主要畜産物の需給動向

◆牛 肉◆

●●●肉用子牛取引価格、黒毛和種は3カ月連続で前年同月を下回る●●●

 当機構調べによる平成19年11月の肉用子牛取引価格(雌雄平均)は、黒毛和種が1頭当たり49万2千円(前年同月比5.9%安)、ホルスタイン種が同9万6千円(同21.1%安)、交雑種が同19万9千円(同21.9%安)となり、軒並み下落した。

 特に取引価格の下落が続く交雑種は、10月の取引価格が4年振りに20万円を下回り、19年度(4-11月)の平均価格は前年同期を14.2%下回る21万9千円となっている。価格の下落が続く一方で、取引頭数の年度累計(同)は56,300頭(前年同期比6.3%増)とかなりの程度上回っている。これは、生乳の減産を背景に乳用牛への黒毛和種の交配が増加していることが要因の一つとみられ、(社)日本家畜人工授精師協会調べによる人工授精頭数に占める黒毛和種授精牛の比率も18年度以降3割を超える高い水準が続いている。

 黒毛和種の取引価格は、18年夏以降、50万円台を超える高値が続いたが、19年度はおおむね50万円を下回って推移しており、9月以降3カ月連続で前年同月を下回った。しかしながら、子牛価格は依然高止まりの傾向にあり、飼料価格や生産資材の値上がりが続く中、子牛取引価格の高値が続くことにより肥育経営に与える影響が懸念される。

図1 子牛取引頭数と価格(雌雄平均)の推移

交雑種

資料:機構調べ

黒毛和種

資料:機構調べ


◆豚 肉◆

●●●チルドポーク、国産品と輸入品の価格差が拡大●●●

 農林水産省生産局の肉豚生産出荷予測によると平成19年12月の全国出荷頭数は前年同月比100、20年1〜3月までは99と予測している。19年4〜11月までの生産量と19年12月〜20年3月までの出荷予測頭数から19年度の豚肉生産量を推測すると87万7千トンとなりほぼ前年度並みとなる。

 総務省「家計調査」によると豚肉の消費量は平成16年度以降増加しており、当機構のPOS調査でも増加傾向となっている。

 一方、輸入量の最近の推移をみると、19年度累計(4-11月)で506,258トン(前年同期比3.9%増)となっている。このうち、冷蔵品は前年同期を6.5%上回る160,319トンが輸入されている。

 このような中、12月の東京・省令価格は、1キログラム当たり527円(前年同月比9.1%高)となり、19年度平均(4-12月)でも516円(前年同期比5.9%高)と高水準で推移している。

 そこで、量販店での取扱量が多いロース肉(冷蔵品)の小売価格(機構調べ)の推移についてみると、19年度平均(4-11月)、通常価格で100グラム当たり輸入品が169円(前年同期比1.2%安)とわずかに減少しているのに対し、国産品は同250円(同1.6%高)とわずかに増加している。国産品価格の上昇は、国産志向の強まりを追い風に15年以降続いており毎年2〜4%程度の伸びを見せている(図2)。

 先月号の当誌「需給解説」(2008年1月号、P21)で紹介した「量販店の今後の豚肉販売見通し」(当機構アンケート調査)を見ても、全ての量販店が豚肉の取扱量を増加または現状維持としており、さらに国産豚肉増加の意向を示す量販店が圧倒的に多かった。量販店では銘柄豚肉、国産豚肉、値頃感のある輸入豚肉の3種類を置くことが一般的であり、アメリカンポーク、カナダポークなどの輸入豚肉は、量販店の豚肉販売ケースの定番になっているが、国産豚肉と輸入豚肉の価格の2極化がますます顕著になっている。

図2 チルドロースの小売価格(通常価格)の推移


資料:機構調べ「小売価格」



◆鶏 肉◆

●●●鶏肉輸入量、3カ月連続で前年同月を上回る●●●

 貿易統計によると11月の鶏肉輸入量は33,991トン(前年同月比15.7%増)となり、3カ月連続で前年同月を上回った。

 鶏肉輸入品は18年中頃に国内外での鳥インフルエンザ発生などによる先行き不安から在庫量が積み増しされたが、輸入鶏肉調製品の代替などで業務筋の需要も落ち着き、荷余り感が出てきたため、18年後半から19年8月までは前年度を大幅に下回る月が続いた。これにより、輸入品の推定期末在庫量は徐々に取り崩された。

 しかし、年末の最需要期を迎え、国産鶏肉が今までにない高水準な価格で推移したことなども影響し、9月以降は前年同月を上回る輸入量となったものと思われる。

 このような中で輸入量が増加している国がフィリピンで、19年度累計(1−11月)の輸入量は、丸鶏60トン、骨付きもも65トン、角切り2,400トンで18年度累計に比べそれぞれ8倍、35倍、7倍と輸入量を伸ばしている。主要国のブラジルと米国の輸入量には及ばないが、チリやアルゼンチンなどを抜いて19年度は輸入量第3位の相手国となった。わが国はフィリピンと18年9月にEPA協定を締結し、骨付きもも肉を除き特恵枠として関税割当数量と税率が設定されている。生産体制や輸入条件などが整えば、輸送距離がより近いことから今後の輸入量増加が予想される。

