◎地域便り


岩手県 ● 乳肉複合経営を支える粗飼料の共同生産

岩手県/堀米 昭男


 東北一の酪農の町、葛巻町では6戸の酪農家が粗飼料の共同生産で乳肉複合の規模拡大とコストの低減に取り組んでいる。

 町の北西部に位置する吉ヶ沢集落は古くからの酪農地帯。昭和50年代の北上山系の開発で草地基盤を整備するとともに、粗飼料管理用機械を導入、共同利用による省力化と粗飼料確保で飼養頭数を拡大してきた。労働力や頭数などの条件が似通っていてまとまりの良さで定評のあるこの6戸は、平成16年8月、農事組合法人「百笑組合(組合長 中家重夫さん)」を設立し、(1)牧草・デントコーンの耕起、栽培管理、収穫・調製、(2)家畜ふん尿処理およびたい肥化などの作業の共同化および共同生産、利用を行っている。また、(3)和牛繁殖経営の情報・技術交換や低コスト牛舎・共同たい肥舎の設置にも取り組んでいる。

 組合をリードする中家さんは、昭和49年当時は水田30アール、搾乳牛5頭、飼料畑1.2ヘクタール。現在は、削蹄師の資格を持つ2人の息子さんも加わり搾乳牛30頭、育成牛10頭、和牛繁殖牛50頭、子牛32頭、採草地20ヘクタール、デントコーン3ヘクタールの町内でも指折りの乳肉複合経営農家である。

「個別対応で負担が大きい部分は共同、共働で支える。」「畜舎に金をかけない。」「搾乳オンリーでなく和牛繁殖も組み合わせて経営体質を強化する。」など、30年のキャリアから生まれた中家さんの経営理念がみんなに浸透している。

 また、共同をより合理的で強固なものに発展させ、次世代に引き継ぐ仕組みとして6戸を一つの“ファミリー牧場”とする構想を練っている。すなわち、法人化し構成メンバーの事業(搾乳・育成・和牛繁殖・飼料生産・たい肥生産・資源循環など)をより専門・分担化し効率の高い生産体制を確立するとともに、遊休農用地や経営中止農場の生産基盤を吸収するなど地域農業の維持・発展を図ろうとする内容である。「百回笑って百まで生きよう。」をキャッチフレーズに明るく元気にみんなで励んでいる。

○ 共同生産対象
牧草地:100ヘクタール、デントコーン:20ヘクタール
○ 共同利用機械・施設
トラクター・ロールべーラー・ラッピングマシーン
マニアスプレッター、ホイールローダー
たい肥舎、畜舎(繁殖牛)ほか
○ 飼養頭数(6戸合計)
乳用牛255頭、黒毛和牛155頭

和子牛は低コスト牛舎で育成(ビニール囲い)
   
共同たい肥舎(17年畜産環境総合整備事業で建設)
細断型ロールベーラー


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