食肉生産流通部 食肉課 安井 護
1 地域ブランド「京都ぽーく」○補助事業を利用してブランド展開
○京都ぽーくとは
また、止め雄のデュロック種(D♂)についても、国などから導入し、増殖して農家へ供給している。
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図3 パンなどの食品残さの利用の流れ
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○原料に応じて異なる工程
受け入れる原料は、(1)食パンの耳(サンドイッチ用に型抜きした残り)、((2)賞味期限切れなどの袋詰めされたパン、(3)お菓子(小麦粉を使用した細い棒状のスナック菓子)の製造時に発生する裁断くずの3種類である。
(1)食パンの耳
そのまま乾燥機にかけて水分を飛ばした後に粉砕する。
(2)袋詰めパン
ビニールの袋を機械で破ってから、乾燥機にかけて粉砕する。出来上がりを見ると菓子パンのアンやチョコなどが小さく残っている。
(3)お菓子の裁断くず
乾燥しているので、そのまま粉砕するだけ。お菓子の搬入は週に1回である。
工場のラインは(1)と(2)が同じで、(3)は乾燥工程がないので別ラインとなってる。また、(3)の菓子原料は油脂や糖分が含まれるので栄養価が高く、主にほ育ステージで使う場合が多い。
図4 パン飼料の生産工程
(注)「扱う予定はない」は、もともと取り扱いのない社である |
○農家それぞれが工夫して利用
パン工場に支払う残さの代金は1キログラム当たり1円、工場で生産された飼料は1キログラム当たり15円で構成員に販売し、運営コストを賄っている。
組合(工場)の運営は共同で行っているが、パン飼料の使い方は各自が工夫を凝らしている。農家は、まず、飼料メーカーにパン飼料との配合に合う基礎飼料を作ってもらう。そして、発育ステージに応じて、パン飼料と基礎飼料の割合を変えて、自家配合している。
例えば、代表の北側勉さんは、パン飼料とトウモロコシなどを加えた基礎飼料とを半分ずつにして使っている。基礎飼料は肥育前期と後期の2種類あるが、パン飼料の配合割合は50%で同じだ。
基礎飼料40円なので、単純に考えれば1キログラム当たり25円のコストダウンとなっている。
しかも、出来上がった豚肉は、肉色は浅く、鮮やかで、小麦主体となることから、脂肪交雑が入りやすいという。
菓子パンが多いとか、パンの耳が多いとか、投入原料によって、飼料の品質が異なってくるのではないか。それによって、肉質に変化がないか。との問いに北側さんは、肉質に変化が出るほどの影響はないとの答だった。
飼料配合の例
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中央が北側さん
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○京都の農家と一緒にやる
「京都で生産された豚肉を京都の消費者に食べて欲しい。そんな製品を京都の農家と一緒に作っていきたい」と、意気込みを語るのは有限会社京都特産ぽーく社長の片山昭彦さん。自身も以前、養豚をやっていた片山さんは、おいしい豚肉をそのまま、加工品にして消費者に届けたい、そんな気持ちで京都ぽーくを利用した加工品の生産に取り組んでいる。
京都ぽーくの加工品生産は平成6年度に今とは別の組織でスタートしたものの、いったんは様々な事情からとん挫してしまった。しかし、養豚農家から「再び、自分たちの豚肉を自分たちで加工して、自分たちのブランドで売りたい」との強い熱意から、平成12年度に農家など4者が出資して今の会社を立ち上げた。現在ではハム、ウィンナー、焼き豚など21品目の加工品を製造・販売している。
現在のところ、出荷農家は出資者でもある2戸で、京都市場でと畜された後、枝肉を買い入れて施設で部分肉カット後に加工している。
○京都の人に食べてほしい
製品に添付するシールは、以前、いかにも京都らしい五重塔と大文字の送り火をあしらったものであった。今は、絵はなくて「京都丹波で生まれた銘柄豚京都ぽーくを使った手作りハム!!」とそのものずばりの表現である。以前のシールの方が京都らしくていいのではとの問いに片山社長は、「うちのハムは、お土産にするのではなく、京都の人にこそ食べてほしい。だから、シールも変えました」
地元産の豚肉を地元の人に届けたいという気持ちを強く感じた。
今では、販売先も広がり、大阪や兵庫などへも出荷されている。
旧シール
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新シール
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○原料が足りない
京都特産ぽーくが、買い入れる枝肉は1週間に20〜30頭。片山社長自らのトップセールスで、ブランドが定着し、販売量も安定してきた。加工品だけでなく、生肉での販売も開始したことから、もっと販売量を増やしたいところだ。だが、肝心の豚肉の生産が現状では需要に追いついていない。今後の生産拡大が、課題となっている。
失礼ながら、京都府はいわゆる「畜産県」ではないし、その中でも養豚が盛んでもない。京都で養豚といっても、多くの読者は「へぇ」という感想を持つかもしれない。紹介した京都ぽーくの取り組みは、養豚農家が「自分たちが地元で作った豚肉を地元の消費者に食べてほしい」という素直で強い気持ちを持ち続けたことがきっかけとなっている。
国産の強みは、生産現場と消費者までの距離が短いことである。そして、ブランドとは高く売るためのものでは決してなく、消費者に対する約束と言えよう。つまり、われわれは、こういう豚をこういう方法で飼育して、届けていますという約束。約束を守ることがブランド価値を高めることであり、約束を破ったときはそれ相応のペナルティーを受けることとなる。
今、京都ぽーくでは、生産情報の記録、公表を目指して検討を進めている。行政主導ではない生産者自らがブランドとしての価値を高める動きとして注目できる。
今回、京都ぽーくの事例を紹介した。補助事業がその成功の一助となっているのであれば、幸いである。
最後に調査に当たっては、京都府農林水産部畜産課佐々木敬之さん、社団法人京都府畜産振興協会田中浩文さんにお世話になった。記して感謝申し上げたい。
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