岡山県では、製材廃材や風倒木などの木質バイオマスを活用したエタノール生産や、菜の花の廃食油をバイオディーゼル燃料として利用する取り組みを進めているが、畜産分野においても、資源循環型畜産の確立を目指して、家畜ふん尿のメタン発酵技術を活用したバイオガス発電や熱利用技術の実証に取り組むこととし、平成16年度、県総合畜産センタ−内にバイオガス発電施設を整備した。
家畜ふん尿や生ゴミは、そのほとんどがたい肥化処理や焼却処理されている中、この施設では、家畜ふん尿だけでなく生ゴミも利用して電気と熱の回収を可能としており、資源循環型社会の構築への貢献を目指している。
また、混住化の進展によりエネルギ−回収後残さ(消化液)の散布が困難な地域においては、その消化液の浄化処理が必要となることから、この施設では消化液浄化処理施設も併設しており、河川などへの放流を視野に入れた浄化処理技術の検討を行っている。
この施設へは、日量2.7トンの豚ふん尿(約350頭分)と日量0.3トンの生ゴミを混合して投入している。なお、生ゴミの投入には、生ゴミの破砕が必要であり、その専用機械を製作して取り付けている。これらの原料を約35℃で30日間嫌気発酵させることで、1日当たり約110立方メートルのバイオガス(60〜65%がメタンガス)が発生し、ガスエンジン方式のコ・ジェネ(熱電併給)装置により、一般家庭約15戸分の電気を回収している。また、熱は温水として回収しており、電気とともにすべて施設内の設備用として使用しているほか、現在、余剰分の施設外利用を検討している。
エネルギ−回収後の消化液の処理は、脱水機で固液分離した後、固形分はたい肥化し、液分は膜分離活性汚泥法により放流可能なレベルまで浄化している。
現在、この施設では、ガス発生量や発電量、浄化処理水の水質などの運転状況を調査し、低コスト化など新たな有用技術を検討しているところである。また、同時に県内への施設導入を進めるために、実証展示を通じて畜産関係者だけでなく広く県民に資源循環に対する理解を深めて頂きながら、畜産経営が地域と密接に調和した資源循環型社会の構築を目指している。
総合畜産センター内のバイオガス発電施設全景(手前)
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消化液は、膜分離活性汚泥法により放流可能なレベルまで浄化する(中空糸膜フィルター) |
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