神奈川県の肉用牛生産は飼養戸数、飼養頭数ともに全国的には低い位置にあるが、東京や横浜、川崎といった大消費地を身近に持ち、消費者と直接向かい合えるという有利性と、高い技術力を生かした低コストで生産性の高い経営を行い、他県に負けることのない高品質牛肉の生産を行っている。一方で、都市化の伸展や混住化の進行など農業生産環境が日ごとに厳しさを増す中、他の農業と同様、肥育牛生産農家においても高齢化や後継者不足などの影響で10年前の40%程度まで戸数が減少しており、これを補うためにも若い力の結集が必要であった。
平成16年4月、県畜産会の肝いりで、肉用牛後継者11名(現在12名)が集まり、肉用牛後継者グループ「牛匠会」を発足させた。会員の平均年齢は29歳、その多くが県内でも有数な肥育生産農家の後継者であり、将来的には本県の肉用牛生産を背負って立つ人達ばかりである。飼養規模は全体で1,700頭、1戸当たりでは、10頭から600頭までと千差万別であるが肉用牛生産に対する思い入れは強く、いろいろな機会を通じて肥育生産技術のレベルアップに努力をしている。
会員の中には神奈川県ブランド「三浦葉山牛」や「横濱ビーフ」の生産農家もおり、親の培った技術を更に伸ばしていくため真剣に技術の習得に取り組んでいる。
横浜市内で黒毛和種雌牛20頭、交雑雌牛30頭を肥育する会長の相沢氏は会員からの信頼も厚く、県内各所に分散する会員を強力に束ね、横のつながりを密にしている。
「牛匠会」では組織発足以来、枝肉共励会を中心に、給与飼料や血統の勉強会、先進地への視察など積極的な活動を行い、また普及指導員による個別指導なども受けながら、着実に肥育技術の向上が図られている。
相沢氏に今後の活動を尋ねると「高品質牛肉生産のための技術習得はもちろん、親との経営方針の違いでとかく自信喪失になりやすい後継者をグループ全体で助け合い、会員が自信と希望を持って仕事が出来る環境作りを進めていきたい」と強い意志で述べていた。
今年6月には会員全員で南北海道家畜市場に出向き、39頭の肥育素牛(黒毛和種)を購買してきた。日頃の勉強の成果が試される時、真剣な表情で出品牛を見る姿に経営者としての風格が感じられた。
相沢会長の牛舎、非常に清潔で人に近づいても牛は、牛は平然と反すうしている。牛舎は、元酪農で利用したもの。 |
枝肉共励会での勉強会、自分たちの出品した枝肉の前で会員相互で検討。お互いが血統や飼料内容について意見を述べ合っている。 |
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