◎調査・報告


外食産業における食肉の消費動向

食肉生産流通部食肉課

  食肉消費をセクター別に見ると、家計消費と加工仕向を除く外食・業務などの構成割合は、牛肉55%、豚肉30%、鶏肉56%とそれぞれ大きなウェイトを占めている。この外食での食肉の消費動向を把握するため、機構では財団法人外食産業総合調査研究センターに委託して平成18年外食産業食肉消費構成実態調査を行ったので、その概要を報告する。


1.18年の外食産業の動向

 〜市場規模ようやく下げ止まりへ〜

 平成18年の外食産業の売上動向(市場規模)は、24兆3,592億円(前年比0.1%減)と推計され、平成9年をピークにマイナス成長を続けているが、その減少幅はここ数年鈍化している。18年は大手チェーン企業を中心に業績改善もみられるなど、ようやくマーケットの縮小も下げ止まり感が感じられる状況となった。(図1)しかし、中小規模の業者を中心に企業間・店舗間競争が激しく、外食企業を取り巻く環境は依然厳しい状況が続いている。

図1 外食産業市場規模の推移
   (兆円)
資料:(財)外食産業総合調査研究センター推計
注:18年市場規模を推計するにあたって、最新のデータによって直近3年間の数値をさかのぼって修正している


2.調査概要と回収状況

 本調査は、外食産業部門の平成18年1〜12月期の食肉類の需要動向を把握する目的で、外食業者、集団給食、ホテル・旅館業、学校給食センター、病院給食施設、料理品小売業などを対象にアンケート調査を実施した。アンケートの発送・回収は平成19年6月〜8月にかけて行い、総配布数は7,000(飲食店6,000、学校500、病院500)、有効回答数は837(有効回答率12.0%)であった。

 回答の得られた837サンプルの業種構成をみると、営業給食部門は全体の70.5%(590店)を占め、その中では「飲食店その他」が最も多くなっている(174店 全体に占める構成比20.8%、本調査では一般飲食店、そば・うどん店、その他飲食店の計とした)。集団給食部門は全体の16.6%(139店)を占め、その中では「学校給食」が最も多くなっている(44店 同5.3%)。また、酒場・ビヤホール、割烹料亭などの「遊興飲食店」は67店(同8.0%)、「料理品小売業」(持帰り弁当・総菜店)は41店(同4.9%)あった。(表1)


表1 回答店舗の業種別構成比



3.食肉の仕入れ状況

 〜牛肉の割合増加〜

 平成18年は、回答企業の食肉の1店舗当たり年間仕入れ量は、4,001キログラムと前年より減少した。
 品目別にみると、牛肉の1店舗当たり年間仕入れ量は1,229キログラム、構成比は30.7%であった。豚肉については、1店舗当たり年間仕入れ量は1,424キログラム、構成比は35.6%と前年に比べて縮小している。鶏肉については、1店舗当たり年間仕入れ量は前年を下回り、1,348キログラムとなった。(図2)


図2 食肉の1店舗当たり年間仕入れ量と構成比の推移



4.牛肉の仕入れ動向

(1)原産国別仕入れ状況 〜 米国産 2.5%にとどまる

 牛肉の原産国別の仕入れ比率をみると、18年8月から米国産牛肉の輸入が再開されたものの、供給量が安定しないこと、価格が高いことなどから、そのシェアは伸びず、2.5%にとどまった。原産国別では「豪州産」が45.2%と仕入れの半数近くを占め、最も高く、次いで「国産」が43.4%となっている。業種別の状況をみると、国産は焼肉店を含んでいる「中華料理・その他東洋料理店」(64.9%)で高くなっている。米国産は牛丼店を含んでいる「日本料理店」(8.7%)で比較的高い。豪州産はおおむねどの業種でも高く、特に「ホテル・旅館」(64.7%)などで仕入れ比率が高くなっている。また、ニュージーランド産は、「遊興飲食店」(22.6%)で比較的高くなっている。(図3)


