富山県農業技術センター畜産試験場/金谷 千津子
富山県では平成13年から飼料イネの生産利用が始まったが、その多くが乳牛へ給与されてきた。肉用牛、特に肥育農家には、飼料イネのβ-カロテン含量が、通常給与している稲わらに比べ高いのではないかという懸念があり、利用がちゅうちょされていた(β-カロテンは牛の体内でビタミンAに変化し、肉質を左右する脂肪交雑が抑制されると言われている)。 そこで、富山県農業技術センター畜産試験場では、平成15〜17年度に、飼料イネ中のβ-カロテン含量の把握とその低減化、さらに、肥育牛への給与技術開発に取り組んだ。 その結果、飼料イネの黄熟期には稲わらの2〜3倍のβ-カロテンが含まれているが、刈り取ってほ場で予乾(天日干し)し、その後、密封してサイレージに調製することで、稲わら並みの含量に低減できることが明らかとなった。 また、β-カロテン含量を低減した飼料イネは、肥育牛に乾草や稲わらの代替として給与しても増体や肉質に影響しないことがわかった。さらに、飼料イネ中のビタミンEが肉色を良好に保ち、脂質の酸化を抑制する傾向があることも明らかとなった。 この結果を受け、富山市婦中町では、昨年から肥育農家が飼料イネの利用を始めている。今年は1営農組合、8個人が、約10ヘクタールで飼料イネの専用品種である「夢あおば」を移植や直播で作付けた。飼料イネを予乾して収穫するには、牧草用の大型機械を利用するとともに、ほ場が乾田化していることが重要である。この地区では、ほ場の早期落水を徹底するとともに、栽培農家、利用肥育農家、JA、普及指導センターなどが一緒に、収穫前の7月、8月にほ場巡回を行い、生育状況などを調査し収穫時期の確認を行っている。肥育農家が収穫した飼料イネは、良質なサイレージに調製されており、現在、黒毛和種去勢牛に給与されている。 また今年、新たな動きとして、JAが設立した農業生産法人が生産主体となり、氷見市で初めて飼料用イネ34アールが展示栽培された。8月中旬に収穫、サイレージに調製し、夏期に耕作放棄田に放牧されていた黒毛和種繁殖牛の冬期間の粗飼料として利用されている。ここでは、食用米品種での試みであったが、収量や品質的に満足のいくものであったことから、来年はさらに面積を拡大する意向である。 飼料イネは水田機能を維持しながら飼料自給率を向上できる転作作物であり、今後ともこのような耕畜連携による生産利用の拡大が期待されている。
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