岩手県/三浦 賢一郎
八幡平市の酪農家10戸で組織する農事組合法人岩手山麓ディリーサポートが運営するTMR(完全混合飼料)供給センターが平成18年3月の施設稼働から1年を経過した。 地域の酪農経営体の多くは家族経営が基本であるため、限られた労働力だけでは自給飼料生産に係る労働時間の増加に対応できないこと、作業面積の増加に伴う機械投資への負担により生産コストの増加を引き起こすなどの課題を抱えていた。 同法人はこうした背景の下、ゆとりある酪農経営の実現を目的に17年3月に設立されたもので、(1)農地集積による生産基盤の確保、(2)コントラクター方式の導入、(3)かす類などの未利用資源活用を基本柱に次のような粗飼料生産・調製やTMRの製造・供給を行っている。
TMRの原材料である粗飼料の生産・調製については、牧草地と飼料畑を一括して管理しており、このほか、受託作業面積を合わせると作業面積は約300ヘクタールにも及ぶ。ロールラップサイレージは、組合員の出役により、またグラスサイレージとデントコーンサイレージは、一部の作業(バンカーサイロまでの原料運搬と踏圧作業)を外部委託し、調製している。 なお、本施設で製造するTMRは、長期間の貯蔵が可能な発酵を伴うものとなっており、こうした自給粗飼料を原料とした「発酵TMR」は全国的にも事例が少ない。 製造されたTMRは、圧縮梱包装置により圧縮し、特殊ビニールで覆って円柱状に成形され、外注している運送会社が各組合員の庭先に運搬している。 代表理事の田村亨氏は、稼働1年目を振り返って「何事も初めての状況で準備不足や課題もあったが、組合員が多くの打ち合わせの機会を持ち、問題解決に向かって取り組むことができた。現在は組合員のみの利用だが、将来的には地元の酪農家にもっと利用してもらいたい。」と語る。 生乳の計画生産や飼料価格の高騰への対応、そして転作田の有効活用など、今後も取り組むべき課題は多い中、同法人の活動にはますます大きな期待が寄せられている。
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