主要畜産物の需給動向

◆牛 肉◆

●●●肉用牛肥育経営安定対策事業、交雑種と乳用種で発動される●●●

 牛肉需要の端境期となる平成19年10月の牛枝肉卸売価格(東京市場)は、気温が下がらず鍋物需要への移行が遅れたとの見方もあり、全般的に弱含みでの展開となった。この結果、省令価格は10カ月連続で前年同月を下回るキログラム当たり1,129円(前年同月比9.5%安)となり、年度平均(4−9月)では前年同期を7.6%下回っている。配合飼料価格の高騰など肥育農家の経営を圧迫する要因も重なり、当機構が公表した肉用牛肥育経営安定対策事業に係る四半期推定所得などの算定結果によると、第2四半期は交雑種で1頭当たり6,900円、乳用種で同22,700円の補てん金が交付されることとなった。乳用種は2期連続、交雑種は4年半ぶりの発動となる。

 交雑種での発動については、第2四半期に出荷された交雑種肥育牛が導入された期間(18カ月前、18年第1四半期)において、平成14年度から上昇傾向が続いていた子牛取引価格(雌雄平均)がちょうどピークに達し、27万円前後で推移していたことが要因の一つとして挙げられる(図1)。


図1 交雑種枝肉卸売価格(東京市場)と子牛取引価格の推移


資料:農林水産省「食肉流通統計」
機構調べ

 今年度の交雑種子牛取引価格については、平成18年4月以降交雑種枝肉卸売価格が前年同月を下回って推移していることや、飼料価格の値上がりなどによる肥育経営のコスト増加などを反映し、前年同月をかなりの程度下回る水準で推移している。

●●●平成19年度上半期の牛肉輸出量は、大幅増加で約100トンに●●●

 財務省貿易統計によると、平成19年9月の牛肉輸出量は26.8トン(前年同月比305.8%増)となり、平成12年3月以降、最も多い量が輸出された。この結果、平成19年度上半期の輸出量は、生鮮冷蔵が73.8トン(前年同期比333.5%増)、冷凍が25.6トン(同70.5%増)で、合わせて99.4トン(同210.2%増)となった。上半期の輸出量を輸出先別に見ると、第1位の米国が44.0トン(同159.7%増)、今年度から輸出が再開された香港が29.1トン(同実績なし)、ベトナムが22.5トン(同239.7%増)となっている。生鮮・冷蔵牛肉の輸出量はほとんどが米国と香港向けとなっており、そのシェアはそれぞれ59.7%、39.2%であった。一方、冷凍牛肉は東南アジア向けの輸出が大部分を占め、ベトナム向けが87.0%、マレーシア向けが6.5%を占めた(図2)。



図2 19年度上半期仕向先別牛肉輸出量


資料:財務省「貿易統計」

◆豚 肉◆

●●●9月の豚肉輸入量、その他の国では北欧からが増加●●●

 財務省貿易統計によると、平成19年9月の豚肉輸入量は54,329トンと前月を1万6千トン下回ったものの前年同月を10.1%上回った。前年9月は、北米における現地価格の高騰、EUでは域内流通の増加やロシア向け輸出の増加などから主要国からの輸入量が軒並み減少し、輸入量は5万トンを下回る4万9千トンとなっていた。

 近年の年度別、輸入量の国別シェアをみると、平成16年度まで、米国と並んで約6割のシェアを二分していたデンマークからの輸入量が大きく減少しており、経済連携協定(EPA)を結んだチリ、メキシコからの輸入量がそれに代わって伸びている。(図3)

図3 豚肉輸入量の国別シェアの推移


資料:財務省「貿易統計」
 

 また、その他の国も徐々にシェアを伸ばしていることから、直近3カ月の国別内訳をみると、7、8月にはスペイン、ハンガリー、オーストリアから1〜2千トン程度輸入されるとともに9月にはそれまで輸入量が少なかったアイルランド、スウェーデンなどが増加している。

 これは、EU域内の流通の変化やロシアの需要拡大の影響を受けて、業務用や加工仕向け原料の入手先の多様化が模索されているものとみられる。なお、これらのほとんどが、冷凍の部分肉の形態で輸入されている。


図4 その他の国からの豚肉輸入量


◆鶏 肉◆

●●●国産品の推定出回り量は24カ月連続で前年同月を上回る●●●

 鶏肉の需要の増加を受けて、国産鶏肉の生産量が増加傾向にある中、9月の国産品の推定出回り量は109,541トン(前年同月比0.9%増)となった。これにより国産品の出回り量は17年9月以降24カ月連続で前年同月を上回った。