図3 牛肉の原産国別仕入れ比率


(2)部位別仕入れ状況

 外食企業における牛肉の部位別仕入れ構成比について「ロイン系」(リブロース、サーロイン、ヒレなど)、「ばら系」(かたばら、ともばら)、「その他」(かたロース、かた、もも、その他)に分けてみると、ロイン系が50.7%、ばら系が35.2%、その他が14.1%であった。

 業種別にみると、ステーキ需要の大きい「ホテル・旅館」(ロイン系76.4%)、「西洋料理店」(同71.6%)、ではロイン系の仕入れが多くなっている。

 一方、焼き肉などでばら肉の需要のある「中華料理・その他東洋料理店」では、ばら系の仕入れが多く58.4%であった。また、「集団給食」(76.8%)、「遊興飲食店」(50.3%)でもばらの比率は高くなっている。(図4)


図4 牛肉の部位別仕入れ構成比



5.豚肉の仕入れ動向

(1)原産国別仕入れ状況 〜 国産が約半分

 豚肉の原産国別の仕入れ比率をみると、全体では「国産」が55.3%で最も高く、次いで「米国産」(10.9%)、「カナダ産」(8.8%)、「デンマーク産」(8.4%)「メキシコ産(3.1%)と続いている。

 業種別の状況をみると、国産はおおむねどの業種でも比率が高いが、「西洋料理店」(78.4%)で特に高くなっている。輸入豚肉の比率をみると、米国産は「飲食店その他」(21.9%)などで高くなっており、同様にカナダ産は「集団給食」(13.3%)「遊興飲食店」(13.1%)で、デンマーク産は「遊興飲食店」(12.4%)で、メキシコ産は「ホテル・旅館」(8.0%)で比較的仕入れ比率が高くなっている。(図5)

図5 豚肉の原産国別仕入れ比率


(2)部位別仕入れ状況

 外食企業における豚肉の部位別仕入れ構成比について「ロイン系」(ロース、ヒレ)、「ばら系」、「その他」(かたロース、かた、もも、その他)に分けてみると、「ロイン系」が32.6%、「ばら系」が30.2%、「その他」が37.1%であった。

 業種別にみると、とんかつ屋などが含まれる「日本料理店」では「ロイン系」の仕入れが多くなっている(68.6%)。

 一方、「中華料理・その他東洋料理店」では「ばら肉」の仕入れが多く48.5%であった。また、「集団給食」では「その他」の割合が高く、約6割を占め最も多くなっている。これは仕入れ部位を指定せずにスライス、ひき肉など形態のみで購入する場合もあり、外食企業側でも実際の仕入部位がわからない場合もあるためと思われる。(図6)


図6 豚肉の部位別仕入れ構成比



6.鶏肉の仕入れ動向

原産国別仕入れ状況 〜 ブラジル産拡大

 鶏肉の原産国別の仕入れ比率をみると、全体では「国産」が55.1%で最も高く、次いで「ブラジル産」が前年(31.0%)よりシェアを高め35.2%となっている。

 業種別にみると、国産鶏肉については、いずれの業種でもおおむね比率が高いが、特に「日本料理店」(88.5%)は高くなっている。

 輸入鶏肉では、ブラジル産は「中華料理・その他東洋料理店」(50.3%)「料理品小売業」(45.8%)などで仕入比率が高くなっている。(図7)


図7 鶏肉の原産国別仕入れ比率



7.外食産業の推計食肉需要量

(1)牛肉

 本調査では、外食産業全体の食肉需要量を推計している。

 平成18年の牛肉需給は、外食産業にとって望まれていた米国産牛肉の輸入が8月に再開となったが、価格や月齢制限など輸入条件の問題もあり、外食企業にとって必要な品質・ロットが確保できない状況であった。一方、豪州産牛肉も干ばつや飼料作物の価格高騰の影響に加え、豪ドル高もあり、全体として外食企業が望む価格での安定的な調達が難しい状況であった。

