◎地域便り


神奈川県 ●リキッド飼料を活用した養豚経営

神奈川県畜産技術センター・普及指導部/関谷 敏彦


 近年、資源リサイクルや自給率向上の観点から、食品残さを飼料原料として有効活用することが注目されているところである。そこで、神奈川県内の食品残さ飼料を利用した養豚経営の一事例を紹介する。

 神奈川県伊勢原市で銘柄豚「はーぶぽーく」の生産・販売している(有)亀井畜産(肥育豚200頭規模)では、平成18年から食品残さからつくられたリキッド飼料の給与に取り組んでいる。

 このリキッド飼料は、(株)小田急ビルサービス環境事業部・小田急フードエコロジーセンター(神奈川県相模原市)が製造しており、食品残さを乳酸発酵をさせた水分約80%の液状飼料で、食品残さを種類別に計量し、飼料成分を計算しながら製造されている。

 (有)亀井畜産では、2ヵ月齢から4ヵ月齢までの豚にこのリキッド飼料を、また仕上げ期の2ヵ月間は銘柄豚「はーぶぽーく」用の配合飼料を給与している。また小田急フードエコロジーセンターでは、利用者の要望に合わせた飼料製造を行っており、自家農場用として、ハーブが添加されたリキッド飼料を製造している。

 リキッド飼料は、豚舎の外に設置した専用タンク(写真1)から豚舎内上部に配管されたパイプに圧送され、豚房ごとに設置されたバルブの開閉により給餌される(写真2)。リキッド飼料用の飼槽は、塩ビ管を利用してつくられており、仕上げ期用配合飼料の飼槽と併設されている(写真3)。タンク、配管、飼槽の設置以外には大規模な工事は必要ない。

 リキッド飼料は朝晩2回給与され、飼槽に流し込まれると同時に豚たちがこぞって首をつっこんで食べ出す状況で、し好性は極めて良好である(写真4)。

 (有)亀井畜産の亀井隆氏は、リキッド飼料利用のメリットとして、給餌にかかる作業時間が大幅に削減されたことを第一に挙げている。また発育や肉質についても、配合飼料のみで肥育していたときと変わりなく、「はーぶぽーく」の売れ行きも好調であると述べている。


亀井氏とリキッド飼料タンク(手前)(写真1)

豚房内の配置(写真3)


豚舎内の配管(写真2)


リキッド飼料のし好性は良好(写真4)

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