広島県/仙波 豊三
明治33年(1900年)に創立した広島県立畜産試験場は、その名称を今年度から広島県立総合技術研究所畜産技術センターと改称し、県立の環境、工業、農林水産などの8部門にわたる各種技術センターを統合した総合技術研究所の統括下に組み込まれ、縦割りの枠を取り払い、横断的、融合的に時代の要請に対応することになった。 これに先立つ行財政改革の一環で県行政機関の現業部門の廃止という大なたがふるわれ、100年続いた畜産の現業部門(飼料生産、家畜飼養)も例外ではなく関係職員の配置転換や業務の外注が進められた。これと併行して作業の機械化による省力化を進めるため、築100年の使用に耐えた木造の牛舎をすべて建て替えることとし、給餌、搾乳およびふん尿処理のすべてを自動システムにする鉄骨牛舎約1,200平方メートルが2億6,500万円を投じて建設された。そこで広島県では、初めての搾乳ロボットが5月22日に稼動を始めた。稼動を始めて1カ月余の馴致期間をへた今、無人のフリーストール牛舎の一角の搾乳室へ搾乳牛が餌を求めて入ると、レーザーが乳頭の位置を探し1本ずつティートカップを装着して搾乳が始まる。もちろん装着前には乳房、乳頭の洗浄・マッサージを行い、搾乳後は消毒液の噴霧をして終わる。気になる乳質のチェック・分別機能も有し、それら一連の作業は熟練の作業員が行うように的確で、その間牛も心地よさそうに、極めて円滑に作業が進み見事である。搾乳ロボットは1台で、夜間を通じて24時間稼動しており、50頭の搾乳牛が2回ずつ搾乳室へ入って搾乳が出来る。従来現業職員が搾乳のために早出をしたり残業をして搾乳時間の調整をしていたが、そのような配慮も不要になったとのことである。 搾乳ロボットは、近県(兵庫を含む中国各県)で既に7台が導入され稼動しているようであるが、広島県では、初めてでこれが畜産技術センターで実用され、課題が整理解決されて、大規模化する酪農経営の支援技術として役立つことは間違いないようである。工業技術センターも同一組織の中で横断的に課題の解決に協力してもらえる体制にあることも幸いである。外国で開発され日進月歩のコンピューター制御技術を活用する分野であれば、よりよい装置をより安く供給することも視野に研究が進められることを期待したいものである。
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