◎地域便り


岩手県 ●銘柄牛をきっかけに国際交流

岩手県/川田 啓介


 高い枝肉歩留まりで知られる肉用牛、ピエモンテーゼの産地であるイタリア・ピエモンテ州カルー町で昨年の12月15日に第95回Fiera Regionale del Bue Grasso(肥育牛見本市)が開催された。この見本市に岩手県前沢町の肉牛生産者ら3名が招待され、西洋と東洋の牛の飼育方法や食文化について情報交換する機会を得た。

 ピエモンテーゼはAssociazione Nazionale Bovini di Razza Piemontese(全国ピエモンテーゼ生産者協会)により種雄牛造成および精液の供給が行われ、協会で把握している20万頭の牛はすべて血統情報が管理されていた。また、精肉店やレストランなど小売り段階において販売指定店制度を導入するなどカルー町のピエモンテーゼの銘柄化が進められていた。

 肥育牛見本市に先立って、情報交換会が開かれた。和牛は世界一値段の高い牛肉として注目されたが、その肉質だけでなく、前沢町がこれまで行ってきた牛肉銘柄化の手法や銘柄牛を用いた町づくりなどにも高い関心が寄せられた。試食会では、ステーキ(リブロース)の食べ比べが行われ、前沢牛は美味しいと絶賛された。一方、ピエモンテーゼは完全な赤身肉であったが、穀物を与えて肥育しているためか、柔らかくジューシーで日本人好みの風味を持つ美味しい牛肉であった。イタリア産牛肉はBSEの発生のため日本への輸入は停止されているが、カロリーが100グラム当たり160キロカロリーと低く、脂がないため日本においても病人用の食材などとして利用価値があると思われた。

 「肥育牛見本市」は、人口5千人のカルー町に3万人の参加者が訪れる約100年の歴史を持つこの町の一大イベントである。中心行事は生体の品評会と入賞牛のパレードである。牛と観客の間には特に柵などは設置されておらず、入賞牛はパレードを組み、街中を行進し、観客の喝さいを浴びていた。牛飼いは、面綱と杖のみで牛を扱い、鼻管などは特に用いていなかった。品評会の後、牛肉の塊を煮込んだ、この地方の伝統料理が振る舞われ、参加者は舌鼓をうっていた。

 われわれの訪問はイタリアの全国紙やテレビにも紹介され、若干ながら牛を通して日本の文化を海外に発信することができた。また、黒毛和種による牛肉の生産が世界に誇る日本の文化だと再認識するよい機会となった。

 前沢町には、開館10周年を迎えた国内唯一の牛の博物館(博物館法に基づいた登録博物館)がある。今後とも日本の牛文化、海外の牛文化について紹介していきたい。



見本市で入賞したピエモンテーゼ

ピエモンテーゼ VS 前沢牛の牛肉対決

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