 このような中、業種別推計値では中華料理店・その他東洋料理店、遊興飲食店、ホテル・旅館では需要量が減少し、平成18年における外食産業全体の牛肉推計需要量全体は、前年比1.4%減の330,306トンとなり、家計消費を含めた日本全体の推定出回り量718,133トン(精肉換算、前年比1.6%減)に対する比率は、46.0%となった(表2−1)。


表2−1 牛肉の年間推計需要量と構成比の推移


注1:需要量推計の根拠となる業種別店舗数については、総務省統計局「事業所企業統計調査」を基にしている。今般、18年調査の速報値が公表されたため、これを基に18年の需要量を検討した。
注2:推定出回り量は、独立行政法人 農畜産業振興機構「畜産の情報」による。部分肉ベースの牛肉、豚肉、鶏肉を精肉換算(牛肉90%、豚肉90%、鶏肉77%)した。以下、同じ。

(2)豚肉

 豚肉の需要は、輸入停止されていた米国産牛肉の代替需要などもあり、増加基調で推移してきたが、平成18年の外食産業での需要量は前年に引き続き減少した。このような中、業種別推計値では日本料理店、西洋料理店を除いた6業種で需要量が減少し、外食産業全体の豚肉需要量は393,804トン(前年比3.7%減)と推計され、推定出回り量1,473,222トン(精肉換算、前年比3.1%減)に対する比率は26.7%となった(表2−2)。


表2−2 豚肉の年間推計需要量と構成比の推移


(3)鶏肉

 鶏肉の需要は、平成16年に国内外で発生した鳥インフルエンザの影響によるマイナスからの回復基調が続いており、外食産業では平成18年も増加基調で推移した。このような中、業種別推計値では、料理品小売業を中心に4業種で需要量が増加し、外食産業全体では鶏肉需要量は、639,383トン(前年比0.6%増)と推計され、推定出回り量1,313,581トン(精肉換算、前年比2.8%増)に対する比率は48.7%となった。(表2−3)


表2−3 鶏肉の年間推計需要量と構成比の推移


※食肉需要量の推計方法

 食肉類の総需要量は、過去の調査で得られた1店舗当たり仕入れ量(加重平均値)を原単位とし、第1に、外食産業を構成する業種別店舗数がどのように変化したか、第2に、これらの店舗のうち食肉類を仕入れた店舗がどのように変化したか、第3に、食肉類の種類別に仕入れた店舗のうち、「増加した」あるいは「減少した」店舗がどの程度みられたか、第4に、「増加した」あるいは「減少した」店舗では、仕入れ量が前年と比較しどの程度増減したかにより推計した。

8.食肉需要の見通し

 今後2〜3年の各企業の食肉の需要見通しについて、アンケート結果を数値化した「指数」(50.0で需要動向に変化無し)を使ってみてみると、牛肉は51.0、豚肉は52.1、鶏肉は51.7となっており、おおむねやや増える見通しとなっており、種類別には大きな変化はみられない結果となった。

 業種別にみると、牛肉では「日本料理店」(56.3)、「遊興飲食店」(53.3)などが高くなっている一方、「飲食店その他」(49.8)、「集団給食」(46.8)、「料理品小売業」(45.9)などは50を下回った。豚肉では「西洋料理店」(56.0)、「日本料理店」(55.1)などが高くなっている一方、「料理品小売業」(49.4)、「飲食店その他」(49.4)などは50を下回った。鶏肉では「西洋料理店」(55.2)、「日本料理店」(52.8)などが高くなっており、鶏肉では50を下回る業種は無かったが「集団給食」(50.4)が最も低かった。(図8)


図8 食肉の需要見通し指数


注:今後2〜3年の食肉仕入れ量について「かなり増える」から「かなり減る」まで5区分で調査し、それぞれの構成割合(%)に「かなり増える」は1.0、「少し増える」は0.75、「変化なし」は0.5、「少し減る」は0.25、「かなり減る」は0の得点を乗じて合計したものを「見通し指数」とした。この場合、需要見通しに全体的に変化がない時に指数は50となる。

 

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