◎専門調査レポート


国産ナチュラルチーズ 生産振興への取り組み

宮崎大学農学部 教授 六車三治男

はじめに

 脱脂粉乳の需要低迷、長引く飲用牛乳の消費不振に伴う生乳の需給緩和が続く中で、国は国産ナチュラルチーズの生産振興に取り組んでいる。このような中、乳業再編事業を通じて大手乳業メーカーがチーズ工場の新設や設備の増設など国産ナチュラルチーズの増産(約20〜30万トン)などの動きが見られている。その結果、乳の処理能力は現在のチーズ向け乳量の約2倍になるものと予測される。このような大手乳業メーカーの生産をめぐる動向について、生産、流通、副産物の利用の可能性、日本人の嗜好に合ったチーズ造りなどを調査し、今後のわが国のナチュラルチーズの生産振興の方向性を探ることが今回の調査の目的である。

 そこで、大手乳業メーカーのチーズ生産の実態と、消費者にもっと国産チーズを食べてもらう工夫、課題にスポットを当て、雪印乳業株式会社横浜チーズ工場、同大樹工場およびよつ葉乳業株式会社十勝主管工場を調査した。

 さらに、十勝管内中札村で、浦幌乳業でチーズ製造技術者だった赤部紀夫さんが営むチーズ工房「十勝野フロマージュ」を訪問したので合わせて報告する。


雪印乳業株式会社 横浜チーズ工場

 雪印乳業株式会社には全国に、中標津工場、大樹工場、横浜チーズ工場および関西チーズ工場の4つのチーズ工場がある。今回の調査は、日程の関係から雪印乳業(株)横浜チーズ工場での聞き取りから始まった。当日は、横浜チーズ工場工場長岩沢伸次氏、総務課長萩原 整氏、本社生産部技術クループ課長柴田貴宏氏、コミュニケーション室広報グループ主任金子剛久氏の諸氏に、雪印乳業横浜チーズ工場の概要やチーズ需要拡大に向けた雪印グループ一体となった取り組みなどの説明を受けた。さらに、工場生産ラインの見学の後、新しく開発した製品の試食を行った。


横浜チーズ工場会議室にて工場の概要と試食会を実施
*前列左から筆者、中央は岩沢氏、後列右から萩原氏、
柴田氏、金子氏

 この横浜チーズ工場ではプロセスチーズを年間約24,000トン製造している。近年、プロセスチーズの製造は横ばい状態が続いているとのことで、日本人の嗜好に合ったチーズの開発・生産が重要な課題だそうだ。

 工場の見学では、各種スライスチーズシリーズ、変わらぬ人気の6Pチーズシリーズ(塩分ひかえめ、コクとうまみ、北海道カマンベール入りなど)さらには、大好評の切れてるチーズの生産工程を見学できた。写真はその生産ラインの一部である。

 平成18年度のプロセスチーズの新商品としては、「スライスになったクリームチーズ」、「鉄ラクトフェリンinチーズケーキ」、「コラーゲンinチーズケーキ」、「ベビーチーズ8個入り」、「パルメザンうす削り」、「雪印オレンジのしずくチーズケーキ」、「雪印リンゴのしずくチーズケーキ」、「雪印切れてるチーズハム風味」など、同社独自の技術を活用した新商品を発売し、チーズ市場の拡大に努めている。
以下、それら新商品を含め製造されている製品の一部を示した。



横浜チーズ工場6Pチーズ製造ラインの一部


横浜チーズ工場製造の製品(平成18年6月現在)


雪印乳業株式会社 大樹工場

 北海道広尾郡大樹町は人口6,500人、面積816キロメートル(道内18位)、北海道東部、十勝の南部に位置する。産業は、農業を中心に漁業、林業を基幹として発展しているが、中でも酪農は、乳牛17,000頭を数え、道内有数の規模を誇っている。雪印は昭和14年に当地に集乳所を開設、以来規模を拡大し現在に至っている。

 大樹工場の生乳集乳量は、年間約12.9万トン(約350トン/日)、うち全農送り4.3万トン、工場処理量7.9万トン(約220トン/日)でチーズ・粉乳およびクリームを生産している。チーズはゴーダチーズ、カマンベルチーズ、ストリングチーズ、カッテージチーズ、クリームチーズなどのナチュラルチーズを生産している。チーズの生産量は53品目、約7,900トン/年である。粉乳類としてはチーズから産出するホエイを粉体化しており、生産量としては約3,500トン/年である。

