主要畜産物の需給動向 |
◆牛 肉◆
●●●推定出回り量、国産品増加も輸入品減少で前年同月をわずかに下回る●●● 農林水産省「食肉流通統計」によると、平成20年1月の牛肉の生産量は27,021トン(前年同月比9.5%増:部分肉ベース)となり、前年同月をかなりの程度上回った。和牛、乳牛(交雑種含む)ともにと畜頭数が前年同月をかなりの程度上回っており、生産量もそれぞれ9,407トン(同8.5%増)、17,064トン(同10.3%増)となった。また、国産品の推定期末在庫量は前年同月を大幅に下回る10,401トン(同16.0%減)となっており、この結果、国産品の推定出回り量は27,423トン(同15.5%増)と、前年同月をかなり大きく上回った。POS情報によるレジ通過客数千人当たりの牛肉購買動向を見ると、11月から1月にかけて豪州産と国産牛が前年同月を下回って推移したことに対し、和牛は前年同月をかなりの程度上回って推移しており、量販店などを中心として年末年始に和牛の販売に重点を置いたものと思われる(図1)。
一方、輸入品について見ると、豪州の生産量減少や豪ドル高を背景に、輸入量が26,624トン(同31.3%減)と前年同月に比べ大幅に減少したことから(図2)、推定期末在庫量も17カ月ぶりに前年同月を下回る62,335トン(同2.6%減)となり、推定出回り量は32,477トン(同11.0%減)となった。
この結果、国産品と輸入品を合わせた期末在庫量は、16カ月ぶりに前年同月を下回る72,736トン(同4.8%減)、推定出回り量は59,900トン(同0.6%減)となっている。このような中、ミンチ材となるトリミングなど部位によっては品薄感が出ているものもあり、末端の需要が特定の部位に偏っている側面もうかがえる。 ◆豚 肉◆ ●●●19年の子取り用雌豚頭数、2年連続で減少●●● (社)日本養豚協会の「養豚経営動向調査(子取り用雌豚飼養頭数と戸数)」によると、平成19年8月1日現在の子取り用雌豚の飼養頭数は、877,990頭と前年を2.2%下回り、2年連続で前年同月を下回った。16年度以降、豚枝肉卸売価格は1キログラム当たり470円(東京・省令)を上回る高水準で推移し、養豚農家の粗収益は増加しているものの飼料価格の上昇などによる生産コストの増加に加え疾病問題や環境問題、高齢化などが影響したものと思われる。 これを子取り用雌豚の飼養頭数規模別に見ると、全体の約3割を占める1,000頭以上の飼養規模層が前年の頭数に比べ5.9%減少する一方、中規模層である200頭以上500頭未満の層、500頭以上1,000頭未満の層がそれぞれ3.5%、1.9%前年を上回った。(図3)
また、14年を基準に子取り用雌豚飼養頭数の推移を地域別に見ると、全体の3割強を飼養する九州、沖縄地域では、初めて前年を下回って292,431頭(前年同月比5.0%減)となった。特にこの地域でも、1,000頭以上の階層の頭数が前年に比べ15.2%減少し、規模別層の中で最も大きく前年を下回り全国の飼養動向に影響を与えている。 一方、17,18年度と連続して減少を続けていた比較的飼養頭数の少ない近畿地域および北陸地域では、それぞれ10.6%、3.8%の頭数の増加が見られた。これらの地域内の動きを見ると近畿地域では100頭以上1,000頭未満の階層で頭数の増加が見られ、北陸地域では1,000頭以上の階層で大幅な増頭が見られた。(図4)合わせて全国の約半分の頭数を占める北海道、関東地域においては、全体的に横ばいであったが、北海道では1,000頭以上の大規模層が、関東地域では500頭以上1,000頭未満の中規模層が増頭傾向にあった。
●●●国産品在庫量、ひっ迫感強まる1万2千トン台に●●● 「食肉流通統計」によると平成20年1月の豚肉生産量は、75,717トン(前年同月比0.3%増)と前年同月をわずかに上回った。しかし、平均枝肉重量は78.2キログラム(同0.3%減)と5カ月連続で前年同月を下回り、19年度平均で76.7キログラム(前年同期0.2%減)となった。また、2月の東京市場豚肉省令価格(速報値)はキログラム当たり563円となり8カ月連続で前年を上回って推移し、引き続き末端の引き合いは強い傾向にある。このような中、推定期末在庫の推移をみると19年10月に在庫全体が18カ月ぶりに前年同月を上回ったのに対し、1月の国産品在庫量は、18年8月以降18カ月連続で前年同月を下回り、前年同月比25.7%減の12,427ンとなった。国産品在庫量が1万2千トン台となるのは平成9年9月以降10年ぶりで、ひっ迫感が増している。(図5)
◆牛乳・乳製品◆ ●●●平成18年の酪農経営の農業所得は前年比21.9%減●●● 農林水産省が公表した平成18年個別経営の営農類型別経営統計によると、酪農経営農家(全国)1戸当たりの農業粗収益は3,407万9千円(同1.7%減)と減少したことに加え、農業経営費が2,819万8千円(同3.8%増)とやや増加したことから、農業所得は588万1千円(前年比21.9%減)と大幅に減少した。農業粗収益の減少について農林水産省は、搾乳用育成牛の評価額が低下したことや、乳価の下落により生乳収入が減少したことなどを要因としている。18年の一戸当たりの生乳生産量は、311.3トン(同1.7%増)と増加したものの、生乳収入は2,561万3千円(同0.8%減)とわずかに減少している。また、農業経営費の増加要因としては、飼料価格の上昇による飼料費の増加や動物費の上昇が挙げられる。 図6で農業経営費の内訳を見ると、全体の43%を占める飼料費が1,197万1千円(前年比4.4%増)、15%を占める動物費は418万3千円(同9.6%増)となり、ともに前年と比べ増加した。また、原油価格が上昇したことから、光熱動力費も前年比7.7%増の125万9千円なった。
