★ 農林水産省から


牛肉加工品等の原料原産地の具体的な情報提供事例

消費・安全局表示・規格課
課長補佐 田中 宏昭


 牛肉の表示については、生鮮食品品質表示基準(平成12年農林水産省告示第514号)において原産地の表示が義務付けられているが、牛肉を原材料に使用した加工食品の一部についても加工食品品質表示基準(平成12年農林水産省告示第513号)の一部改正に基づき、2年間の移行期間を経て本年10月2日から原料原産地表示が義務付けられることとなっている。

 また、最近、特に牛肉および牛肉を原材料とする加工食品や外食産業において提供される牛肉を使用した料理などの原料の原産地表示(以下「牛肉加工品などの原産地表示」という。)については、消費者から高い関心が寄せられている。例えば、農林水産省に設置されている「消費者の部屋」に数多くの意見が寄せられているほか、本年6月1日から14日まで全国10カ所において厚生労働省及び農林水産省が開催した「米国産牛肉輸入問題に関する意見交換会」においても、消費者が選択できるよう牛肉加工品などの原料の原産地表示の義務化を要望するなどの意見が出されている。

 こうしたなか、今般、米国産牛肉の輸入手続再開が決定され、今後一層牛肉加工品などの原産地表示に関する消費者の関心が高まることが見込まれている。

 このような消費者の関心の高まりに対応して、牛肉加工品などに関連する事業者が主体的な判断に基づき、商品などへの表示やホームページなどにより情報提供を積極的に行うことは、消費者の商品選択に資するとともに、消費者と事業者の間の良好な信頼関係の構築に資する取組として極めて重要と考えられるので、主体的な情報提供の一層の活性化をお願いしているところである。

 具体的には、7月27日付けで「牛肉を原材料とする加工食品等に係る原料原産地情報の積極的な提供について」により、流通小売業関係団体、食品製造業関係団体、中食産業関係団体など75団体および外食産業関係団体7団体について協力を依頼するとともに、都道府県知事に対しては「牛肉及び牛肉加工品等の原産地等の表示に関する緊急特別調査の実施及び監視・指導の徹底について」により、緊急の特別調査などを実施するとともに、牛肉の原産地表示等に対する監視・指導を更に徹底することとしている。

今回は、牛肉加工品などの原料原産地の具体的な情報提供内容について紹介する。


牛肉加工品等の原料原産地の具体的な情報提供事例

平成18年7月27日

(問1)現在、JAS法に基づいて原料原産地の表示義務の対象となっている牛肉加工品について教えてください。

(答)
1 牛肉の表示については、JAS法により、
@ 牛肉を含む全ての生鮮食品については、平成12年7月から原産地の表示が義務付けられており、
A 外国で製造された牛肉加工品等の加工食品を、製品輸入し販売する場合については、平成13年4月から原産国として製品の製造国を表示することが義務 付けられているとともに、
B 国内で製造される加工食品については、平成16年9月に「味付けカルビ」、「合びき肉」などの加工度が低く生鮮食品に近い20食品群(対象品目の詳細 は下記(参考)を参照)の食品のうち、重量の割合が50%以上を占める原材料の原産地表示について義務化の対象とされたところです。※

( ※ 対象とされた品目については、約2年間の移行期間を経て本年10月から義務化されますが、本制度の趣旨を踏まえて、できるだけ早期に原料原産地の表示を行うことが適切です。)

2 今回の通知は、牛肉加工品等に関連する事業者が、主体的な判断に基づき、原料原産地表示が義務化されていない牛肉加工品についても、商品、ポップ等への表示やホームページ等による情報提供を積極的に行う取組を促進していただきたいという趣旨のものです。

  米国産牛肉の輸入手続き再開が決定され、今後一層牛肉加工品等の原料の原産地に関する消費者の関心が高まることが見込まれる中、こうした取組は消費者の商品選択に資するとともに、消費者と事業者の間の良好な信頼関係の構築に資すると考えられます。