 大樹工場の調査では、製造第一課長宮川美彦氏に大変お世話になった。


大樹工場事務所前にて
*中央、宮川氏


ナチュラルチーズ製造工場の概観の一部(大樹工場)

 本工場の目玉商品は、なんといっても日本オリジナルのチーズとして紹介できる「ストリングチーズ」である。スルメが横向きに裂けるのに対して縦に裂けるようにつくられたチーズである。この商品は、熟成による風味を賞味するよりも、どちらか言えばそのテクスチャーを賞味するチーズである。加熱殺菌後の原料にスターターおよびレンネットを添加してカードを形成させ、高温のお湯のなかで混合しもち状のチーズを形成させる。それを成型後、機械的に延伸させることより、ひも状に変化する。成型と延伸の段階で細糸を束ねたような弾力性に富むチーズ様製品が出来上がる。

 雪印グループは、日本人の嗜好に合うチーズを求めながら、伝統や技術を継承し、新商品・改良品を発売し、ナチュラルチーズ市場拡大に取り組んでおり、調査を通じてその意気込みを感じた。また、食スタイルの充実や食べやすさ・分かりやすさを追求する商品、チーズを食べることで期待できる健康保健効果をうたった健康ニーズへの対応商品などの開発に力を注いでいた。ストリングチーズのような日本独自の製品がさらに誕生することを期待したい。


チーズで新ブランド

 雪印乳業は、本年3月から6年ぶりの新ブランド「雪印北海道100」を販売する。「雪印北海道100」は、北海道で生まれ、北海道の酪農とチーズづくりの歴史とともに歩んできた雪印が、北海道にこだわって北海道産の生乳を100%、または北海道のナチュラルチーズを100%使用したのが特徴。日本人の味覚に合ったチーズと位置付け、スライスチーズなど19品目を発売する。「雪印北海道100」は中標津新工場と大樹工場の製造ライン増強などで生産を強化する。市場シェア30%以上、家庭用シェア50%以上を占めるトップメーカーとして新ブランドの展開で一層の市場拡大を目指している。高野瀬社長は、北海道とはぐくんできたチーズ造りの歴史と技術力を踏まえた新たなブランドの立ち上げで、日本のチーズ文化創造に挑戦し、酪農乳業界の発展に向けて国産生乳の価値を高めたいと述べている。


雪印北海道100シリーズの一部


国産ナチュラルチーズ生産体制強化への取り組み

 近年の食の多様化に伴い、乳製品においては、特にナチュラルチーズへの関心が高まっている。一方、行政における「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」(以下「酪肉近代化基本方針」という)に基づき、酪農・乳業の国際競争力強化策の実施が求められている。

 そこで、雪印乳業株式会社は、中期経営計画における重点政策として、チーズ事業強化のため「ナチュラルチーズへの重点投資」を掲げ、取り組みを開始している。すなわち、国産ナチュラルチーズの生産体制強化のため、世界トップレベルの品質水準である北海道の生乳を原料とするナチュラルチーズ増産を通じ、国内チーズ市場のさらなる拡大を目的に、日本人の嗜好にあった多様なチーズを生産する体制の構築に取り組んでいる。

 調査当日、偶然にも本社、調達部長で新工場建設委員長の内山正志氏に再会し、新工場建設の概要をご説明頂いた。内山氏とは九州大学の畜産製造学研究室で、ともに思い出多い楽しい研究生活を送ったものである。


新工場建設委員長の内山氏と

 具体的には、中標津工場の敷地内に新工場を建設するとともに、大樹工場において製造ラインを増強し、北海道での国産ナチュラルチーズ生産体制を強化する。この2工場で年間30万トン規模の生乳処理能力を確立し、フレッシュ系から熟成ハード系まで、高品質の国産ナチュラルチーズを幅広く供給できる体制の構築を目指している。

 中標津新工場では、原料ゴーダチーズ、原料チェダーチーズなどハード系のナチュラルチーズをチーズ生産量で年間2万トン以上。一方、大樹工場ではさけるチーズ(ストリングチーズ)の生産ラインを年間3,000トン以上(30%以上の能力増強)に増強する。

