企画調整部 広報消費者課
「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる「食育」の推進が重要となっていることから、昨年7月15日に「食育基本法」が施行され、あらゆる機会を利用して「食育」の推進を図ることとされている。 I 「ニッポン食育フェア」への出展」 1月14、15日(土、日) 地域の特色を生かす健全で安心できる食生活、地場産物の活用による消費者と生産者の相互理解の推進、地域に伝わる伝統的な食文化の継承を紹介し、食育の一層の推進を図ることを目的として、農林水産省が提唱し、地域に根ざした食育推進協議会と社団法人農山漁村文化協会の主催による「第3回食育総合展 ニッポン食育フェア」が1月14日(土)、15日(日)の2日間、東京国際フォーラムで開催された。この2日間で、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の2万7千人が来場した。
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会場には約250名が参加 |
1 基調講演
基調講演は、3名の講師から、農薬や食の安全・安心についての重要課題をテーマに行われた。
(1)「農薬からみた食の安全と安心」 (梅津憲治氏・大塚化学ホールディングス(株)取締役兼専務執行役員、神戸大学客員教授、日本農薬学会会長)
・農薬は、膨大な試験を行い、厳密な審査を受け、国の登録を取得した薬剤であり、登録された範囲内で使用される限り安全が保証されるものである。
・消費者は食の安全性に関して、食品添加物や農薬の使用について不安感を持っているが、農薬を使用しないで消費者が求める農作物を生産することは困難である。
・また、消費者は、天然物は安全と信じ込んでいるが、ジャガイモに含まれるソラニンに代表されるように、天然物が直ちに安全というわけではない。
・したがって、人工物であるか天然物であるかを問わず、われわれを取り巻く環境中に存在する残留農薬をはじめとする種々の化学物質の危険性と安全性に関して、また、その有用性に関しては、最新かつ最高水準の科学技術の成果に基づいた客観的な議論が必要である。
(2)「食の安全を目指したイオンの取り組み」(植原千之氏・イオン株式会社食品商品本部グリーンアイ開発部長)
・消費者の食の安全・安心に対する関心が高まる中、イオンにおいては、生産段階から消費段階にいたる過程で、一貫した基準・規範(GAP/GMP/GDP)を適用することにより、農産物に由来する食のリスクを最小化し、食の安心を向上させるシステムであるA-Q(イオン農産物取引先様品質管理基準)の構築に取り組んでいる。
・イオン−GAP(適正農業規範)は生産者や生産管理責任者が、イオン−GDP(適正流通規範)は流通にかかわる者が、当たり前のこととしてキチンと取り組んでいくという内容である。
・GAPやGDPに取り組むことにより、産地全体の品質管理レベルが上がり有利販売ができる、余裕を持った栽培管理を行うことができる、コスト意識が芽生え財務内容が改善するなどのメリットが生じている。
(3)「農薬のポジティブリスト制とその対策について」(横田敏恭氏・農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室長)
・農薬については、農薬登録制度による安全性のチェック、無登録農薬の取締り、農薬の使用方法のチェックにより、リスク管理が行われている。
・ポジティブリスト制は、残留農薬基準が設定されていない農薬が一定量を超えて残留する食品の販売などを原則禁止する制度であり、残留農薬基準がない農薬については、暫定基準や一律基準が適用される。
・農薬使用時においては、農薬のラベルの記載事項を確認して使用基準を遵守すること、農薬散布時のドリフトに注意することが重要である。
2 パネルディスカッション
パネルディスカッションは、「農薬と食の安全を考える」をテーマとして、岡山大学多田教授の進行により行われた。パネリストは、講師3人に佐伯峰義氏(JA愛媛野菜生産者組織協議会運営委員)、佐藤久子氏(岡山県消費生活問題研究協議会副会長)、真木貴正氏(コープCSネット 商品事業本部長)に加わっていただき、(1)農薬はなぜ必要か、(2)農薬を安全に使うためにはどうしたらよいか、(3)消費者に安心してもらうためにはどうしたらよいかという三点をポイントに意見交換が行われた。
「農薬と食の安全を考える」パネルディスカッション |
1月23日(月)、京都市呉竹文化センター(京都市伏見区)において、「食生活と健康を考えるシンポジウム」を開催した。近隣府県から、消費者、栄養士、医療・福祉関係者、食品関係者など約600名が参加した。
1 服部幸應氏の特別講演
共同主催者である農林水産省近畿農政局と食を考える国民会議から開会のあいさつが行われた後、服部幸應氏(服部栄養専門学校校長/医学博士、食育推進会議委員)から『食育を考える』と題した特別講演をして頂いた。
[講演要旨]
(1)生活習慣は8歳までにきちんと付ける。その基本は食生活であり、食育がしっかりしていれば知育、徳育、体育もともに伸びる。生活の基盤が崩れ始めている日本では、食を通じた人間教育をし直すことが必要となっている。
第一に、どんなものを食べたら安全か、危ないかを知る能力を身に付けさせること。
第二に、食べる場を通じて「しつけ」をすること。
第三に食料や環境問題を教えること。
(2)40%まで落ちた食料自給率を上げるため、日本人の身体に合った食べ方を考え直さなければならない時期にあり、みんなで努力しなければならない。小さいときから食料にも生産にも興味を持ち、農業や漁業を原点からサポートするようになることなど。
2 吉田俊秀氏の話題提供
次に、吉田俊秀氏(京都府立医科大学臨床教授/京都市立病院糖尿病・代謝内科部長、5千人を超える肥満患者を診察)から、パネルディスカッションの話題提供として、『食べたいけど痩せたい人のために』というテーマで話をいただいた。
[講演要旨]
ほんの5パーセント、5キロの減量で、多くの糖尿病や高血圧、高脂血症の合併症は治ってしまう。原因は分子生物学の進歩によって解明された。太れば一つだけ合併症を伴うことはまれで、多くの合併症を伴いやすい。肥満には皮下脂肪型と内臓脂肪型があるなど、やせるために食べなければならないものとして、食事前にキャベツ、レタスを時間をかけてかむことが有益など。
3 パネルディスカッション
話題提供の後、吉田氏のコーディネートにより、「ともに考える『食生活と健康』」をテーマにパネルディスカッションを行った。パネリストの市民団体「食と環境のひろば・Leaves」代表の渡辺さおり氏、京都府立大学人間環境学部食保健学科助教授の大谷貴美子氏、がんこフードサービス株式会社代表取締役会長の小嶋淳司氏、
京都市保健福祉局保健衛生推進室健康増進課課長補佐の田中陽子氏から、それぞれの活動や所見の発表の後、特別講演者の服部氏も参加し、意見交換を行い、更には会場の参加者との質疑応答も行った。
(統括調整役 菊池 弘美)
(各シンポジウムにおける詳細な内容は、当機構ホ−ムページ消費者コーナー「フォーラム等報告」に掲載されています。)
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