主要畜産物の需給動向 |
◆牛 肉◆
●●●肉用子牛取引価格、黒毛和種は3カ月連続で前年同月を下回る●●● 当機構調べによる平成19年11月の肉用子牛取引価格(雌雄平均)は、黒毛和種が1頭当たり49万2千円(前年同月比5.9%安)、ホルスタイン種が同9万6千円(同21.1%安)、交雑種が同19万9千円(同21.9%安)となり、軒並み下落した。
図1 子牛取引頭数と価格(雌雄平均)の推移
交雑種 資料:機構調べ 黒毛和種 資料:機構調べ ◆豚 肉◆ ●●●チルドポーク、国産品と輸入品の価格差が拡大●●● 農林水産省生産局の肉豚生産出荷予測によると平成19年12月の全国出荷頭数は前年同月比100、20年1〜3月までは99と予測している。19年4〜11月までの生産量と19年12月〜20年3月までの出荷予測頭数から19年度の豚肉生産量を推測すると87万7千トンとなりほぼ前年度並みとなる。
図2 チルドロースの小売価格(通常価格)の推移
資料:機構調べ「小売価格」 ◆鶏 肉◆ ●●●鶏肉輸入量、3カ月連続で前年同月を上回る●●● 貿易統計によると11月の鶏肉輸入量は33,991トン(前年同月比15.7%増)となり、3カ月連続で前年同月を上回った。鶏肉輸入品は18年中頃に国内外での鳥インフルエンザ発生などによる先行き不安から在庫量が積み増しされたが、輸入鶏肉調製品の代替などで業務筋の需要も落ち着き、荷余り感が出てきたため、18年後半から19年8月までは前年度を大幅に下回る月が続いた。これにより、輸入品の推定期末在庫量は徐々に取り崩された。 しかし、年末の最需要期を迎え、国産鶏肉が今までにない高水準な価格で推移したことなども影響し、9月以降は前年同月を上回る輸入量となったものと思われる。 このような中で輸入量が増加している国がフィリピンで、19年度累計(1−11月)の輸入量は、丸鶏60トン、骨付きもも65トン、角切り2,400トンで18年度累計に比べそれぞれ8倍、35倍、7倍と輸入量を伸ばしている。主要国のブラジルと米国の輸入量には及ばないが、チリやアルゼンチンなどを抜いて19年度は輸入量第3位の相手国となった。わが国はフィリピンと18年9月にEPA協定を締結し、骨付きもも肉を除き特恵枠として関税割当数量と税率が設定されている。生産体制や輸入条件などが整えば、輸送距離がより近いことから今後の輸入量増加が予想される。
図3 鶏肉輸入量と輸入品品在庫量の推移
資料:財務省「貿易統計」、「推定期末在庫」機構調べ ◆牛乳・乳製品◆ ●●●バターの品目別在庫量、前年同月を大幅に下回って推移●●● 牛乳乳製品統計によると、平成19年11月の生乳の乳製品向け処理量は、256,551トン(前年同月比3.0%増)となり、2カ月連続で前年同月を上回った。この結果、年度累計(4〜11月)も前年同月を0.4%上回っている。11月の乳製品の生産量を品目別に見ると、業務用向けが好調なクリームが9,378トン(同7.5%増)と23カ月連続で前年同月を上回っている。これに対し、バターと脱脂粉乳は前年同月割れが続いており、それぞれ4,873トン(同3.5%減)、12,278トン(同2.1%減)となった(図4)。特にバターは18カ月連続で前年同月を下回った結果、品目別バター在庫量(国内乳業メーカー等14社の合計)は平成13年度以降最も低い水準となる14,412トン(同34.8%減)となった。主要メーカーは、業務用の新規の販売を控える一方で、家庭用の生産量確保を行っているものとみられ、品目別の在庫量は、業務用バラが9,223トン(同43.2%減)、業務用その他が3,789トン(同17.8%減)、家庭用が1,398トン(同8.8%増)となり、家庭用のみが前年同月を18カ月ぶりに上回った(図5)。 在庫量の減少による需給のひっ迫感が高まったことを背景に、バターの大口需要者価格も少しずつ値を上げている。大口需要者価格は、17年度以降キログラム当たり940円台で推移していたが、19年10月に4年半ぶりで960円台に乗ると、11月は前年同月比2.5%高の968円となった。
図4 乳製品の対前年同月比の推移
資料:農林水産省「牛乳乳製品統計調べ」 機構、(社)日本乳業協会調べ
図5 品目別バター在庫量と大口需要者価格の推移
資料:牛乳乳製品統計 ◆鶏 卵◆ ●●●19年鶏卵卸売価格(東京・Mサイズ)は169円/kgと前年をかなり大きく下回る●●● 全農畜産販売部によると、平成19年12月の東京でのMサイズ1キログラム当たりの価格は186円(前年同月比17.7%安)となり、9カ月連続で前年同月を下回った。この結果19年の平均価格は169円(前年比8.2%安)となり2年連続で前年を下回る価格となった。鶏卵価格の低下は、128万8千トンと前年同期を4.8%上回る生産量(19年1−6月)の増加によるものと思われ、鶏卵生産量と卸売価格の負の相関が顕著に現れた形となった。 19年は2月から7月までひなの出荷羽数が前年同月を上回って推移し、その後10月、11月も前年同月を上回っていることから年度内の生産量は増加傾向が予測される。 ◆飼 料◆ ●●●第4四半期の配合飼料供給価格は、 全農によると、値上げの要因として、米国におけるトウモロコシの国内および輸出需要がおう盛であること、今後は歴史的高値の大豆とトウモロコシの作付面積が競合する懸念があること、大豆油かすなどたんぱく質原料の高騰が見込まれることなどを挙げている。大豆相場(シカゴ定期)の11月平均価格(先物・期近)は前年同月を60.0%上回るブッシェル当たり1,046.25USセント(1,204円:1ドル=115.15円)となった。20年1月初旬には、史上最も高い水準となる同1,251.50USセント(1,441円)まで上昇している(図6)。この大豆の値上がりを背景に、配合飼料原料の約15%を占める大豆油かすの輸入価格も上昇しており、11月の輸入価格は11カ月連続で前年同月を上回るトン当たり43,535円(前年同月比34.3%高)となった。 また、数量はわずかながら、トウモロコシの輸入相手先である中国、アルゼンチンにおいて、穀物等の輸出規制を導入しており、飼料穀物の需給にどの程度影響が及ぶか懸念される。アルゼンチン政府は2006年11月以降、過剰な輸出を回避するため、輸出承認の登録手続を停止しているが、中国でも2008年(1〜12月)の間、穀物等の輸出に際し輸出関税を課すことを既に公表している。
図6 穀物相場(シカゴ定期)の推移
資料:日本経済新聞 月報「畜産の情報(国内編)の目次に戻る |