(参考)
○ 加工食品の原料原産地表示の義務対象品目(20食品群のうち、牛肉関連のもの)
1 調味した食肉(塩、こしょうした牛肉、タレ漬けした牛肉等)
2 ゆで、又は蒸した食肉及び食用鳥卵(ゆでた牛もつ等)
3 表面をあぶった肉(牛肉のたたき等)
4 フライ種として衣を付けた食肉(加熱調理したもの及び調理冷凍食品に該当
するものを除く)(衣を付けた牛カツ用の食肉等)
5 合挽肉、その他異種混合した食肉(肉塊又は挽肉を容器に詰め、成形したも
のを含む)(合挽肉、成形肉(サイコロステーキ)、牛・豚肉盛り合わせ等)
6 上記「異種混合」以外の生鮮食品を異種混合したもの(切断せず詰め合わせ
たものを除く)(牛肉と野菜の牛串、牛肉と野菜の盛り合わせ等)

 
(問2)食品の容器・包装に原産地を表示する場合の考え方について教えてください。

(答)
1 牛肉や牛由来の原材料を使用した加工食品のうち、原料原産地の義務表示の対象となっていない食品について、原料原産地を容器・包装に表示する場合、加工食品品質表示基準に従い、@一括表示欄での対応(第4条第3項及び第4項)又はA特色のある原材料表示での対応(第5条)により表示を行うこととなります。

2 具体的には、例えば、原材料が牛肉である場合、
@ 「一括表示欄」の原材料欄において、「牛肉」の後に( )を付して原産地を記載又は原料原産地欄を設けて、「牛肉」の原産地を記載(複数国の牛肉を使用する場合は、牛肉に占める重量の割合の多いものから順に記載)
A 「一括表示欄以外」に積極的に記載する場合は、「特色ある原材料」として商品パッケージに、使用している「牛肉」の原産地を記載(強調表示)するいずれかの方法があります。

3 なお、2Aの特色ある原材料表示による表示は、基本的に食品に使用する原材料が優良又は特別なものである等の理由により、産地等を強調して表示する場合を定めたものです。複数国の牛肉を使用している場合は、使用割合を表示(例えば、「△△国産牛肉80%使用」、「△△国産牛肉8割使用」等)する必要があり、複数国の牛肉を使用している食品に、「△△国産牛肉使用」というように一部の国の使用のみを割合表示をせずに表示することはできません(「△△国産牛肉使用」との表示は、100%△△国産を使用している場合のみです)。

4 また、複数の産地の牛肉を使用した際、その中の一つの産地が優良な原産地の銘柄牛が含まれている場合において、「○○牛80%使用」というように、当該銘柄とその使用割合を併せて表示することができることとされています。

5 以上、3及び4のように、品質表示基準のルールからすれば、複数の産地(国)の牛肉を使用した場合に一つの産地(国)のみを表示して「△△国産牛肉80%使用」、「○○牛50%使用」等の表示を行うことも可能ですが、今回の要請の趣旨からすると、消費者の誤認を防ぐ観点からは、加工食品品質表示基準第5条の規定に従い、一括表示欄外に特色ある原材料として表示する場合にあっても、使用したすべての国を表示していただくことが最も望ましいと考えます。
 

1 一括表示において、牛由来原料の原産地を表示する場合

(1)原材料名欄において、牛由来原材料の後に( )で原産地を記載

@ 原産地が1カ国の場合   A 原産地が複数の場合
名称:ハンバーグ
原材料名:牛肉(国産)、たまねぎ、・・・
内容量:200g
賞味期限:○年○月○日
保存方法:×××
製造者:△△△
 
名称:ハンバーグ
原材料名:牛肉(豪州、米国)、たまねぎ、・・・
内容量:200g
賞味期限:○年○月○日
保存方法:×××
製造者:△△△
    ※ 複数国の牛肉を使用する場合は、牛肉に占める重量の割合の多いものから順に記載してください。
名称:レトルト食品(カレー)
原材料名:野菜(玉葱、じゃがいも、人参)、
牛肉、小麦粉、カレー粉、砂糖、・・・
内容量:100g
賞味期限:○年○月○日
保存方法:×××
製造者:△△△
※ 加工品を原材料として使用する場合においても、加工した地名ではなく、原料となる牛の原産地を記載してください。
   