 鶏肉一羽当たりの卸売価格(もも500g+むね肉500g)が9月816円、10月885円と国産志向を追い風にかなり高水準に推移している。

 一方、9月の輸入量は28,638トン(前年同月比56.1%増)と前年同月に比べ大幅に増加している。しかし、これは昨年9月ブラジルからの輸入が欧州の鳥インフルエンザによる需要減退などで生産調整が行われた時期と重なり輸入量が大きく落ち込んだことによるものである。このためここ数年3万トンベースの輸入量に比べ低水準にある。

 このような中、推定期末在庫量は徐々に取り崩されており1カ月の出回り量(約14万トン)を下回ってから1年が経過し、在庫にひっ迫感があることから年末の最需要期にかけての需給動向が注目される。



◆牛乳・乳製品◆

●●●成分調整牛乳の生産量は好調に推移●●●

 牛乳乳製品統計によると、平成19年9月の生乳生産量は、北海道が311,629トン(前年同月比0.7%増)、都府県が326,186トン(同4.1%減)となり、全国では637,815トン(同1.8%減)となった。前年同月と比べ都府県の生乳生産量は、実数で約13,800トン減少しているが、そのうち関東地域の減少分が3割に当たる4,200トンを占めている。計画生産による搾乳牛頭数の減少に加え、9月の都府県の一頭一日当たりの平均泌乳量(社団法人家畜改良事業団公表)が27.0キログラム(同99.3%)とわずかに減少していることも影響しているものとみられる。

 一方、飲用牛乳等の生産量を見ると、357,875キロリットル(同2.4%減)と前年同月を下回っているものの、加工乳・成分調整牛乳の生産量は39,031キロリットル(同0.7%増)と5カ月ぶりに前年同月を上回った。そのうち特に成分調整牛乳は、19,253キロリットル(同10.5%増)とかなりの程度増加し、年度累計(4−9月)でも前年同期を7.3%上回るなど好調に推移している(図5)。


図5 牛乳等生産量の対前年同月比の推移


資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」
 

 牛乳等の消費動向について、POSレジ通過客数千人当たりの購買数量を見ると、19年度は前年度に引き続き前年同月を下回る水準で推移していた。しかし、9月は加工乳のうち低脂肪タイプが前年同月を13.9%上回るとともに、成分調整の低脂肪乳牛乳でも同9.0%上回っており、低脂肪牛乳が消費者に受け入れられていることがうかがえる(巻末資料参照)。



◆鶏 卵◆

●●●鶏卵の小売価格マージンは拡大傾向●●●

 鶏卵は、栄養価が高く、廃棄する部分もほとんどないことから価格のみならず食品の優等生として知られている。しかし、近年は食の多様化、個食化などから消費量は伸び悩んでいる。

 この鶏卵の価格形成構造として平成19年9月の価格スプレッドをみてみると、1キログラム当たり生産者価格(農業物価指数:農家販売価格)161円、卸売価格(東京、M)166円、小売価格309円(L玉1パックを換算)となった。小売価格に占める割合は、52%が生産者価格、1%が中間卸売業者のマージン、残りの46%が小売業者の利益となる構造である。これについて、5年ごとの価格構造を追ってみると5年前の平成14年9月は、生産者価格が181円、卸売価格197円、小売価格301円でそれぞれ60%、5%、34%であった。さらに、10年前の平成9年9月では、生産者価格が203円、卸売価格217円、小売価格326円でそれぞれ62%、4%、38%であった。

 この5年の間で、生産者の価格スプレッドは低下傾向にあり、一方で中間卸売業者のマージンが縮小、小売業者のマージンが拡大している。

 飼料価格高騰下で、特に採卵養鶏業者の生産コストは増加しており、今後の鶏卵の生産および価格動向が注目される。


図6 鶏卵の価格スプレッド(1キログラム当たり)


資料:農林水産省「農業物価指数」、
全農「畜産販売部情報」、
総務省「小売物価統計調査」


◆飼 料◆   

●●●飼料用トウモロコシの輸入量が大幅に減少●●●

 財務省貿易統計によると、平成19年度上半期の飼料用トウモロコシ輸入量は前年同期と比べかなり大きく減少し、5,212,601トン(前年同期比12.6%減)となった。これは、主要輸入相手国である米国からの輸入量がエタノール需要の増加による輸入価格の高騰から大幅に減少していることが要因とみられる。上半期の同国からの輸入量は、前年同期比17.4%減となる4,848千トンとなっており、アルゼンチン、中国からの輸入量が大幅に増加しているものの、それぞれ143千トン(同132.4%増)、221千トン(同588.5%増)と輸入総量に占める比率は両国合わせて約7%にすぎず、米国の減少分を相殺するには至っていない。

