平成18年度養豚基礎調査
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はじめに WTO交渉等国際化の一層の進展が予想される中、わが国の養豚の安定的な発展を図るためには、消費者のニーズに即した高品質な豚肉の低コスト生産が不可欠であるとともに、各地における種豚の改良や肉豚の生産状況、課題などの実情を把握することが必須である。 結果の概要(1)調査に対する回答状況について 本年度の調査対象経営戸数は、平成18年2月1日現在の全戸数7,800戸を対象に調査を行い、回答は、4,870戸(無記入等を含む)で回答率は62.4%である。このうち女性は155名である。平均年齢は57.8歳である。(表1) 表1 調査に対する回答状況について 平成18年8月1日現在 (2)養豚経営について 養豚経営の労働形態は、家族経営77.3%、会社経営18.2%である。 前年比は、家族経営が0.9ポイント減、会社経営が0.6ポイント増である。経営タイプは一貫経営が75.2%、繁殖経営が13.9%、肥育経営が10.9%で前年と同傾向である。地域別にみると繁殖経営では九州・沖縄が20.9%と高く、肥育経営では中国・四国が20.8%と高い。 (3)肉豚の出荷状況について 肉豚の出荷時日齢は、全国平均194.5日齢で、前年と同じであるが、地域別では九州・沖縄はバークシャーが多いため、日数が長い傾向がある。肉豚の出荷時体重は113.2キログラムで前年より0.6キログラム増加した。また、枝肉重量は全国平均73.5キログラムで前年とほぼ同水準である。 子取り用雌豚頭数を飼養規模別にみると肉豚出荷時日齢は、大規模になるほど早く出荷されている。肉豚出荷時生体重、枝肉重量は、大規模になるほど軽くなる傾向がある。(表2) 表2 子取り用雌豚頭数規模別、肉豚出荷状況 また、肉豚出荷状況については、「出荷頭数が増加した」が18.3%、「出荷頭数は変わらない」が47.8%、「出荷頭数が減少」が33.9%で、約3分の1の養豚経営者が前年より減少したと回答している。 肉豚の出荷頭数の減少要因をみると、「疾病の侵入で事故率が増加した」が多く、特に九州・沖縄が顕著となっている。また、「気象の変動で、生産性が低下した」が多くなっている。(図1) 図1 肉豚出荷頭数減少の要因について(複数回答)
種雌豚の全頭数は687,427頭で、そのうち純粋種は89,519頭(13.0%)、種雄豚の全頭数は41,959頭で、そのうち純粋種は35,955頭(85.7%)である。 種雌豚の品種割合はランドレース種22.9%、大ヨークシャー種17.7%、バークシャー種49.6%、デュロック種4.8%である。 肉豚生産体制の止め雄としては、デュロックが74.2%を占めている。沖縄・九州ではバークシャーが27.4%(前年比6.8ポイント増)である。 (5)人工授精実施状況について 交配方法は、自然交配67.3%、自然交配と人工授精の併用が28.2%、人工授精4.6%となっており、人工授精のみ+自然・人工併用が32.8%と、前年より1.0ポイント増加している。子取り用雌豚頭数規模別でみると、小規模ほど自然交配の割合が高く、大規模ほど併用型の比率が高い。500頭以上で87.5%、1,000頭以上で95.4%が人工授精を導入・実施している。 (6)事故率(死亡)について 離乳から出荷までの事故率は7.5%で前年比0.1ポイント増加した。地域別にみると、九州・沖縄が8.9%と高く、関東7.7%、東海7.2%と続いている。(表3)事故率15%以上の養豚経営戸数は550戸あり、その平均事故率は20.0%である。子取り用雌豚頭数規模別でみると50頭以上〜199頭以下層及び1,000頭以上層の事故率が高い。(表4) 表3 離乳後から出荷時までの事故率(地域別) 表4 離乳後から出荷時までの事故率(子取り用雌豚頭数規模別) 肉豚の主な死亡事故の要因は、呼吸器疾患75.7%、消化器疾患33.6%で呼吸器系による事故率が最も高い。