 その際に排出されるチーズホエイについては、有効活用していく方向で技術的研究を進めるとの方針だそうだ。


よつ葉乳業株式会社十勝主管工場

 よつ葉乳業は、北海道の大地に根ざした酪農生産者の手によって、十勝地区の8農協が中心になって昭和42年に誕生した乳業会社である。以来、天然、自然を志向し、生活者の食生活と健康に貢献する食品造り、本物の製品づくりを目指して取り組んでいる。

 今回の調査では、よつ葉乳業株式会社十勝主管工場やチーズ研究所を見学し、よつ葉乳業株式会社生産本部十勝主管工場チーズ研究所所長 野畠一晃氏、同課長貝塚陽二氏に、チーズ生産に関する同社の取り組みなどについてお話を伺った。また、ここでは帯広畜産大学島田謙一郎先生も一緒に同行して頂いた。


よつ葉乳業株式会社十勝主管工場全景


工場を背景に記念撮影
*右から2人目、野畠氏、ついで貝塚氏、左端、島田先生

 十勝主管工場は北海道河東郡音更町に位置し、乳製品工場(昭和42年度完成)、チェダーチーズ工場(昭和57年度完成)、カマンベールチーズ工場(平成4年度完成)、新市乳工場(平成16年度完成)などが23.6万平方メートルの敷地に林立し各種乳製品を製造している。乳製品工場(受入乳量;30万トン/年)では年間にバター(7,300トン)、脱脂粉乳(23,400トン)、生クリーム(11,600トン)、全脂濃縮乳(1,300トン)、脱脂濃縮乳(5,400トン)などを製造している。市乳工場(受入乳量;8万トン/年)では、年間に牛乳(72,000トン)、低脂肪乳(9,200トン)、乳飲料(700トン)を製造出荷している。今回見学したチェダーチーズ工場(受入乳量;5万トン/年)では、チェダーチーズ(5,440トン)、ホエイパウダー(3,000トン)を製造し、カマンベールチーズ工場(受入乳量;3,000トン/年)では、カマンベールチーズ(280トン)、ゴーダチーズ(140トン)、クリームチーズ(75トン)、モツァレラチーズ(20トン)、エダムチーズ(0.1トン)を製造している。チェダーチーズの主な用途はプロセスチーズ原料用であり、その他は直接消費される。


よつ葉北海道産十勝チーズラインアップ

 よつ葉乳業製の各種製品を以下に示した。それらナチュラルチーズの製品群には下記のような特徴がある。

○ カマンベールチーズ:チーズの本場、フランスでも名高いイズニー社との技術提携で丹念に造り上げたチーズの傑作で白カビタイプのチーズ。白く美しい外観とやわらかくなめらかな食感。クリーミーで上品な味が売り。

○ カマンベルチーズ(生タイプ):クリーミーな薫りと豊潤な風味が特徴の限定販売品。

○ シュレッドチーズ:北海道十勝産の3つのとろけるチーズをバランスよくブレンドしている。ピザやグラタン、各種料理に利用できる。

○ チェダーチーズ:ほのかな酸味とナッツのようなコクがあるのが特徴。セミハードタイプのナチュラルチーズ

○ ナチュラルスライスチーズ:十勝産のチェダーチーズをスライスにした製品。加熱すると、とろーりとろけて風味もぐっとアップ。厚切りタイプでボリューム満点のスライスチーズ。

○ クリームチーズ:十勝の生乳とクリームが原料。クリームのまろやかなコクを生かした非熟成タイプのさわやかなナチュラルチーズ。酸味ひかえめ。

○ ゴーダーチーズ:くせのないおだやかな風味のセミハードチーズ。そのまま食べるのはもちろん、溶かせばとろりと美味しさがアップする。

○ チーズフォンデュ:十勝産のナチュラルチーズを100%使用して、フォンデュに最適な配合にブレンド。

○ チーズスプレッド:十勝産カマンベールの風味を生かし、なめらかに仕上げた「ぬる」タイプのスプレッド。

○ 十勝ミックスチーズ濃厚(新商品):濃厚なゴーダチーズを50%配合し、濃厚な風味が楽しめる特製ブレンド。コクのあるゴーダチーズの風味を引き出し、料理にも使いやすい細切りカット。

