平成18年を迎え、新春のお慶びを申し上げます。
昨年3月には、今後10年程度の政策展開の基本方向を示した新たな食料・農業・農村基本計画が閣議決定されました。
新しい基本計画では、平成27年度における畜産物の生産努力目標として、肉類は平成15年度比5%増、生乳は同10%増、飼料作物は同49%増を見込み、食料自給率目標は肉類で62%(15年度から8ポイントの増)、牛乳・乳製品で75%(同6ポイントの増)が示されました。
さらに、同計画においては、食の安全と消費者の信頼の確保、担い手の明確化と施策の集中的・重点的実施、経営安定対策の確立、農業生産環境施策の導入など重点的に取り組むべき事項を明らかにしております。
この計画に沿って、畜産の分野では、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針の策定や飼料自給率向上特別プロジェクトの取組などが進められています。
農林水産大臣から当機構に示された畜産業務の推進のための中期目標につきましても、生乳および牛肉の生産コストの2割程度の低減などを通じて、畜産物の生産の増大などに資するよう各種業務を効率的に実施することとされております。当機構としても、価格安定業務、生産振興・流通の合理化・環境対策などの畜産業振興事業および学校給食用牛乳供給事業の補助業務、加工原料乳生産者補給金交付業務、肉用子牛生産者補給金の交付業務などに鋭意取り組んでまいる所存です。
さて、昨年のわが国の畜産業についてみますと、牛肉の生産量は前年の出荷時期の前倒しの反動から前年より減少しました。枝肉価格は国内生産の減少や、米国のBSEの発生に伴う輸入停止措置の影響から堅調に推移しています。また、肉用子牛の価格も肉専用種を中心として高水準で推移しました。
豚肉の生産量は前年を下回って推移したことから、卸売価格は高水準で推移しました。なお、昨年は、第1四半期の豚肉輸入量が関税の緊急措置の発動基準数量を下回ったため、5年ぶりに同措置の8月の発動が回避されました。
また、鶏肉は、鳥インフルエンザの影響からの回復を受けて、昨年より生産量、輸入量、消費量とも上回って推移しました。鶏卵は、生産量の回復に加え輸入量の増加により、卸売価格は落ち着きを取り戻しています。
酪農については、他の飲料との競合から牛乳などの消費が伸びないため、乳製品向け処理量が増加している中、国産ナチュラルチーズの生産振興に取り組んでいます。
一方、国際情勢では、WTO交渉が進められるのと並行して、経済連携協定(EPA)・自由貿易協定(FTA)締結に向けた動きが非常に活発化していることが大きな特徴です。
WTO農業交渉については、わが国のような食料輸入国と多くの輸出国という対立だけでなく、先進国と途上国との主張が対立していますが、EPA・FTAは、シンガポール(平成14年11月発効)、メキシコ(平成17年4月発効)、マレーシアとの間で協定を締結するとともに、フィリピン、タイとの間でも同協定の締結につき大筋合意に至ったところです。
WTO農業交渉、EPA・FTA交渉については、国民の食の安全・安心の確保、農林水産業の多面的機能への配慮、食料安全保障の確保などに留意しつつ、輸入国としての立場が反映される内容となるよう国を挙げて取り組まれています。
このような情勢にあって、わが国は、世界的な日本食ブームやアジア諸国の経済発展などを背景に、品質の良い農林水産物などの輸出を積極的に拡大しようとしています。平成17年4月に農林水産物等輸出促進全国協議会が設立され、平成21年にはその輸出額を倍増させる計画の下、官民一体となった努力が続けられています。
このような、山積する国際的課題に対応した海外情報収集体制を充実するため、当機構は、17年10月に国際情報審査役を新設したところです。
近年、食生活の乱れが指摘されていますが、政府は昨年7月、食育基本法を施行しました。この中で、食育を健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむための、生きる上での基本と位置付けています。このことから、健全な食生活を実践することができる人間を育てるため、農業体験活動、食育を指導する教職員の設置、地産地消などの具体的な取組が進められています。
当機構におきましては、全国学校栄養士協議会の方々と連携し、「牛乳・乳製品の知識」、「食肉の知識」を情報収集提供業務の一環として、作成し、全国の学校栄養士に配布したところでありますが、学校の食育を現場では高い評価を頂いたところであります。今後とも食育の推進には力を入れてまいりたいと考えております。
当機構は、業務の執行、組織の運営に当たり今まで以上に適正、効率化、透明性を確保しつつ、農畜産業および関連産業の健全な発展並びに国民消費生活の安定に努力してまいる所存です。
今後とも、皆様方の格別のご支援、ご指導を賜れば幸いでございます。本年が皆様方にとって希望の持てる年となりますことをご祈念申し上げ、新年のあいさつといたします。
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