◎地域便り


静岡県 ●家畜排せつ物と生ごみからバイオガス発電

静岡県/勝地 孝則


 静岡県では、家畜排せつ物などのバイオマスの新たな活用を進めるため、平成17年5月に県天城放牧場(伊豆市)内にバイオガスプラントとたい肥化処理施設を設置し、モデル施設として実証事業をスタートさせた。この施設は、牧場で発生する牛のふん尿と、地域の事業所などで発生する生ごみを合わせてメタン発酵させ、生産されたバイオガスを発電して自家利用するものである。

 今回導入されたバイオガスシステムは、1日約5トンの原料を、水分の高い湿式という発酵方式で、38℃前後の発酵温度で40日間ゆっくり嫌気発酵させ、発生したバイオガス(60%がメタンガス)を使ってガスエンジン発電機を回して発電させるものである。また、発酵後に残った残さ(消化液)は固液分離し、液分は貯留して液肥として牧草地へ散布、固形分はたい肥化処理施設でコンポスト化し、たい肥として利用する。

 このシステムの第一の特徴としては、家畜ふん尿と生ごみの割合が約2対1と、生ごみの割合が高いことである。カロリーの高い生ごみと発酵が安定しやすい家畜ふん尿を組み合わせることで、より効率的で安定したバイオガス発電を実現することを狙いとしている。

 第二の特徴としては、消化液の発生量を抑える方法を採用していることである。まず消化液を固液分離するとともに、発酵前の水分含量を調整するために、原料の希釈用に消化液の液分を利用している点にある。

 また、生ごみを利用する場合に一般に問題となる発酵に適さないプラスチック類などのごみを、排出段階でできる限り分別している点もシステムを成立させる条件となっている。

 平成17年6月から家畜ふん尿の投入を開始し、現在は発酵が安定化してきたところである。さらに、11月からは生ごみの追加投入を開始し、現在は本格稼動に向けて調整を行っており、発電量も順調に伸びている状況にある。

 また、発酵残さは、液肥やたい肥として牧場内で利用するとともに、今後、近隣地域の農業分野へ活用していくことを計画しており、地域資源循環型のモデル地域として実証しながら、今後県内の民間事業者や市町村などへも同様な施設の普及を図っていきたい。


天城放牧場バイオガスプラント全景
(左が処理棟、右が液肥貯留槽)

ガスエンジン発電機

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