地域別にみても同様の傾向である。(図2) 図2 事故の主な要因について(○印は2つ以内) (7)担い手(認定農業者)について 認定農業者とは、自ら経営改善に取り組むやる気と能力のある農業(養豚)経営者が、いわば「農業(養豚)経営者のスペシャリスト」をめざす計画である「農業経営改善計画」を作成し、その計画を市町村が認定する「認定農業者制度」によって認定を受けた農業(養豚)経営者である。 平成18年8月1日現在の認定農業者の設定状況は、回答者数4,537戸に対して認定農業者が50.7%、未認定農業者が49.3%でほぼ半々である。(図3) 図3 認定農業者の認定状況 (8)経営形態について 経営形態は、個人経営68.8%、有限会社系21.3%、株式会社4.6%である。 子取り用雌豚頭数規模別にみると、小規模層は個人経営層が高いが、200頭以上層になると有限会社または株式会社の割合が高くなる傾向にある。(図4) 図4 子取り用雌豚頭数規模別の経営形態 (9)環境問題について 畜産環境問題で、「困っていることがない」が56.9%、「困っていることがある」が43.1%である。特に問題事項は(1)悪臭問題70.5% (2)水質汚濁問題34.7% (3)害虫問題16.6% の順である。(図5) 図5 「環境問題で困っていることがある」の内訳(複数回答) さらに、農場周辺対策では、畜舎周辺への花木の植栽54.0%、地域活動への協賛・協力49.2%、周辺住民の生産物の配付40.9%となっている。(図6) 図6 農場周辺対策の実施状況(複数回答) (10)リサイクル飼料の利用について 現在、養豚経営者が利用している給与飼料は、市販配合飼料が92.9%、リサイクル飼料13.9%、自家配合飼料が8.0%である。 リサイクル飼料の利用状況を、地域別にみると近畿50.0%、東海23.3%で、中国・四国、九州・沖縄と続いている。(図7) 図7 現在利用している飼料の種類(複数回答) リサイクル飼料の種類については、「食品製造工場(事業所)から」が43.9%、「レストラン・ホテル・給食センターから」が36.7%、加工された乾燥飼料25.7%である。(図8) 図8 リサイクル飼料の種類について(複数回答) 原材料を入手して、リサイクル飼料を利用する者に原材料の種類を聞いたところ、パン類59.5%、ご飯、米加工品51.5%、麺類、麦加工品33.1%が主なものである。 地域別にみると、リサイクル飼料の原材料の種類はパン類が中心であるが、地域により特徴が出ている。(図9) 図9 リサイクル飼料の原材料について さらに、原材料の利用方法についての設問には、「常温保管してそのまま利用」が51.3%、「加熱して利用」が26.1%、「加熱乾燥」が14.9%である。 地域別にみると、各地域とも「常温保管してそのまま利用」が、最も多い傾向である。(図10) 図10 リサイクル飼料の利用方法 リサイクル飼料の利用について、今後の意向についての設問では、「利用を拡大したい」が19.6%、「現状を維持したい」が75.9%である。(図11) 図11 今後におけるリサイクル飼料利用の意向について さらに今後入手したいリサイクル飼料又は原材料としての入手形態は、(1)パン類、(2)ご飯・米加工品、(3)麺類・麦加工品が中心となっているが、地域別では地域の特産品等により異なっていることが分かる。(表5) 表5 今後入手したいリサイクル飼料(又はリサイクル飼料の原材料)の形態 リサイクル飼料を利用していない者に対する今後の意向についての設問では、「リサイクル飼料を利用する又は利用したい」の割合は30.6%である。 地域別ではほぼ同傾向であるが、九州・沖縄は、他地域よりやや低い。子取り用雌豚頭数規模別にみると、小規模層より大規模層がリサイクル飼料の利用の意向が高い傾向にある。 |
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