山形県/五十嵐 宏行
山形県では平成5年に県内初となるランドレース種系統豚「ヤマガタL」を造成し、以降系統豚を機軸としたLW種豚および肉豚生産を推進してきた。山形県立養豚試験場(現山形県農業総合研究センター畜産試験場養豚支場)では、原種豚の更なる能力アップを目指し平成10年に後継豚の造成に着手、全国8県9農場より導入した基礎豚を元に6世代・7年間にわたる改良を実施し平成17年に造成を完了した。新系統豚は同年3月に(社)全国養豚協会より「ガッサンエル」の名で認定を受け、現在は(社)山形県系統豚普及センターで維持増殖が行われている。ちなみに系統名は県中央に高々とそびえる霊峰「月山」に由来するものである。 「ガッサンエル」の造成過程においては、ランドレース種に求められる“母豚”としての能力に強くこだわり、「繁殖性の向上」と「肢蹄の強化」の2点にポイントを絞り改良を進めてきた。繁殖性については育種価による能力選抜により平均正常産子数11.3頭(ヤマガタL比+1.3頭)を達成。また弾力性のある歩様としっかりとした着地性を求めるため、骨格と蹄を重視した評価法により選抜を行い、肢蹄の太さ(管囲)で16.6センチメートル、肢蹄面積(四肢合計)で72平方センチメートルと(ヤマガタL比+1.5センチメートル、11.2平方センチメートル)非常に安定感のある肢蹄に仕上がっている。実際に農家で利用されるF1母豚の成績も良好で、特にほ乳・ほ育能力に優れていることが大きな特徴である(LW×D種4週時子豚離乳体重9.18キログラム:造成中の組み合わせ検定成績による)。 また、「ガッサンエル」の肉は消費者試食アンケートでやわらかく脂がさっぱりしていると好評を得ている。系統豚が肉豚へ及ぼす遺伝的影響力はそれほど大きなものではないが、三元交雑種の基礎として肉質の面からも下支えとなることが期待される。 (社)山形県系統豚普及センターでは現在、既存集団から新系統への切り替えを急ぐため増殖群の拡大に努めているところである。F1種豚「ガッサンLW」については一部供給を開始しているが、まだ少数であり、今後、徐々に供給頭数を増やしながら平成19年度からの本格供給を見込んでいる。
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