(2)原料原産地名欄を設けて牛由来原材料の原産地を記載

@ 原産地が1カ国の場合   A 原産地が複数の場合
名称:ハンバーグ
原材料名:牛肉、たまねぎ、・・・
内容量:200g
賞味期限:○年○月○日
保存方法:×××
製造者:△△△
 
名称:ハンバーグ
原材料名:牛肉、たまねぎ、・・・
内容量:200g
賞味期限:○年○月○日
保存方法:×××
製造者:△△△
A 原産地が複数の場合
原料原産地名:牛肉(豪州、米国)
    ※ 複数国の牛肉を使用する場合は、牛肉に占める重量の割合の多いものから順に記載してください。
名称:レトルト食品(カレー)
原材料名:野菜(玉葱、じゃがいも、人参)、
牛肉、小麦粉、カレー粉、砂糖・・・
内容量:100g
賞味期限:○年○月○日
保存方法:×××
製造者:△△△
※ 加工品を原材料として使用する場合においても、加工した地名ではなく、原料となる牛の原産地を記載してください。
   

 
(3)一括表示欄事項の追加として、「原料原産地名」シール等により牛由来原材料の原産地を記載
○ この場合、シールを貼付する場所は、一括表示欄外でもかまいませんが、
必ず一括表示欄に近接した場所とすることが必要です。

@ 原産地が1カ国の場合   A 原産地が複数の場合
名称:ハンバーグ
原材料名:牛肉、たまねぎ、・・・
内容量:200g
賞味期限:○年○月○日
保存方法:×××
製造者:△△△
 
名称:ハンバーグ
原材料名:牛肉、たまねぎ、・・・
内容量:200g
賞味期限:○年○月○日
保存方法:×××
製造者:△△△
原料原産地名:国産(牛肉)
                                                   
  <原料原産地名:牛肉(豪州、米国)>
※ 複数国の牛肉を使用する場合は、牛肉に占める重量の割合の多いものから順に記載してください。
名称:レトルト食品(カレー)
原材料名:野菜(玉葱、じゃがいも、人参)、
牛肉、小麦粉、カレー粉、砂糖、・・・
内容量:100g
賞味期限:○年○月○日
保存方法:×××
製造者:△△△
   
原料原産地名:国産(牛肉)
   
※ 加工品を原材料として使用する場合においても、加工した地名ではなく、原料となる牛の原産地を記載してください。    


2 特色ある原材料として表示する場合

@ 原産地が1カ国の場合   A 原産地が複数の場合
例:ハンバーグ(国産牛肉100%の場合)   例:ハンバーグ(豪州産60%、米国産40%の場合)
ハンバーグ
(牛肉は100%国産牛肉を使用しています)
 
このハンバーグに使用している牛肉は、豪州産60%、米国産40%です。
ハンバーグ
(牛肉は国産牛肉を使用しています)
  ※ 牛肉に占める重量の割合である旨を記載してください。
※ 牛肉・豚肉の合挽肉を使用した場合、表示する割合が牛肉を指すことがわかるよう記載してください。
※ 牛肉に占める国産牛肉の使用割合が100%のときのみ割合表示を省略できます。
※ 牛肉・豚肉の合挽肉を使用した場合、表示する割合が牛肉を指すことがわかるよう記載してください。
   
     

例:レトルト食品(カレー)
(原料として使用している牛肉(国産100%)
について記載する場合)
   
このカレーに使用している牛肉は、国産です。
※ 加工品を原材料として使用する場合においても、加
工した地名ではなく、原料となる牛の原産地を記載し
てください。
   

 
(問3)原料原産地情報の提供について、食品の容器・包装への表示以外の方法
を教えてください。

1 自主的に提供する情報の内容や提供方法については、製造業者等の製造している加工食品の内容・構成、原料の仕入れ方法や、日頃の消費者からの問い合わせの内容等も踏まえて、消費者の立場に立った検討を行い、実情に応じ、できるだけ情報提供を行うよう対応してください。

