◎地域便り


長崎県 ●規格外バレイショを有効活用した「霜降り豚肉」

長崎県畜産試験場/嶋澤光一


 バレイショの産地である長崎県では、11万1千トン/年のバレイショが生産されているが、そのうち5.5%(約6,000トン)は過大、過小、損傷などの理由で規格外品として廃棄されている。そこで長崎県畜産試験場では、長崎県研究機関連携プロジェクト研究「バイオマス(再生可能な有機性資源)を有効活用した循環型モデル地域づくり」の一環として、規格外バレイショの飼料化技術に取り組んだ。

 これまで、バレイショなどのイモ類はサイレージ(発酵飼料)にすることで、養豚飼料として利用できることが知られているが、生産効率を重視した現在の養豚業では利用されていない。一方、最近の研究により、飼料中のリジン含量などの栄養成分の調節により筋肉内脂肪含量の多い豚肉を生産できることが報告されている。そこで長崎県畜産試験場では、廃棄される規格外バレイショを主原料に栄養設計した混合サイレージを調製し、それを肥育豚に給与し高品質な豚肉を生産することで、バイオマスの有効活用法を検討した。

 その結果、バレイショ混合サイレージを給与した豚は、通常の配合飼料給与より発育が劣り出荷は9日程度長くなった。しかし、その豚は、ロース芯内の脂肪含量が6.0%と配合飼料を給与した豚肉の1.8%より3倍程度筋肉内脂肪を多く含有し、いわゆる「霜降り豚肉」と言っても差し支えないほどであった。また、食味官能検査や理化学的測定においても、その霜降り豚肉の食味は、においが弱く、柔らかくかつ風味が良いという特徴があり、総合的においしいと評価され、高品質な豚肉生産の可能性がうかがえた。

 これまで規格外バレイショは、病害のまん延防止のためほ場還元も難しく、処理に困窮していた。それを地域が協力し飼料化することで、バイオマスの有効活用が図れるとともに、自給率向上にもつながる。しかも、この飼料で生産した豚肉は、筋肉内脂肪含量に富み食味に優れることから、長崎県特産のバレイショを飼料原料とした新たな特産畜産物となれば、これまで労力的な問題から敬遠されてきたサイレージ調製のコストを相殺できる可能性がある。この試験結果を受け、平成19年度には県内の農協と養豚生産者を中心に、バレイショ混合サイレージの調製から豚肉の生産、流通・販売を目指した現地実証試験を行うこととしている。


バレイショ混合サイレージ給与風景

バレイショ混合サイレージを給与した豚肉


規格外バレイショを粉砕しサイレージ調製する

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