○ 十勝ミックスチーズのびーる(新商品):抜群ののびの良さ、あわせる食材とまろやかにマッチするモツァレラチーズを50%配合した特製ブレンド。ピザやトーストにぴったり。やや厚切りカット。

 栄養があり、身体に良いものを求める志向が年々高まっていることと、ワインブームやイタリア料理ブームなどが相乗効果をもたらす形でチーズの市場規模は拡大傾向にある。そのような中で、よつ葉乳業株式会社でもチーズはフル生産の状態である。さらに今後、日本人の嗜好にあった、しかも家庭でメインディシュからサイドメニュー、さらには手軽なおつまみやおやつとしても喜ばれるような製品の開発を行い、さらなる市場拡大のための努力をしている。

 併設されているチーズ研究所では、野畠所長や貝塚課長らの指導により、そのような製品開発のための基礎的研究を行っていた。


チーズ工房 「十勝野フロマージュ」

 大手企業のチーズ造りを見学し、そのチーズ生産に対する取り組みを紹介したが、日本のナチュラルチーズの60%以上を生産する酪農王国十勝には、原料や風土にこだわった個性的なチーズを生産する手造りのチーズ工房が10数社ある。その中でも、その先駆けといえる十勝平野の南部、中札内村にある「十勝野フロマージュ」を訪ねた。


十勝野フロマージュ

 代表の赤部紀夫さんは、函館市生まれで、浦幌町の乳業会社で乳製品製造にたずさわり、工場内でナチュラルチーズ造りを担当された。そのころから手造りチーズの魅力にひかれ、「いつかは自分の工房で、自分のチーズを造りたい」という想いを深められた。さらに、カマンベールチーズの発祥地であるフランスノルマンディ地方のカマンベル村に5回もでかけ経験と技術にさらに磨きをかけられた。独立の意思を固め、定年の少し前に会社を退職され、平成12年10月に、三男の貴紀さんと共に親子2代で念願のチーズ工房を開業された。

 中札内村を選んだのは、以前立ち寄った時に、風景にも増して水が美味しかったのが忘れられなかったことがその理由だそうである。日本一の清流・札内川の伏流水をたっぷり飲んだ乳牛の乳も一段と美味しく、良質の生乳と赤部代表は考えたからである。また「こだわりの農産物を作っている」のもその一つの理由とのこと。

 白カビタイプのカマンベールと直径30センチメートルもあるブリーチーズをつくっている。ほのかな甘みとクリーミーな味わい、上品な風味が特徴で、熟成が進むほどにまろやかにトロリと柔らかくなる。


十勝野フロマージュのショーウインドー(左が「ビーンズカマンベール」)

 十勝産の生乳と十勝産の農産物で誰も作ったことのないチーズを造ることを目指して取り組み開発した「ビーンズカマンベール」。本物のナチュラルチーズを食べて欲しいという想いから、開発した第一段が大好評のこの商品である。ナチュラルチーズの中に地元中札内特産の白目大豆「大袖の舞」を入れ熟成させた。カットすると中から豆が現れ、サクサクとした味わいが楽しめる。白目大豆は見た目も良い。同商品は、第9回北海道加工食品フェア・地域加工食品コンクールで奨励賞を受賞している。十勝産大豆を入れて本来チーズには含まれていない食物繊維を加えたアイディアと、チーズそのもののおいしさが評価された。乳酸菌が生きているナチュラルチーズが、よりバランスのとれた食品に生まれ変わった。


十勝野フロマージュ店内
*赤部さんには、白髪の外見や年を忘れさせる情熱があふれている

 工房を設立してから3年目の冬、次男赤部達哉さんが新たな一員として加わり、親子3人でさらにパワーアップされ、飛躍が期待されている。

 こだわりの製法によって放牧牛乳の風味を生かした「若草のカマンベール」が生まれた。この製品は牧草の育つ5月から10月の生産される放牧牛乳だけを原料として製造された、季節限定の美味しさを詰め込んだものである。北海道の遅い春を待ちかねたように、太陽と大地の恵みを沢山受けて成長した若草をいっぱい食べた牛の生乳は、若草に含まれるβ―カロテンによって黄色になり、ビタミンや機能性脂質、共役リノール酸などを豊富に含んでいる。芳醇な風味がする季節限定品である。

