★ 農林水産省から


「牛乳乳製品統計調査」 の改正について

大臣官房統計部 生産流通消費統計課 消費統計室
食品産業動向班 柴崎 克彦


 牛乳乳製品統計調査は、昭和25年以降、農林水産省が、わが国の生乳、牛乳および乳製品の生産、出荷などに関する実態を明らかにし、畜産行政の基礎資料を整備することを目的として実施している調査であり、毎月、生乳の処理量、牛乳乳製品の生産量などについて調査する月別調査と、年1回、工場の従業者数や生産能力などについて調査する基礎調査から成っています。

 近年、乳製品の過剰在庫や調査対象である乳業工場におけるIT化の進展など、本調査をめぐる情勢には変化が生じてきています。

 こうした情勢の変化を踏まえ、(1)生乳、牛乳および乳製品の生産などに関する実態をより的確に把握すること、(2)報告者である調査対象の職員の方々の負担軽減、(3)調査の効率的実施の観点から調査項目の一部および調査方法などを改正し、平成19年1月以降、実施することになりました。

 今回は、その改正の概要について紹介します。

 今回の改正のポイントは、(1)月別調査票を3枚から1枚にするなどの簡素化を図る一方で、必要な調査事項については新たに追加したこと、(2)調査の範囲および調査方法を見直し、報告者負担の軽減並びに調査の効率化を図ったことです。

改正の主な内容は以下のとおりです。

<調査項目の変更>

(月別調査票および基礎調査票の各番号の箇所を参照してください。)


[追加した項目]
(1) 乳製品在庫量

  最近の乳製品の過剰在庫などを踏まえ、乳製品の需給実態を的確に把握するため、乳製品在庫量(全粉乳、脱脂粉乳およびバターの在庫量)の項目を追加しました。

(2) 「チーズ向け」、「クリーム等向け」  生乳処理量
 今後、供給拡大が見込まれるチーズ、クリームなどの生産の実態をより的確に把握するため、生乳の乳製品向け処理量の内数として、「チーズ向け」および「クリーム等向け」の項目を追加しました。

(3) 「学校給食用」牛乳生産量
 牛乳の需給動向をより的確に把握するため、牛乳生産量の内数として、従来の「業務用」(食品の製造・加工用)に加え、「学校給食用」(幼稚園の給食用は除きます。)の項目を追加しました。

(4) 従業者数
 工場における生産性を捉えるため、「常用従業者数」(実際に工場で生産活動に携わっている従業者の数)の項目を追加しました。

[変更した項目]
(5) 生産能力、貯乳能力

 従来は工場における製造設備の台数を把握していましたが、製品供給の基盤となる情報をより的確に把握するため、生産能力(1時間当たり又はバット当たりの生産能力)、貯乳能力(貯乳タンクの容量)の項目に変更しました。

[簡素化した項目]
(6) 生産者からの受乳量、工場間の送受乳量

 生産者からの受乳量について、従来は生産者、市町村別に把握していましたが、報告者である工場の職員の方々の負担軽減を考慮し、都道府県別の把握に簡素化しました。
また、工場間の送受乳量についても、市町村別の把握を、都道府県別の把握に簡素化しました。

(7) 飲用牛乳等の容器容量別生産量
 飲用牛乳などの容器容量別生産量については、従来は月別調査で年4回(1、4、7、10月)把握していましたが、月単位での変動が小さいことから、報告者の負担軽減を考慮し、基礎調査で年1回(10月)の把握に簡素化しました。

 

<調査方法の変更>

○月別調査
 従来は、統計調査員による面接調査により実施していましたが、調査票の簡素化に伴い、調査の効率的実施の観点から、往復郵送調査(農林水産省(地方統計組織)から調査対象へ調査票を郵送し、記入していただいた調査票を返送してもらう方法)に変更し、実施することとしました。

○基礎調査
 従来は農林水産省(地方統計組織)の職員又は調査員による面接調査により実施していましたが、調査の効率的実施の観点から、職員による調査を廃止し、(1)月別調査の対象にもなっている調査対象については、往復郵送調査で、(2)年1回基礎調査のみの調査対象については、調査員による面接調査で実施することに変更しました。


<調査対象の変更>

○ 月別調査対象の下限基準の変更
 調査の効率的実施の観点から、月別調査の調査対象を、都道府県別生乳受乳量の95%を超えるまでの工場から80%を超えるまでの工場に変更し、調査対象を削減しました。

○ 本社調査の新設
 乳製品在庫量を調査項目に追加したことに伴い、主に大手メーカーが本社直轄の倉庫に保管している乳製品の在庫量を把握する必要があることから、該当メーカー(15社)の本社を調査対象に追加しました。

○ ミルクコントロールセンターにおける調査の中止
 生乳の送受乳量の把握について、従来は、ミルクコントロールセンター(生乳生産者から乳業メーカーへの生乳の移動を調整・管理している全農・全酪などの生産者団体などの機関)を経由した場合、工場において生乳の産地別受乳量を把握することが困難であったため、このミルクコントロールセンターも調査対象とすることで、帳簿・伝票上の移動を把握していました。
しかし、近年、IT化の進展などにより、工場でも生乳の産地別受乳量を正確に把握することが可能となったため、これまでの生乳の送受乳量の把握方法を変更し、帳簿・伝票上の移動が混在することなく、実際の物流が把握できるようにしました。(図参照)
これに伴い、ミルクコントロールセンターを調査対象から除外しました。

 

図 生乳の送受乳量の把握について

 今回の改正については、平成18年6月9日に開催された第638回統計審議会に「牛乳乳製品統計調査の改正について」として諮問し、8月4日の第640回統計審議会で答申が出されて、改正内容が決定しました。

 審議会では、委員の方々の間で「国民の公共財としての統計の必要性」、「他の分野(品目)の生産統計との整合性」といった観点から多数の意見が出され、乳製品在庫量や従業者数の必要性などについて議論が白熱する場面もありましたが、そのような中、『牛乳に相談だ!』キャンペーンのロゴ入り紙コップで牛乳が供されるといった計らいなどによって、牛乳乳製品への理解と和やかな雰囲気を取り戻すことができたのではないかと思っております。

 牛乳乳製品の需給動向や乳業工場の再編・合理化、さらには「市場化テスト」(公共サービスについて、官民問わず、価格・質の両面で最も優れた者が担う制度)の導入など、牛乳乳製品統計調査をめぐる情勢には今後も大きな変化が見込まれます。

 今回の答申では、特に今後の課題とされた事項はありませんでしたが、常に情勢の変化への注意を怠らず、さらなる統計ニーズの把握に努めていく所存です。

 また、調査対象である乳業工場の皆様、あるいは、統計データのユーザーである関係団体などの皆様には、今後とも本調査へのご理解とご協力を頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

 

 


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