●●●20年度の生乳計画生産は、3年ぶりの増産型●●● 農林水産省「牛乳乳製品統計」によると、平成20年1月の脱脂粉乳の生産量は、前年をわずかに下回る17,261トン(前年同月比0.9%減)、推定期末在庫量は前年同月を大幅に下回る4万1千トン(同39.8%減)となった。この結果、推定出回り量は、前年同月をかなりの程度上回る1万4千トン(同8.9%増)となった。国産品の品薄感に加え、国際価格の上昇などを受けて、大口需要者価格は上昇傾向で推移しており、1月は25キログラム当たり13,300円(同2.3%高)となっている。また、バターの1月の推定出回り量は6千トン(前年同月比7.8%増)と前年同月をかなりの程度上回ったため、推定期末在庫量は前年同月を大幅に下回る2万トン(同18.4%減)となった。需要の増加などから、バターの大口需要者価格は6カ月連続で値上がりし、1月は前年同月比4.2%高の1キログラム当たり984円となった。さらにチーズやクリームの需要も引き続き好調に推移している。特に、チーズについては新設乳業工場などの稼働による増産態勢が本格化することから、今後の乳製品需要の増加が見込まれる。 このような中、中央酪農会議は20年度の生乳計画生産を3年ぶりに増産型に転換し、生産目標数量を前年比1.4%増の787万7千トンとした。地域別にみると北海道が前年比103%、都府県が同100%となっている。 また、飼料穀物価格の高騰による生産コスト増加で厳しい酪農経営を反映して、ホクレンは20年度のプール乳価を1キログラム当たり5円10銭引き上げることで乳業メーカーと合意しており、これを受けて、大手乳業メーカーも牛乳価格などの値上げを実施することとしている。 ◆鶏 卵◆ ●●●19年の鶏卵生産量、前年比4.5%増加●●● 農林水産省「鶏卵流通統計」によると平成19年下半期(7〜12月)の鶏卵生産量は、1,311,634トン(前年同期比4.2%増)となった。上半期分の1,287,577トンと合わせて19年の生産量は前年を約11万トン上回る2,599,211トン(前年比4.5%増)となり、3年ぶりに生産量が増加した。(図7)
都道府県別の生産量を見ると、18年に比べ増産となったのは24県、減産となったのは23県であった。(図8)増産県のうち、17年の鳥インフルエンザ発生から回復した茨城県に加えて千葉県の増加は著しく、それぞれ6万トン、4万トンの増産となった。
採卵用素ひなのえ付け羽数の推移を見ると17年は増羽傾向であり、続く18年度も前年並みであったことから、採卵鶏の供用期間から推察すると、鶏卵生産量は今後もしばらく増産傾向にあるものと思われる。 ◆飼 料◆ ●●●大豆油かす、平均輸入価格は前年同月を大幅に上回る●●● 配合飼料原料の約15%を占める大豆油かすの輸入(CIF)価格が上昇している。財務省「貿易統計」によると、平成19年1月の大豆油かす(関税品目番号:2304.00-000)の輸入量は、194,876トン(前年同月比12.9%増)、輸入価格はトン当たり46,859円(同45.1%高)となり、それぞれ前年同月を上回った。この結果、平成19年度の輸入量の累計(4〜1月)は1,436,997トン(前年度比10.0%増)、平均輸入価格は同40,642円(同30.7%高)となっている(図9)。
19年度の輸入量の累計を国別に見ると、インドが498,500トン(前年同期比8.6%増)、中国が471,531トン(同58.1%増)、米国が384,196トン(同1.3%減)となっている(図10)。中国産の増加が目立っているものの、12月、1月は前年同月を大幅に下回っており、それぞれ20,797トン(前年同月比61.8%減)、27,653トン(同46.6%減)となっている。これは、中国の畜産物需要の増加に伴い飼料需要が高まっていることから、中国国内で大豆油かすの引き合いが強く輸出量が減少したことが要因との見方もある。一方、インド産は、12、1月と前年同月を大幅に上回る数量が輸入されており、それぞれ110,342トン(94.3%増)、115,594トン(23.9%増)となった。インド産の輸入価格を見ると、上昇傾向で推移しているものの、品質面で競合する中国産の価格を下回っており、日本の実需者の需要の一部がインド産にシフトしていたことがうかがえる。
全農が四半期ごとに公表している配合飼料供給価格は、19年度第4四半期(1−3月)に大豆油かすなどたんぱく質原料の値上がりを要因の1つとして、前期から3,900円の値上げを実施しており、大豆油かすの値上がりが配合飼料価格に及ぼす影響が懸念される。 ●●●北海道での増産を受けて、 そのほか、牧草は2,880万5千トン(同1%減)、ソルゴーは115万5千トン(同3%増)となった。
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