青森県/西藤 克己
青森県上北地域は県の東部に位置し、太平洋と陸奥湾および八甲田山系に接する2市7町1村からなる地域である。今回紹介する(有)身土不二が位置する東北町はそのほぼ中央にあって、県都青森市や新幹線駅がある八戸市からも約40キロメートル圏に位置している。上北地域は古くから馬産地として発展してきており、同社の前身も大正6年(1917年)に設立されたサラブレッドの生産・育成・調教牧場であった。1987年から総面積90ヘクタールという広大な牧草地・耕地を生かし、自家製たい肥による無農薬、無化学肥料の野菜栽培に取り組み、平成12年から一棟400平方メートルの鶏舎二棟を作り400羽規模の平飼い養鶏を開始している。 同社は、軽種馬育成約50頭、預託約30頭の牧場を営みながら、自家製たい肥の完全利用による有機野菜生産、さらに自家製有機栽培トウモロコシや地元産飼料を利用した採卵養鶏に取り組み、耕種と畜産の連携による有機農業システムを確立している。採卵養鶏は有機畜産に極めて近い経営形態であることから、健康・安全志向に対応した今日的・社会的意義があり、平成17年度畜産大賞表彰において「軽種馬牧場の新たなる挑戦〜地域資源の活用による有機農業・養鶏への取り組み〜」により特別賞を受賞している。 採卵養鶏部門の特徴としては、地域産原料にこだわった飼料利用がある。それは、6ヘクタールの有機畑で生産したトウモロコシや野菜、地元有機農家が栽培した小麦および菜種に加えて、地元漁港からは魚粉や、年間3万トンが廃棄されるホタテ貝殻も有効利用の観点から調達給与している。 飼養管理については、一棟に200羽収容し、十分運動ができる1平方メートル当たり0.5羽の飼育密度を与え、鶏の習性に配慮した止まり木の設置や野菜の常時給与を行っている。さらに、同牧場では、平成18年4月から県の畜産試験場が作出した「あすなろ卵鶏」による鶏卵生産を行っている。あすなろ卵鶏は県が長年、卵黄が大きくなるように選抜改良した原種を交配利用した特産卵用鶏で、青い殻の卵を産み、卵白に対する卵黄割合が50%超(通常の鶏では30〜40%台)になる優れた特徴をもっている。鶏自体も青森県産、この場合は青森の「青」に徹底的にこだわっている。価格は一個315円と高級だがユニークで安全・安心なギフト商品としての販売促進を目指している。
|
元のページに戻る