◎地域便り


北海道 ●地域資源を有効活用した「最北のホエイ豚」

北海道/山上 朝香


 日本の最北稚内市で5戸の酪農家が共同経営している手作りチーズとジェラートの店「工房レティエ」(代表 久世 薫嗣くせ  しげつぐ氏)で限定販売されている『ホエイ豚』を紹介したい。

 チーズの製造においては、牛乳の10%がチーズ(固形分)になり、残りの90%がホエイ(乳清・水分)として大量に排出される。この白く濁ったホエイには豊富な栄養成分があり、フランスやスイス、イタリアなどの伝統的なチーズ産地では、古くから豚の飼料として活用されており、その肉は高級食材として重用されてきた。

 この「工房レティエ」では5年ほど前から、地域資源を有効に活用しつつ、消費者へ安心・安全と農村の魅力を提供しようと、自家産ホエイを利用したホエイ豚の生産・販売を行っている。

 「工房レティエ」が飼養する豚たちは、水の替わりにホエイ、飼料として国内産の小麦とふすまが与えられ、敷地内の放牧地を元気に駆け回っている。おいしさが凝縮された赤肉と、口の中ですっと溶けるアクのない上質な脂の旨みは、北海道宗谷の魅力そのままで「やみつきになる」という固定ファンも多いそうだ。ホエイ豚の販売は、1口1万円で肥育素豚のオーナーを募り、9月または12月の年2回そのオーナーに4キログラムの「ホエイ豚」(ロースブロック、肩ローススライス、モモブロック、うで・ばらスライス、ミンチ)が届けられるというシステムになっている。注文はゴールデンウィークころから受付が開始され、肥育予定頭数に達したら終了となる。

 ホエイ豚に給与するホエイの原料となる牛乳は、宗谷地方の起伏に富んだ丘陵地帯で放牧された牛から生産される新鮮な自家産乳である。

 最近の研究では、放牧された乳牛から生産される牛乳は、抗ガン、抗肥満、血中コレステロール低下、免疫機能強化などの生理機能を持つ共役リノール酸(CLA)という成分が、非放牧乳より高いことがわかっており、付加価値の高まりも期待されている。

 ちなみに、「工房レティエ」では、ホエイから作った天然酵母と道内産のライ麦と全粒粉、水の代わりにホエイを使ったパンの製造・販売、自家農場の牛乳とクリーム、道内産有精卵とビート糖のみを使った無添加ジェラートアイスの製造・販売、チーズとアイスの手づくり体験も行っている。工房レティエのホームページ→http://www.e-souya.org/~kuse/


放牧地を走り回るホエイ豚

「工房レティエ」代表の
久世 薫嗣(くせ しげつぐ)さん

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