生産局畜産部 畜産振興課
課長補佐 作田 竜一
1 はじめに水田における飼料作物の生産や放牧などいわゆる耕畜連携の取組は、従来から米の生産調整の一つの手段として推進されてきました。特に16年度から18年度までの3年間の期間で実施されている産地づくり対策においては、水田における米以外の作物などの生産として、飼料作物は麦・大豆と並ぶ重点品目として位置づけられ、米の生産調整の取組として強力に推進されてきました。 一方、農政全体の大きな流れとして、平成17年10月27日に決定された経営所得安定対策等大綱において、品目横断的経営安定対策、米政策改革推進対策、農地・水、環境保全向上対策という一連の政策改革について、対策の基本的骨格が示されましたが、耕畜連携対策は米政策改革推進対策の中でその取り扱いを引き続き検討することとされました。その後、18年7月に同大綱で決定した事項を実地に移すに当たり、必要な予算措置や運用などを明らかにするために経営所得安定対策等実施要綱が取りまとめられましたが、この中で耕畜連携対策は産地づくり対策とは別途の措置として米政策改革推進対策の中に明確に位置づけられました。 このような中で、本稿では、水田における耕畜連携の推進の中心となる19年度以降の新たな耕畜連携対策事業の概要を全国でブロック会議を開催し説明したことを踏まえ、その内容をお知らせすることとします。
2 飼料増産の取組と耕蓄連携対策食料・農業・農村基本計画が平成17年3月に閣議決定されましたが、その中で食料自給率の向上を図る上で自給飼料の生産拡大が重要な課題とされ、平成27年度を目標年度とした飼料自給率目標が設定されたことから、現在、行政や農業団体などが一体となった飼料増産運動が推進されています。 このため、全国飼料増産行動会議などを設置し、具体的な飼料増産に向けた行動計画が作成され、様々な取組が推進されていますが、水田における飼料作物の生産振興にかかる部分は重要な地位を占めており、同計画の4つの柱のうち3つは水田における耕畜連携の取り組みに直接かかわるものとなっています。
図1 飼料増産の推進について 3 19年度からの耕蓄連携水田活用対策(1)基本的考え方 一方、水田における飼料作物の生産は、地域によって採草や放牧などの利用方式や牧草、稲発酵粗飼料専用稲などの草種、乾草やサイレージなどの調製方法などが様々であり、また、稲作経営と畜産経営の結びつきも異なることから、効果的な飼料作物の生産振興を図るためには地域の実態に即した取組を推進することが重要と考えられます。 このため、19年度以降については、前述のようにわが国の農政をめぐる情勢が大幅に変化する中で、水田における飼料生産振興の取組をより効率的かつ機動的に推進するため、飼料の生産振興に直結する取組として、営農集団などが実施する個別のモデル的な取組に対して直接支援する仕組みを設けました(生産振興助成)。また、取組面積当たりの支援については、基本的な支援対象や要件は現行対策の仕組みを維持しつつ、地域の水田状況に適した飼料生産を推進するため、地域の創意工夫により単価の水準を設定できるようにしました(取組面積助成)。 なお、本対策は、飼料作物の生産振興対策として、産地づくり対策とは別途措置されることとなりましたが、水田における飼料作物の生産の拡大により、米の生産調整が推進されるものであり、米の生産調整の実効確保にも大きく寄与するものと考えています。
図2 耕畜連携対策のイメージ
(2)助成の体系 図3 耕畜連携水田活用対策の助成体系
(3)生産振興助成 取組に当たっては、まず、都道府県水田協議会において都道府県全体の水田における飼料作物の生産振興の方向性を水田飼料作物生産振興計画書(生産振興マスタープラン)として事業実施期間を見通して策定し、この計画に合致する飼料生産振興の具体的な取り組み計画を有する営農集団などが都道府県協議会に対して事業の採択要請を行い、都道府県協議会は国(地方農政局)に承認申請を行い承認された取組について助成が行われることとなります。 また、生産振興助成の採択は、後述の取組面積助成の事業対象地域(耕畜連携水田活用計画書が作成された地域協議会の管内)に限定することとし、面積当たりの助成と生産振興の取組の相乗効果により地域の飼料生産の効率的な振興を図ることとしています。 さらに、補助率は、ソフト経費である地域における調整活動の取組に関するものは定額(100%補助)、機械や施設、放牧用の牛に関しては1/2以下としています。
図4 生産振興助成のイメージ
表1 主な取組要件
(4)取組面積助成
表2 取組内容と主な要件
図5 取組面積助成のイメージ
4 都道府県別交付見込額の内報新たな耕畜連携対策は、前述のとおり、国による実績払いから都道府県協議会における基金造成方式に変更されますが、この方式は産地づくり交付金の運営方式と同様に今後1月〜2月にかけて県レベルおよび地域レベルの計画策定を進める必要があることから、同交付金と同日の11月30日に交付予定額を都道府県協議会に対して内報を行いました。 19年度分については、現行対策の各都道府県別の取組状況を基本に19年度の概算要求額54億円のうち50億円を配分し、4億円については追加配分することとしています。
5 おわりに水田における耕畜が連携した飼料生産の取組は、従来からその重要性が強調されてきましたが、畜産農家と耕種農家の立場の違いや飼料生産の極めて幅広い多様性などから、その推進においては様々な課題が存在します。先進地視察などにより、取り組みを実施することに総論としては賛同を得られるようになっても、実施まではなかなか至らないという話もよく聞かれるところです。 このため、新対策においては、地域の創意工夫を生かせるように助成体系を改めるとともに、飼料生産などに取り組んだことに対する助成だけでなく、取り組みを実施する手段に対する助成を創設することにより、これらの課題の解決の新たなツールと使っていただけるようにしたところです。 19年度以降は、地域の水田農業に対する基本的対策である産地づくり対策とも密接な連携を取りつつ、この新たなツールを使うことにより、これまで、もう一歩踏み込めなかった地域においても、創意工夫を生かした新たな飼料生産の取組が開始されることを期待しています。 |
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