◎地域便り


青森県 ● 豚肉生産に誇りをもつ−食と農を考える長谷川自然牧場−

青森県/長谷川 洋子


 国道101号線を秋田から青森に向かう途中、立ち並ぶイカ焼き店が見える。ここ、青森県西津軽郡鰺ヶ沢町、美しい海岸と世界遺産である白神山地を抱える自然豊かな素晴らしい町の片隅に、小さな牧場「長谷川自然牧場」はある。

 鰺ヶ沢町は、農業、漁業が主体の町であるが、牧場と名の付くところは私たちの牧場を入れて3軒である。

 自然牧場のメインは、350頭の豚と1,000羽の採卵鶏やシャモロック(青森県畜産試験場が開発した地鶏)、ほかにヤギ、羊、ポニーなど十数種類の動物を飼っており、近所の保育園や小学校からは、子供たちが遠足に訪れる。週末には、「羊の毛刈り」、「手作りウインナー作り」など様々な体験農業に多くの参加者が来場する。

 私は、「楽しい農業」と「食の大切さ」を伝えるとともに動物たちとふれあうことが出来る牧場を目指している。

 当牧場の豚の飼料は、添加物なしの自家配合飼料で、オカラ、生糠(こぬか)、籾(もみ)、食品残さ(青森市や弘前市内の豆腐、パン、弁当工場、学校や自衛隊などの給食残飯を1日4トン程度回収)に、海水などを加えて加熱し、白神山地からとった土着菌を混ぜ、発酵飼料とし、ミネラル豊富、微生物たっぷりの昔ながらの畜産、エコ農業を実践している。

 また、自ら作った籾殻(もみがら)の薫炭(くんたん)は、消臭作用があるため、エサや敷き料に利用し、同時にできるもみ酢は、豚舎消毒や飲水にも使っていることから、環境に優しく、健康な豚が育っている。

 東京のデパートの精肉売り場で、「長谷川の自然熟成豚(青森県鰺ヶ沢町)」と表示された豚肉が売られている。一般的には、産地が先に書かれていることが多い豚肉だが、うれしいことに固有名が先に書かれていた。他愛のないことだが、私たち生産者にとってはとても誇りになることである。

 自然牧場ののどかさの奥には、手間ひまの辛さも、大変さも隠されているが、その見返りとしてあるのが「自然熟成豚」であり、私たちの誇りでもある。

牧場では、体験農業として様々なメニューを用意している。写真は「ウインナー作り体験」(中央が筆者)

通常より長く飼育し、放牧と同等の扱いとして育てた豚肉の味は昔の味を思い起こす



元のページに戻る