 上半期の国別の輸入価格(CIF)を見ると、米国がトン当たり27,291円(同61.9%高)、アルゼンチンが同29,036円(同65.0%高)、中国が同27,464円(44.6%高)といずれも大幅に値上がりした。

 一方、米国の日本向けトウモロコシ輸出量を見ると、4−8月で5,632千トン(同104.2%増)となっており、全体に占めるシェアも32%と、米国全体の飼料用などの輸出量が減少する中で日本向けが増加している(図7)。これは、工業用に仕向けられるトウモロコシの輸入量が増加していることが要因の一つとして考えられる。日本においてトウモロコシを主な原料とするバイオマス製品の生産量は増加傾向にあり、輸入される飼料用トウモロコシのうち主に工業用に仕向けられていると思われる統計品目番号1005.90-099(「関税定率法第13条の第1項の規定の適用を受けないもの」のうち「その他のもの」:50%又は12円/kgのいずれか高い方の税率を適用)の米国からの輸入量は、19年度上半期で前年同期の3.4倍に相当する1,016千トンとなっている。

 

図7 米国の仕向け先別飼料用トウモロコシの輸出量


資料:USDA「Feed Outlook」


◆その他◆   

●●●18年の食肉消費構成割合−豚・鶏肉で家計消費が増加●●●

 農林水産省生産局畜産部食肉鶏卵課は、平成18年次の食肉の消費構成割合を公表した。

 それぞれの食肉ごとにみると、牛肉は、家計消費割合が35%と前年から1ポイント下回り、その他(外食等)が55%と前年を1ポイント上回り一昨年と同じ構成割合になった。前年と同割合となった加工仕向の詳細内訳を見ると、ハンバーグ・ハンバーガー、缶詰、冷凍食品などが前年を下回ったもののハム、ソーセージ、レトルト食品などが前年を上回った。

 豚肉は、家計消費が43%と前年を2ポイント上回り、加工仕向が27%と2ポイント下回った。加工仕向の内訳は、各項目とも全般的に減少した。

 鶏肉は、家計消費と加工仕向がそれぞれ35%、9%となり各1ポイント上回った。その他は56ポイントと2ポイント下回った。(図8)

 食料需給表から国民1人当たりの食肉供給量の推移をみると、平成13年のわが国のBSE発生後、牛肉の供給量は停滞している。牛肉生産量が増加しないことや輸入量の縮小などの影響から牛肉卸売価格が高水準にあることが家計消費に影響していると思われる。

 一方、鶏肉は高まる国産志向とともに、他の食肉と比較して価格が安いことなどから需要は増加を続けている。(図9)


図8 食肉の消費構成割合の推移


資料:農林水産省生産局「食肉の消費構成割合」


図9 畜産物の1人1年当たりの供給量


資料:農林水産省「食料需給表」、「食料・農業・農村基本計画」


●●●鶏肉(むね肉)小売価格は、国際的にも比較的割安●●●

 農林水産省は「東京及び海外主要6都市における食料品の小売価格調査結果」により、平成18年11月の時点での東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ジュネーブ、シンガポールおよびソウルの各都市の一般小売店舗で販売されている肉類、野菜、果物など食品34品目の価格について調査結果を公表した。

 この結果、東京を100とする内外価格差は、ニューヨーク、パリ、ジュネーブ、ソウルにおいて東京の価格より割高であった。



表1 東京および海外主要6都市の畜産物等の小売価格(平成18年11月)



 また、食品34品目について昨年の調査結果と比較すると東京を100とする内外価格差は全ての都市で前年より高くなった。その要因としては(1)2006年東京では、好天に恵まれ生鮮野菜の価格が安かったこと、(2)ロンドン、パリ、ジュネーブ並びにシンガポールでは為替レートが円安であったことが挙げられている。(図10)



図10 食料品の内外価格差


資料:農林水産省「東京及び海外主要6都市における食料品の小売価格調査結果」
注1:東京における小売価格を100とする。
注2:ソウルは2006年から調査対象


 畜産物について品目別に見ると牛肉はジュネーブやソウルが東京より割高であり、豚肉はジュネーブ以外の都市より東京が割高であった。一方、鶏肉は調査対象がむね肉であることから、むね肉需要が高いニューヨーク、ロンドン、パリ、ジュネーブの欧米4都市より割安であった。このことから、むね肉の小売価格は鶏卵とともに国際的に見て小売価格が割安な食品であると言える。

 

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