徳島県/福井 弘之
現在、遊休農地に繁殖牛を放牧する事例が全国的に増えているが、約25年前に自らの判断で、それも急傾斜地の棚田に牛を放牧し、見事なシバ草地を完成させた藤原久義さん(64歳)。徳島県西部の吉野川上流に位置する三好市で、阿讃山脈の中腹東斜面という極めて条件の不利な地において、昭和55年に和牛の肥育経営を開始した。しかし、このような土地条件では牛舎の増設が難しいことから、昭和57年に繁殖経営へ転換した。その翌年、父親の二朗(じろう)さんから、畦草(エサ)を担いで急な坂道を歩くのが辛いので、牛を棚田に放したいという切実な提案があり、思いきって放牧を開始した。当初は牧草不足や脱柵に苦労し、増頭は考えていなかった。平成9年にシバ放牧を研究している高知県の上田孝道さんに出会って、シバ草地の良さを知り、シバ草地造成方法の指導を受けた。その後、地道に畦半のシバを放牧地に移植する作業を3年繰り返した。5年後にはシバ草地が完成し、草量が増したので増頭した。
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