◎地域便り


鹿児島県 ●(有)内ファームの酪農にかける夢

鹿児島県/生駒 エレナ


 (有)内ファームの代表取締役内俊隆さんの酪農経営は、父清隆さんが戦後に台風災害で農作物を全滅させるという経験をし、乳牛を1頭導入したのをきっかけに始まった。その後、俊隆さんの時代に、堅実な2世代家族経営により規模拡大を行い、さらに環境対策として土着菌を活用するなど地域に根ざした酪農経営を確立してきた。さらに、俊隆さんは「開かれた牧場」を目指し、消費者との交流活動を熱心に行っており、平成13年に酪農教育ファームの認証を受けた。また、平成17年には、アイスクリーム製造販売や酪農体験研修を通じ、生産者と消費者との交流を深め、酪農への理解と食の大切さ、乳製品の素晴らしさを伝えることを夢見て(有)内ファームを設立した。

 現在、俊隆さんは、(有)内ファームは100頭以上の牛たちの世話をする傍ら、見学や研修で訪れる子供たちに、酪農の仕事や牛の特徴などを熱心に教え、牛乳・乳製品の素晴らしさを伝えている。また、年に1回は一般消費者を対象に、酪農体験とバーベキューを囲む交流イベントを開催し、年間600名以上受け入れの実績を持っている。

 牧場での研修生などの受入は、父清隆さんの代から実施しており、俊隆さんが子供の頃から研修生の寝泊まりするにぎやかな牧場であった。父親が研修生などに酪農の未来像や夢を語り、夢を少しずつ現実にする姿が、現在の俊隆さんの夢とチャレンジ精神を育てたのである。

 アイスクリームの製造販売は福岡県で勤めていた三女、四女や、既に嫁いでいた長女、次女の4姉妹が法人に参画し、分担している。店舗は「ジェラート工房パーチェ」で、平成18年4月にオープンをしたばかりだが、5月は3,000人程の来客があり、体験学習の申し込みも増加している。生産者と消費者の距離を縮め、酪農への理解を深めるためにも、「ジェラート工房パーチェ」の役割は大きい。また地元の農産物(いちご、さつまいも、茶など)を原料に利用していることもあり、多くの生産者から「うちの○○はアイスクリーム原料に使えないか」との問い合わせなどもあり、農業者同士の絆も生まれつつある。パーチェ(pace)とはイタリア語で平和を意味し、3世代かけた夢は着実に実となり、さらに新たな芽をつけはじめている。

 俊隆さんと妻のサダ子さんは、後継者となる息子がいないことで昔は悩むこともあったそうだが、今では長女の婿が調理師であることもあり、農家直営レストランができるのではと夢をふくらませ、ひょっとしたら後継者は娘の婿を合わせて8人になるのかもしれないと、うれしそうに話す。

 本格的な夏を迎え忙しくなり、うれしい悲鳴をあげる4姉妹だが、彼女たちの夢と俊隆さんの夢が実現する日は近いのではなかろうか。


花を一杯植えている内ファーム入り口

ジェラート工房パーチェ前 清隆さんを囲み内ファミリ ーの4世代大集合(最後尾左から2人目が俊隆さん)
 

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