島根県では、古くから隠岐島前地域の牧畑や三瓶山麓などで和牛繁殖牛の放牧が盛んに行われてれてきたが、飼養戸数や頭数の減少が進むとともに放牧を実施する農家も減少し、放牧の実施は、条件のよい公共牧場や入会地か放牧場を有する特定の畜産農家に限定されるようになっていった。しかし近年、簡易な牧柵などの普及により、放牧が取り組み易くなったことから、放牧は単なる肉用牛の経営改善技術にとどまらず、農地保全や耕作放棄地の解消など様々な効果を有することが認識され、本県では飼料自給率の向上と和牛繁殖牛の増頭の切り札として、転作田や遊休農地などを活用した新たな「島根型放牧」を推進している。
島根型放牧シンポジウムの開催
平成16年度から、耕種農家と連携し、簡易で安価な施設で対応可能な水田放牧の推進を図るため、水田放牧推進事業を立ち上げ、その実証展示によって普及に努めてきている。
今般、地域資源の有効活用を図り、自給粗飼料に立脚した畜産経営を確立し、地域がスクラムを組んだ取り組みを推進するため、『活かそう!地域資源、進めよう!放牧、増やそう!しまね和牛』をテーマとして、県内における水田放牧の先進地である斐川町において、“島根型放牧シンポジウムinひかわ”を下記のとおり開催した。
1)現地視察(斐川町氷室地区内水田放牧実施ほ場)
2)放牧関連資材プレゼンテーション
3)体験発表
(1)松江市・宍道町水田放牧推進協議会(永江りえ氏)
遊休農地を活用した水田放牧の実証展示による他農家への波及
(2)大田市・井田畜産振興会(森 徳行氏)
和牛の飼育に熱心な地域における各種事業等を活用した水田放牧の拡大への取組
(3)邑南町・須磨谷放牧利用組合(太田忠男氏)
直接支払制度を活用した集落営農組織の放牧、飼料用イネ利用繁殖経営への取組
(4)斐川町・斐川町出西第6振興区集団転作委員会(島田 浩氏)
耕畜連携による平野部でのブロックローテーション水田放牧団地化への取組
4)記念講演
演題:『放牧畜産を基軸にした地域農業の経済性と環境影響評価』
講師: 中央農業総合研究センター畜産経営研究室長 千田雅之氏
5)情報提供
体験発表では、イノシシ被害が皆無になった、転作不適地でも容易に実施でき、土づくり、コスト削減が図れるなど効果を示され、今後地域において放牧を取り入れることの有効性が示された。
今後の取り組み方針
耕畜連携による放牧の拡大:需要や供給に関する情報を提供するとともに、それらを結びつけて耕種農家と畜産農家との連携を実現する人材の育成を図り、地域での耕畜連携システムを構築する取り組みを行い、遊休農地などへの放牧を推進する。
また、新たな繁殖牛経営組織の育成:集落営農組織などが地域で農地の有効活用を図る手段として、普及・試験研究機関はもとより、放牧アドバイザーによる濃密的な指導体制により、簡易な放牧技術を取り入れ、新たに繁殖牛経営開始を推進する。
斐川町のブロックローテーション水田放牧団地
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島根型放牧シンポジウムinひかわ
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