図3 鶏肉輸入量と輸入品品在庫量の推移


資料:財務省「貿易統計」、「推定期末在庫」機構調べ


◆牛乳・乳製品◆

●●●バターの品目別在庫量、前年同月を大幅に下回って推移●●●

 牛乳乳製品統計によると、平成19年11月の生乳の乳製品向け処理量は、256,551トン(前年同月比3.0%増)となり、2カ月連続で前年同月を上回った。この結果、年度累計(4〜11月)も前年同月を0.4%上回っている。

 11月の乳製品の生産量を品目別に見ると、業務用向けが好調なクリームが9,378トン(同7.5%増)と23カ月連続で前年同月を上回っている。これに対し、バターと脱脂粉乳は前年同月割れが続いており、それぞれ4,873トン(同3.5%減)、12,278トン(同2.1%減)となった(図4)。特にバターは18カ月連続で前年同月を下回った結果、品目別バター在庫量(国内乳業メーカー等14社の合計)は平成13年度以降最も低い水準となる14,412トン(同34.8%減)となった。主要メーカーは、業務用の新規の販売を控える一方で、家庭用の生産量確保を行っているものとみられ、品目別の在庫量は、業務用バラが9,223トン(同43.2%減)、業務用その他が3,789トン(同17.8%減)、家庭用が1,398トン(同8.8%増)となり、家庭用のみが前年同月を18カ月ぶりに上回った(図5)。

 在庫量の減少による需給のひっ迫感が高まったことを背景に、バターの大口需要者価格も少しずつ値を上げている。大口需要者価格は、17年度以降キログラム当たり940円台で推移していたが、19年10月に4年半ぶりで960円台に乗ると、11月は前年同月比2.5%高の968円となった。

図4 乳製品の対前年同月比の推移


資料:農林水産省「牛乳乳製品統計調べ」
機構、(社)日本乳業協会調べ


図5 品目別バター在庫量と大口需要者価格の推移


資料:牛乳乳製品統計


◆鶏 卵◆

●●●19年鶏卵卸売価格(東京・Mサイズ)は169円/kgと前年をかなり大きく下回る●●●

 全農畜産販売部によると、平成19年12月の東京でのMサイズ1キログラム当たりの価格は186円(前年同月比17.7%安)となり、9カ月連続で前年同月を下回った。

 この結果19年の平均価格は169円(前年比8.2%安)となり2年連続で前年を下回る価格となった。鶏卵価格の低下は、128万8千トンと前年同期を4.8%上回る生産量(19年1−6月)の増加によるものと思われ、鶏卵生産量と卸売価格の負の相関が顕著に現れた形となった。

 19年は2月から7月までひなの出荷羽数が前年同月を上回って推移し、その後10月、11月も前年同月を上回っていることから年度内の生産量は増加傾向が予測される。


◆飼 料◆   

●●●第4四半期の配合飼料供給価格は、
大豆油かすなどの高騰を受けて3,900円の値上がり●●●

 全農は平成19年12月18日、平成19年度第4四半期(1〜3月)の配合飼料供給価格を前期に対して全国全畜種総平均トン当たり約3,900円の値上げをすると公表した。全農の飼料供給価格は、19年度第3四半期に5期ぶりの値下げとなったが、今期は飼料穀物の高騰、海上運賃の上昇などから再び値上げとなった。これを受けて、社団法人配合飼料供給安定機構などは第4四半期においてトン当たり7,800円の通常価格差補てん金を交付することを決定している。

 全農によると、値上げの要因として、米国におけるトウモロコシの国内および輸出需要がおう盛であること、今後は歴史的高値の大豆とトウモロコシの作付面積が競合する懸念があること、大豆油かすなどたんぱく質原料の高騰が見込まれることなどを挙げている。大豆相場(シカゴ定期)の11月平均価格(先物・期近)は前年同月を60.0%上回るブッシェル当たり1,046.25USセント(1,204円:1ドル=115.15円)となった。20年1月初旬には、史上最も高い水準となる同1,251.50USセント(1,441円)まで上昇している(図6)。この大豆の値上がりを背景に、配合飼料原料の約15%を占める大豆油かすの輸入価格も上昇しており、11月の輸入価格は11カ月連続で前年同月を上回るトン当たり43,535円(前年同月比34.3%高)となった。

 また、数量はわずかながら、トウモロコシの輸入相手先である中国、アルゼンチンにおいて、穀物等の輸出規制を導入しており、飼料穀物の需給にどの程度影響が及ぶか懸念される。アルゼンチン政府は2006年11月以降、過剰な輸出を回避するため、輸出承認の登録手続を停止しているが、中国でも2008年(1〜12月)の間、穀物等の輸出に際し輸出関税を課すことを既に公表している。


図6 穀物相場(シカゴ定期)の推移


資料:日本経済新聞


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