2 具体的な例として、インターネットを通じて、牛肉や牛由来の原材料(以下「牛肉等」という。)の原産地情報を提供する場合においては、
@ その製造業者等が原料として使用する牛肉等について、一定の産地(具体的な国名等の明示)のものを使用している場合に掲載
A 自社牧場、契約牧場について紹介する形で、牛肉等の原産地情報を掲載
B こだわりの商品等、特定の商品について、製造方法等の情報と併せて、使用している牛肉等の原産地情報を掲載
C Q&A方式により、製品管理や原料調達の考え方等と併せて、牛肉等の原産
 地情報を掲載
等の方法が考えられます。さらに、必ずしも製品毎にどの産地の牛肉が使用されているかの情報提供ができない場合においても、当該製造業者において使用している牛肉の原産地が季節により切り替わること、又は複数の産地を組み合わせて使用していることを事実に即して複数の産地(国)名を挙げて情報提供することも可能です。

3 また、生産情報公表JAS、地産地消又は地域ブランド等生産サイドと製造サイドの連携、2次元バーコードによる製品情報の提供といった、単に産地情報に限らない、食品について様々な付加情報を公表する仕組みを活用した、牛肉の原産地情報を提供することも考えられます。

4 さらに、インターネット、2次元バーコード等の情報提供は、消費者が情報ツールを持っていなかったり、最新の電子情報機器の取扱いに慣れていないと情報を得ることができない場合がありますが、店頭でのポップ表示等を活用すれば、誰にでも情報が伝えられます。

 例えば、「弊社の製品に使用している牛肉及び牛由来原料は、○○国の原料を使用しています」といった表示に加え、
@ 複数の加工食品を組み合わせて多数の商品アイテムを提供するような場合
A 使用する原料原産地が日によって変わるような商品で、個別商品毎に原料原

 産地を表示することが難しい場合
等において店頭でのポップ表示を活用することにより、原産地情報を提供することが有効な場合があると考えています。

5 また、消費者からの問い合わせに対して迅速・的確に対応できるよう、日頃から提供できる情報の整理を行うことや、製造等の担当部局との連絡体制、お客様相談窓口等を整備することも考えられます。
 
企業のインターネットによる情報提供

例1
 
例2
〜株式会社○○からのお知らせ〜   弊社で使用している牛由来原材料についてのQ&A
牛由来原材料の弊社における使用状

況牛肉はすべて豪州産牛を使用しています。
  Q1 使用している牛肉の原産地はどこですか?
A1 弊社製品に使用しております牛肉は、すべてオーストラリア産とニュージーランド産です。



(問4)任意により原料原産地情報を提供する場合に留意すべき点を教えてください。

(答)
1 原料原産地に関する情報を食品に任意で表示した場合であっても、事実に基づかない表示であればJAS法に基づき表示違反として指示・公表等の措置の対象となります。

2 また、不当景品類及び不当表示防止法により、商品の内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される情報提供を行うことは禁止されています。

3 これらのことから、任意の表示等を行ったものであっても、JAS法やその他の法令についてもその対象となることから、事実に基づくわかりやすい情報提供に努めてください。

(問5)業務用の牛肉加工品等については、どのようにして原料原産地情報の提供を行うべきか教えてください。

(答)
1 牛肉加工品等の製造業者(惣菜等を製造する小売業者を含む。)や外食事業者が牛肉加工品等の原料原産地に関する情報提供を行うためには、これらの事業者が原料として使用する牛肉加工品等の流通において原料原産地に関する情報が伝えられる必要があります。

2 このため、業務用のものとして業者間取引されるものについても、食品の容器・包装の見やすい箇所、送り状、納品書、仕様書等に原料原産地に関する情報を記載するなどの方法により、情報提供に努めてください。




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