★ 機構から


- 食育は、地域の食材から -
         平成18年度「東北地域食育フォーラム」の報告

                                                                                総括調整役    飯田 道夫
                                                                                東京事務所長 三山 良和


 

 当機構は、東北農政局と共催して、昨年12月10日(日)に、山形市において「東北地域食育フォーラム」を開催しました。以下、その概要を紹介します。


フォーラムの趣旨

 このフォーラムは、消費者などの食や農についての理解や正しい知識を一層深め、家庭、学校、職場などにおける食育の推進と農畜産物の消費拡大を図ろうとするもので、今回は特に若い世代の地域に根差した食育、食の専門家への興味を誘起することを目的に、食の専門家が取り組んでいる地産地消、地元食材を利用した料理活動、学校給食などの実践例を紹介することにしました。

 フォーラムでは、日本料理「分とく山」総料理長の野崎洋光氏を講師とする基調講演と地元の食育活動家・専門家が加わったパネルディスカッションを実施しました。さらに、フォーラムに先立って、野崎氏に、地元高校生を対象とした調理の実演・指導をしていただきました。


野崎洋光氏
福島県出身、日本料理「分とく山」総料理長。
アテネオリンピックの野球日本代表チームの食事を担当。
素材そのものの味を生かした料理と「食の原点は家庭料理にあり」という考えに基づき活動し、伝統の日本料理界に 新風を吹き込んでいる。

 

地元農畜産物を使った調理実演

 午前10時から山形市内の山本学園高等学校の調理室において、地元高校生(山本学園高等学校家庭科、山辺高等学校食物科、明成高等学校調理科)ら80名の参加を得て、講師の野崎氏による地元農畜産物を使った調理実演を実施しました。

 料理品目は、フライパンで作れる「和風ローストビーフ」とクリームチーズを使った「チーズ茶碗蒸し」とし、食材は、地元のJA全農山形(牛肉、卵、大根など野菜)、(財)蔵王酪農センター(チーズ)、JFみやぎ漁連(わかめ、のり)に提供していただきました。

 最初に、野崎氏から、メニューと素材が紹介されて、あざやかに調理が行われ、調理の際に気をつけるべきポイントなどが生徒たちに説明されました。



野崎氏による調理実演


 その後、生徒たちは各テーブルに分かれて調理に取りかかりました。野崎氏は、各テーブルを回りながら、生徒たちに、料理方法のコツだけでなく、乳製品や野菜の由来、牛肉や漬け物、わかめなどの素材の特徴などをわかりやすく説明しながら指導しました。

 生徒たちの中には、手際よくできたグループと時間のかかったグループがありましたが、40分くらいで料理を完成しました。



料理に取り組む生徒たち


 野崎氏は、締めくくりの講評の中で、山形の生徒たちがとても真剣に取り組んでくれたことに感心したこと、地元の食材を使って家で料理することが大切であること、先人の知恵で作ってきた日本の食生活は栄養のバランスが良く世界で一番進んでいること、山形の皆さんが山形に生まれたことを誇りにして山形の料理を作ってくださいなどと激励しました。

 その後、会場の参加者全員で完成した料理の試食を行い、舌鼓を打ちました。




チーズ茶碗蒸し・和風ローストビーフ


野崎氏の基調講演

 午後は、会場の山形市保健センター大ホールに満員の約340名(消費者、学生、学校関係者、農業関係者、食品産業、行政関係者など)の参加を得て、「東北地域食育フォーラム」を開催しました。

 冒頭、主催者から東北農政局の武田消費・安全部長と当機構の成田理事があいさつした後、野崎洋光氏による「食育は、地域の食材から」をテーマとする基調講演が行われました。

 野崎氏は、講演の中で、山本学園高校での高校生の熱心な調理の様子を紹介した後、○健康のために食育が必要で一番大切なのは知識ではなくて知恵である、○西洋文化はスプーンで飲み込む文化だが、日本の食文化はよくかむ文化であり、それによって頭が活性化する、○日本の食文化は先人たちがつくってきた知恵であり、「身土不二」(周囲5里以内のものを食べていくと長生きできる)と言うように、地域の風土に合った鮮度のいいものを調理して食べることが体にいい、○家庭で作って食べることが大事であり家庭においしさがある、○食に関しては年配者の知恵が大事であり、地域の食材をバランス良く料理する知恵を地域の人に伝えていってほしいことなどを話しました。



講師の野崎氏

 

パネルディカッション

 基調講演の後、「食育にどう生かす、山形の食材、山形の自然」をテーマにパネルディカッションが行われ、コーディネーターの平本福子氏(宮城学院女子大学食品栄養学科教授)の司会によって、3名のパネリストから、山形の食材を生かした食育活動の紹介と活発な意見交換が行われました。

【松田栄子氏(山本学園高等学校教諭)】
 山形県朝日町のNPO法人朝日町エコミュージアム協会での用水路、棚田、環境を守る「水と暮らしの探検隊」、地元の新鮮な産物を提供する産直市「ふれあい市場サンに市」の活動、地元食材を生かした学校給食、女性井戸端会議、家庭科授業での取り組みなどを紹介し、まず自身がいろいろな体験をして、その体験で得た感動を伝えていきたい、子供達が食の大切さを理解し食について関心を持つように学校や家庭で体験がたくさんできる環境をつくってあげたいなどと話しました。



平本氏、松田氏

【野崎洋光氏】
 地元の新鮮な食材を食べることが体にいいこと、福島県の山間部で育ったので田舎の原風景を持っており、季節感を話せることが料理作りにも役立っていること、そして東北人は自信を持って地元の料理を作ってくださいなどと話しました。

【奥田政行氏(イタリアンレストラン「アル・ケッチャーノ(鶴岡市)」オーナーシェフ)】
 鶴岡市を食で元気にしようと思って地場産の新鮮な食材を組み合わせた料理を作っており、庄内の生産者、消費者、料理人が食について語り合う場を設けるなどの活動を重ねており、「食の都庄内」親善大使として庄内、山形県が食の聖地になれることを夢に頑張っていること、鶴岡市は学校給食の食材を地元産でまかなう日を設けるなど学校給食の先進地であることなどを話しました。



野崎氏、奥田氏

 さらに、コーディネーターの平本氏は、会場の生徒からの発言や質問アンケートを織り交ぜながら、食に関する「人材」を育てるために必要なことなどに議論を展開させ、野崎氏、奥田氏からは、異口同音に、小さいときに育った環境がその人の原風景として残るので、小さい頃の食体験やふるさとの生活、光景を体験として数多く蓄積するかが大切だという発言がありました。

 最後に、やまがた食の安全・安心推進連絡会議食育部会の古田久子会長により、フォーラムでの話を踏まえて地元の産物を使って食育活動を進めていきたいとのあいさつがあり、閉会しました。

※フォーラムの詳細は、当機構HP(http://www.alic.go.jp/)及び東北農政局HP(http://www.tohoku.maff.go.jp/)に掲載しています。


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