 このチーズ製造に使用している生乳は、放牧酪農家、高野英一氏による「集約放牧」により得た生乳を使用している。放牧地を小さく区切って、1日から2日で牧草を残さずに牛が食べるようにしている。その後、区画を次々と移動させて、2週間ほどたって一回りすると、初めの区画でまた伸び出してきた草を食べる。このような集約放牧では、牛はいつも栄養豊富な短い草「若草」を沢山食べることができる。


若草のカマンベール

 最近、人気のチーズは生クリームを配合した「ハートのかたちのフロマージュ」。白カビタイプで舌触りがなめらかで食べやすく、贈答用にも適している。特に、バレンタインデー前には注文が殺到するそうだ。チーズは一般に不規則な形だと均質な熟成が難しく、ハート型も高度な技術が必要なため日本では珍しい。

 また、生乳、生クリームと寒天、砂糖に同工房のカマンベールチーズを加えたカマンベール味のプリンを開発販売している。カマンベールの濃厚な味を残しながらもくせがなく食べやすいと評判である。

 平成16年7月からはアイスクリームの製造販売も始め、特定牧場の搾りたて生乳を使用したアイスクリームは、カマンベールチーズ入りをはじめ、地元産のきな粉、いちごのほか抹茶、ゴマ、チョコレートなど10数種類が用意されている。


十勝野フロマージュ製品群

 一方、チーズ加工の過程でできるホエイの有効利用も手がけている。ホエイは処理に困る廃棄物になりがちだが、良質な栄養分が含まれており、赤部さんが養豚農家(笠松 直さん)にチーズホエイを分けたところ、「豚の毛のツヤが良くなり育ちが早くなった」と喜ばれた。また、チーズホエイを与えた豚は健康に育つため、肉が柔らかく、脂身が均一に広がって甘みが強いなど、美味しいと人気も急上昇している。ミルクから始まる「エコ」の輪、今まで捨てるしかなかった「ホエイ」が大活躍している。十勝「ホエー豚研究会」も立ち上がっているそうだ。

 チーズの生産量が増えるとホエーの排出量も増加することから、バイオリサイクルの観点からも持続的「ホエー豚」の生産がさらに軌道にのり、ブランド化が確立されることを願っている。


おわりに

 わが国のチーズ需要は欧米と比較すると10分の1と小さい。日本人の嗜好に合ったナチュラルチーズの製品開発などによりチーズの選択肢が広がっていけば今後のチーズの需要は引き続き拡大することが期待される。

 チーズは風土の産物ともいわている。姿、味、香りもそれぞれ違いがある。

 愛情たっぷりの手造りチーズを、日本人の嗜好に合わせて造り続けている国産の生産者。彼らのチーズも決して外国のチーズに劣らない素晴らしい個性味あふれるチーズである。

 赤部さんには、白髪の外見からは想像できない年齢を忘れさせる情熱があふれている。昨年夏には、十勝野フロマージュのほか、十勝管内でナチュラルチーズを生産している共働学舎新得農場、エムシーコーポレーション、NEEDS、ランランファームの5工房が共同販売などを目的とした有限責任事業組合(LLP)を設立した。5工房はこれまでも物産展に共同出展してきたが、今後はそのほか、5工房で生産した異なる種類のチーズを詰め合わせるギフトセットも開発するそうで、品揃え豊富で個性的な十勝のチーズをPRすることで、乳製品の消費が一層拡大することを願っている。

 酪農乳業界の生乳消費量の低迷が続く中で、チーズ増産は酪農近代化基本方針の方向に合致、乳業3社は北海道に国産ナチュラルチーズ工場の新増設をスタートさせた。これは酪農乳業の発展にためには大きな意義をもつものと考えられる。

 今後は美味しさの原点をみつめて、伝統的なチーズ造りとの比較をしながら、日本のオリジナルチーズが育つことを願っている。さらに、大手メーカーの技術と機能性研究等に裏づけされた、「おいしさ」と「健康機能」を合わせ持つ新規国産ナチュラルチーズの開発が今後ますます活発になることを信じてやまない。

 最後に、今回の調査において大変お世話になった関係各位に、心から厚く感謝申し上げる。


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