求める見解が示された。

・日本側からは、FTAの締結により、豪州産牛肉の関税が撤廃された場合、わが国の肉用牛産業が深刻なダメージを被ることを指摘した。

(3)和牛の知的所有権・表示等に関する検討について
 日本側から、「家畜の遺伝資源の保護に関する検討会」の中間取りまとめの概要及び、「食肉の表示に関する検討会」における検討状況について概要を説明した。

 豪州側からは、種畜の遺伝子情報もあるため、豪州産和牛も「和牛」表示が可能ではないか、また、将来的に豪州の和牛認証制度の枠組みが日本の制度に当てはまるのかどうかを議論したい旨の発言があった。


3 おわりに

 日豪両国には、牛肉産業が農業の中の基幹的部門であるとの共通した背景があり、今後とも、本会議の開催を通じて、それぞれの置かれた立場を十分に理解し合い、長期的観点に立った友好的な牛肉の貿易関係を発展させていくことが重要であると感じた次第である。

 


元のページに戻る