◎地域便り


石川県 ●家族労働力を考えた酪農経営

石川県/北川 治雄


 石川県鳳珠郡能登町は名前のとおり能登半島にある。西出牧場はその能登町の丘陵にあり、天候条件によっては富山湾を挟んで遠く立山連峰が見える自然条件に恵まれた所にある。経営者の西出宏さんは「家族経営には家族経営のやり方がある」との考え方から、家族経営の限界を越えない酪農を実践してきた。まず、年間の家計費や償還元金などを考えて必要な所得額を決め、所得率から売上高を決め、売上高から経産牛乳量を決めるという、まさに生産計画を立て実行してきた。現在、経産牛頭数を33頭、育成牛を14頭飼養しており、牛群については、西出さんが長年にわたり牛群改良してきた優秀な牛群である。平成16年までの過去6年の平均経産牛乳量は7,256キログラムとなっており、このように優秀な牛群でありながら経産牛乳量を追求せず、牛に無理を掛けない飼養を行っていて、これが医療費いらずとなり、飼養管理時間の軽減にもつながっているようである。また、生産コストを下げるために自給飼料に力を入れていて、自ら造成するなど手塩に掛けた12ヘクタールの草地は、管理技術に優れていることから(社)日本草地畜産種子協会主催の平成15年度全国草地畜産コンクール「飼料生産部門(永年牧草の部)」において、農林水産大臣賞を受賞しており、大変すばらしいものとなっている。粗飼料はヘイキューブを購入しているが、それ以外はほとんど自給している。牧草の生産はロールベール体系で行い、調製技術などが優れていることから毎年良質のロールベールを生産している。これによって購入飼料費が抑えられ、過去6年平均で乳飼比が33.4%、所得率が25.9%となっている。比較するために(社)中央畜産会の「経営診断からみた畜産経営の現状」の平成15年度の酪農平均(都府県)をみると経産牛乳量が8,002キログラム、乳飼比が47.7%、所得率が17.4%となっている。このことから、当経営がいかに安定して所得率が高いかがうかがわれる。経産牛規模が多くなくとも、無理のない確実な生産計画を立て、それを確実に実践することによって、所得が得られることになる。また、経産牛規模を少なくすること、疾病を減らすことにより毎日の作業時間を短縮することができるとのことである。西出牧場では家族の方が畜舎や自宅の周りの環境美化に努め、花をたくさん植えるなど環境保全型酪農を実践している。また、ふれあい体験として見学者を受け入れ、搾乳体験やトラクターの試乗など消費者との交流を図り酪農業に対する理解を広める努力をしている。さらに、西出さんは競技用の自転車に乗ることが趣味で、毎年子供と一緒にいくつかの自転車ロードレースに参加するなど、余暇を楽しむ酪農経営を実践している。

自宅や牛舎の周辺に花を植え環境美化に努めている 全国草地コンクールで農林水産大臣賞を受賞した西出牧場の採草地
 

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