(社)三重県畜産協会/古御門 徹
こだわりの豚肉生産に取り組むのは、三重県津市の(有)大西畜産を経営する大西良和さん(48)。現在、母豚170頭の一貫経営で年間に約3,700頭の肉豚を生産する。 こだわりの目標その1は、「おいしさを追求した豚肉の生産」だ。 大西さんは、飼料や水、品種にこだわりをもって、おいしさを追求してきた。飼料はライ麦入りペレットや海藻の粉末、木酢酸を給与している。飲用水は地下100メートルの伏流水を汲み上げ、活水器を通している。この水や飼料は肉の筋肉の繊維を細くしてやわらかさを増したり、家畜の臭いを抑えたりする効果があるようだ。 目標その2は、「安全性への情報発信を積極的に行う」ことだ。 トレーサビリティ情報(生産・流通履歴を追跡する情報)を発信し始めたのは、2005年4月から。地元の食肉公社を説得し協力を得られたことから、出荷する豚と豚肉の整合性が取れるようになった。自社のホームページでパッケージに記載された個体識別番号を入力すると、その豚の生年月日や使った飼料、抗生物質の使用状況、と畜年月日などが確認できる。これらの情報の源は、HACCPの手法に基づいて記録記帳した自社のデータである。 目標その3は、「環境に配慮した養豚経営」である。 農場からは1日に3トンのふん尿と12トンの排水が出る。固液分離したふんは、密閉式発酵機でたい肥化され、近在の耕種農家や家庭菜園で利用されている。このたい肥を使った米の販売も行い資源循環型農業を確立している。尿や排水は、バクテリアで分解し中空糸膜を通して排水規制の1/10程度まで濃度を下げてから放流している。
夢は「全量自家販売」だ。 このようにこだわりを持って生産した豚肉をちゃんと評価してほしいと思い、ブランド豚肉「頑固おやじのぶた」の直販を始めたのは2004年4月だった。現在の年間売上高は1億3千万円程で、このうち直販額は1,500万円を占める。個人宅や事業所を定期的に訪問する移動販売が主力で直販額の80%を占めるが、インターネットへの出店も行っている。ハムやウインナーといった加工は業者に委託しているが、新鮮なお肉を届けたいので、お客様の要望に合わせてカットやスライスは自社内の加工場で行っている。 注文は時期により変動があり直販に係る時間も左右される。直接的な労力のみでもスライス作業は、1〜3人が(週に4日×半日)宅配には、1人もしくは2人が(週に1人×半日×5日、1人×半日×2日)必要であり、こだわりの豚肉生産・販売は、非常に手間がかかる。しかし、直販を始める前には、お客様からの「おいしかった。」という一言がこんなに嬉しいものだとは、思いもよらなかったようである。 全量自家販売に向けて、社長の夢は大きくふくらんでいる。 大西畜産ホームページURL http://www.gankooyazi.com/
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