◎今月の話題


牛乳をもっと飲もう
―My牛乳のすすめ―

酪農学園大学短期大学部
准教授 筒井 静子

消費者の望む牛乳とは

 果たして消費者はどんな牛乳を望んでいるのか?酪農大生・一般市民それぞれ70名を対象とした調査(2006年10月)では、一般市民は「おいしい低脂肪牛乳」と「安全な牛乳」への要望が強く、学生の場合はさらに、「後味がすっきりした牛乳」、「一本で一日に必要なカルシウムが摂取できる牛乳」、「運動後に飲める牛乳」といった要望が加わった。

 このように消費者の要望は多様であることから、いろいろな牛乳を飲み比べて『My牛乳を探そう!!』といった取り組みを考えてはいかがだろうか。イベントで飲み比べコーナーを設けても良いが、各社が協力し、数種類のバーコードを集めると牛柄グッズや乳製品が当る(・・・・・・・・・・・・)キャンペーン(・・・・・・)を展開するのも効果があるのではないかと思う。学生の場合は価格で牛乳(低脂肪牛乳)を選ぶことも多いが、飲み比べてみると牛乳の味にも個性があることが分かってくる。そこで探したそれぞれの牛乳を、普段飲むのはA牛乳、カレーを食べる時にはB牛乳、運動の後にはC牛乳というように飲用の場面ごとに使い分けるのもおもしろい。

 本学において10種類の牛乳で官能評価を行ったところ、「第一印象」と「新鮮感」の評価が高い牛乳は、「総合評価」においても高い評価が得られる傾向にあった。牛乳のおいしさの基準は、個人のし好に左右されるのは否定できないが、口に含んだ時の第一印象で決まる(成分、殺菌温度、脂肪球の大きさ、どのような容器であるかなど)ともいえるのではないだろうか。これを踏まえて生産者や業界の方々には、自信を持って『My牛乳の生産』に取り組んでいただきたいと願う。


食生活における牛乳摂取の現状

 ここ数年の牛乳の消費量(前出調査)は、学生の30%が「減った」と答えており、その理由の大半が「学校給食がなくなって飲む機会がないから(・・・・・・・・・)」であり、「他の飲料を飲むから」よりも高率となった。さらに大学生の一人暮らしの場合は、経済的な理由も重なり、大型パックの牛乳をいつも冷蔵庫にストックしておくことなどは考えにくい。また3日間で食べたものを絵に描いてもらったところ、特に男子学生では、食事は1日に一食か二食で、納豆ご飯、卵かけご飯、モヤシ炒め、カップめん、パンだけといった状態のため、まともな食事とはいえなかった。この結果から、まず食生活の基本は多様な食品をバランスよく食べることが大切であるが、ここに牛乳を取り入れると簡単に栄養のバランスがとりやすくなることをもっと積極的に啓発する必要を感じた。実際に(社)日本酪農乳業協会主催の牛乳・乳製品利用料理コンクールに学生が応募した作品の中に、カップめんに沸騰した牛乳を加えて3分間待つだけの『酪農ラーメン』があり、エネルギーと栄養素の充足率を通常の作り方の場合と比較してみると、エネルギーの増加分はわずかであったが、不足していたたんぱく質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンB2などの微量栄養素が大幅に増加することが分かった。


牛乳をもっと飲もう

 牛乳の消費拡大対策は現在のところ思うような成果は得られていない。今後、牛乳の消費拡大を推進していく中で、牛乳は優れた食品であるということをもっと一般消費者の身近にあるマスメディア(タウン情報誌など)を介して啓発する必要があると考える。さらに、周知の牛乳の良さに加え、少し違う視点から牛乳の良さをアピールしてはいかがだろうか。若い女性の中にはダイエットのために牛乳を摂取しないケースもみられるが、牛乳は飲んでも太らないばかりか、牛乳を多く飲んでいるグループの方が、牛乳を飲まないあるいは牛乳摂取の少ないグループより体脂肪率が低いとの報告があり、「牛乳を飲むと太る」という誤解を解くには有効である。また、よしき皮膚科クリニック銀座の吉木伸子院長が、12週間、3-A-Day(牛乳・ヨーグルト・チーズをどれでも自由に1日3回または3品摂取)を実践した人と実践していない人の肌の状態を比較して、牛乳・乳製品の肌への効果について報告しているが、その摂取効果について驚くほど良い結果が示されたという。正しい知識が得られる本がベストセラーになれば牛乳消費の応援団としてとても心強いものである。また、牛乳は優れた栄養素を総合的に得られるにもかかわらず安価な食品であることを考え合わせれば、高価なサプリメントに頼る必要性もなくなる。


牛乳をもっと食べよう

 3-A-Dayを実現可能なものにするため、その一回分を料理に使うことを提案する。普段のみそ汁に牛乳を加えるだけのミルクみそ汁や仕上げの調味液に牛乳を使ったおこわ、出し汁の代わりに牛乳を使って仕上げるうの花や茶碗蒸し、あるいはサバや里芋のみそ煮に牛乳を加えるなどは、和風料理にも牛乳の相性の良いことが分かってもらえる使い方だと思う。これらの料理については本学の実習で実施しているが、学生からは、おいしいので牛乳嫌いでも食べられると思うとのコメントもあった。このように牛乳・乳製品を料理にもどんどん活用して、本来とは一味違った味わいを楽しみながら健康に毎日を過ごしていただきたいと考える。


筒井静子(つついしずこ)

プロフィール

酪農学園大学短期大学部准教授
1976年酪農学園短期大学卒業。牛乳乳製品を日常の料理に利用することを提案している。著書は「とっておきのミルク料理」等。平成17年度より酪農学園大学短期大学部助教授


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